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3章
3章60話(270話)
しおりを挟む「……あれ、在学中に結婚したらどうなるの?」
「一応、単位を取るまでは在籍させてくれるはずよ」
「そっか。なら、まだ一緒にいられるよね」
ハリスンさんには悪いけれど、私はもうちょっと、イヴォンと一緒にいたい。結婚しても、友達同士の付き合いって出来るのかしら? お母様のことを思い浮かべて、少し疑問に思った。
だって、お母様はいつも忙しそうにしているから……。
たぶん、アンダーソン家の実質的な権力はお母様が握っている。巫子の力も関係しているだろう。お父様はお父様で、公爵家の騎士団を率いている。目の色が同じことにシンパシーを感じてプロポーズしたそうだけど、お母様との馴れ初め、もっと詳しく聞きたいな。
「結婚しても、友情は変わらないわよ、きっと」
「……だといいな」
今頃きっと、イヴォンとハリスンさんはくしゃみをしているだろうな、と思い小さく笑った。
ボールをディアに渡して、ベッドの中に潜り込む。一週間続くこの建国祭も、あと少しで終わりを迎えてしまう。……エドの風邪が早く治りますように。そう願いながら、私は目を閉じた。
☆☆☆
翌朝、しっかりと睡眠時間を取ったから、身体の調子が良いような気がした。とはいえ、油断は禁物。五日目の今日も、しっかりと気合を入れていかないと!
意気込むようにぐっと拳を握ってから起き上がる。ジーンとディアもほぼ同時に起き上がり、三人で「おはよう」と挨拶をした。
身支度を整えて朝食を摂り、控室に向かう。
「このホテルともお別れしなくちゃいけないのよね」
「ずっとお世話になっているから、離れがたいわ……」
「ふふ、本当に」
私たちがそんな会話をしながら控室まで歩いていると、アル兄様たちが控室の前に立っていた。
「アル兄様、ヴィニー殿下!」
「やあ、おはよう。……リザ、なにかあった?」
アル兄様は顔を上げて私を見ると、その顔が心配そうに曇った。
「なにもないよ?」
「本当に?」
「うん、本当よ」
にっこり微笑んでみせたけど、アル兄様はまだ疑っているみたい。……私、そんなに顔に出やすいのかしら。
「それより、どうしたの?」
「ああ、それが――……」
「これをね、持って来たんだ」
ヴィニー殿下がクマのぬいぐるみをひょいと持ち上げた。
あれ、このぬいぐるみ……エドのお気に入りの一つだわ。
「えっと……?」
話が見えなくて首を傾げる私たち。すると、クマの目が光った!
「エド、聞こえるかい?」
『聞こえるよ、アル兄様!』
く、クマのぬいぐるみが喋った……!? ……いいえ、これは……エドの声だわ。えっと……どうしてクマのぬいぐるみからエドの声が……?
「エド、なの……?」
『うん、リザ姉様。昨日、お見舞いに来てくれたんでしょ?』
「リタに聞いたの?」
『そうだよ。それでね、アル兄様とヴィー殿下がね、クマのぬいぐるみに魔法をかけてくれたの!』
よく見ると、クマのぬいぐるみに使われている目は宝石だった。なるほど、レイチェル様が作った連絡用の宝石を、こうして使っているのね。
『離れていてもリザ姉様の声が聞こえるよって! アル兄様もヴィー殿下もすごいよねっ!』
きゃっきゃっとはしゃいでいるであろうエドの姿を想像して、とても和んだ。
『あのね、お昼のダンスは見に行って良いって言われたの! 見たら、すぐに帰らなくちゃダメだけど、お昼には絶対に見に行くね!』
「わかったわ、エド。それまでしっかりと休んでいなきゃダメよ?」
『はあい』
エドの頭を撫でるように、クマのぬいぐるみの頭を撫でた。
「それじゃあ、エド。また後でな」
『うん、アル兄様ありがとう! ヴィー殿下も!』
思ったよりも元気そうで安心した。
お昼のダンスは気合を入れないとダメね! エドが見に来るのだもの!
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