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3章

3章52話(262話)

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 他にも様々な種類の本が置かれていて、暇な時に読んでも良いみたい。

 そして、私たちがステージに向かう時間になった。

 ちらりとジェリーへ視線を向けると、彼女は刺繍に集中していたから、声を掛けずにステージに向かった。

 集中すると、のめり込むタイプみたいね。

 数分のダンスを終えて控室に戻ると、ジェリーはまだ刺繍に集中していた。どうやら、リボン全体に花の刺繍を入れているみたい。

「素晴らしい集中力ですわね……」
「私たちに気付いているのかしら……?」

 黙々と刺繍をしているジェリー。

 私たちが着替えて、その様子を見守っていると不意にディアのブローチが淡く光った。

「……あ……」

 どうやらシー兄様からの連絡のようだ。ディアがこちらを見たので、にこっと微笑んでひらりと手を振った。

 ディアはぱっと表情を明るくすると、控室のすみに行き、ブローチ越しにシー兄様と話しているようだった。

「……そう言えば、レイチェル様、本当に売り出すの?」
「ええ。マクラグレンが全面的にサポートするわ。レイチェル様、在学中にどうしても売り出したいんですって」

 レイチェル様は私たちが使っている連絡道具の作成者。アクセサリーを連絡道具に使うというのは、きらびやかなものを好む令嬢たちにとって、画期的なアイテムだと思う。

「アクセサリーを魔道具に変えてしまうなんて、レイチェル様の想像力と技術には驚いたわ……」

 うっとりと恍惚こうこつの笑みを浮かべるジーンに、私は眉を下げて肩をすくめた。

 どうやら彼女たちは彼女たちで、それぞれ親睦しんぼくを深めているらしい。

 そんなことを考えていると、ディアが窺うように私たちを見ていることに気付いた。

「ディア? どうしたの?」

 ジーンが声を掛けると、ディアは近付いてきた。

「あの、シリル様が夜のステージまで暇なら……、と」
「……私たちは平気だから、行って来て? それに、私も行くところがあるし」
「行くところ?」

 こくりとうなずいた。

「……じゃあ、私はここに残っているわね。ジェリー一人には出来ないもの」

 集中しているジェリーを見るジーン。その目はとても優しかった。

「うん、じゃあ、ジェリーのことお願いね……って、私が言うのも変よね」

 小声で話し合って、クスクスと笑う。
 私とディアはそうっと控室を出た。

 そして、ディアは迎えに来ていたシー兄様と一緒に歩いていく。シー兄様は「リザも一緒に……」と言ってくれたけれど、私は頭を横に振って「ディアのことをお願いします」とシー兄様に頭を下げた。
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