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3章
3章39話(249話)
しおりを挟むそれからベッドへと移動して、ディアの持っているブローチを見て私を見た。
「……魔道具になっているから、多少の強化しか出来ないが……」
「出来るには出来るのね。お願いできる……?」
ソルがじーっとブローチを見て、ルーナと顔を見合わせて教えてくれた。
「わ、わたくしからもお願いします……!」
精霊たちに頭を下げるディア。ソルとルーナは「わかった」と承諾してくれて、早速ブローチに強化魔法をかけた。
「これで少しは強度が上がった」
「でも、大切に扱ってね!」
「あ、ありがとう……!」
ディアはそっとブローチを持って、大事そうに見つめた。
……シー兄様がこういう贈り物をするって初めて見たかもしれない。
「それにしても、シリル様はどこでこの宝石を手に入れたのかしら……」
「珍しい宝石なのよね?」
「ええ。宝石店で買うにはかなり高額のハズ……。ただ、シリル様はずっと騎士団で働いていたから、お金は有り余っているのかもしれないけれど……」
「私もそこら辺の事情は知らないの」
シー兄様は騎士団の寮に泊まることもあり、遠征へ行ったらしばらく帰ってこないことも多々あった。
大変そうな仕事だな、とはずっと思っていたけれど……。
「……私たち、騎士団のことについてはさっぱりわからないわね……」
「そうね……」
ジーンがぽそりと呟く。私は眉を下げて同意した。
「……とはいえ、私はジーンのやっている仕事? もよくわからないのだけど……」
「ああ、うふふ。私は少しお父様の手伝いをしているだけですもの。アクセサリー類は、女性の目線も必要だから」
「そうね……ネックレスやイヤリング、ブレスレット、アンクレット……女性が主に使うものね」
ふと思い出したのは綺麗に着飾ったジュリーの姿だった。……とはいえ、あの頃の私には彼女が身に付けていた色はわからなかったのだけど……。
そして、ハッとした。
ジュリーのことを思い出しても、胸が痛くない。……いえ、痛みは本当に僅かになったということに気が付いた。
ちらり、と胸元の花に視線を向ける。
「……そっか、そうよね……」
そっと、胸元の花に触れて、目を伏せる。
「どうしたの、リザ」
「――心の傷って、こうやって癒されていくんだな、と思って」
ぽつりと呟く私に、ジーンとディアが私の腕にぎゅっと抱き着いて来た。
「何か辛いことを思い出した?」
「妹……ジュリーが良くアクセサリー類を買ってもらっていたな、って思い出したの。ただ、それだけよ。親からのプレゼントをもらうジュリーが羨ましかったなぁって。……でも、ね、それはもう過去のことだって、受け止められている自分に気付いたの」
目を伏せてそういう私に、ジーンは優しく私の頭を撫でてくれた。
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