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4章

4章19話(319話)

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「……なら、僕とアルで魔法陣を用意しよう。紙とペンは、いつでも持ち歩いているからね。ブランドン様とシリル様は、明日に備えてください。魔力の影響を受けて、魔物が手強てごわくなっているでしょうから。クラウディア王女、あなたは――……リザたちのそばに、居てあげてください」

 ヴィニー殿下が私たちを見ながら指示を出す。この場にいる誰よりもくらいが高い彼が指揮を執ることで、空気が一気に引き締まったような気がする。

 全員がこくりとうなずく。ブランドン様とシー兄様は「少し身体を動かすか」と言って部屋から出て行った。ヴィニー殿下とアル兄様は、呪いの書を眺めながら、「こうしたらどうだろう?」や、「少しアレンジ加えてみようか」と話し合っていた。このふたりが描く魔法陣は一体どんな効果を持っているのか……少し気になった。

 本には触れないように魔法陣を眺めて、紙とペンを取り出して描きだすのと同時に、扉がノックされた。

 返事をするとアミーリア様がジュリーを連れて顔を覗かせた。部屋の中の空気になにかを感じ取ったのか、一瞬ぴくりと眉を動かしたけど、それを気にした様子はなく、ジュリーの手を引っ張って中へ入ってきた。

 お風呂に入ったのか、血色がだいぶ良くなったように見えた。体型にあった服装に着替えている。アミーリア様の私物かな? それにしては、ぴったりだ。

 私が不思議に思っていると、アミーリア様はにこりと微笑んで、

「年齢の近い人たちのほうが、お話ししやすいかしら?」

 と、頬に手を添えて、柔らかい声色で言った。

 ジュリーは私とジェリーを交互に見て、きゅっとワンピースの裾を握った。そして、声を出す。

「……本当、だったのね。『ジェリー・ファロン』が生きているって」

 弱々しい声だった。それを聞いて、ジェリーが真っ直ぐにジュリーを見つめる。その視線を受けて、ジュリーは気まずそうに視線を逸らした。

「……あなたが『ジュリー・ファロン』なのね」

 こうしてみると、ふたりはそっくりだった。きっと一卵性双生児だったのだろう。塔で閉じ込められていたからか、ジュリーのほうがジェリーよりもやせ細っているくらいで、身長もそんなに変わらない。

「こうして見ると、三つ子みたいねぇ」

 アミーリア様がほのぼのと、私たちを見た感想を口にした。

 じっくりと私たち三人を眺めて、それから私の頭を撫でる。

「エリザベスがふたりの姉なのね。妹のようにも見えるけど……」

 そうしみじみと言われて、私はジェリーとジェリーを見た。順調に成長すれば、彼女たちのようにすらりとした身長を手に入れられるのかな?

 そう考えながらも、すぐに思考は明日のことに切り替わる。

「……ジュリー。少し、お話ししましょうか」

 私の言葉にジュリーはびくりと肩を震わせ、それから一瞬迷ったようだったけれど、すぐにうなずいてくれた。
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