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4章

4章103話(403話)

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「……一応聞くが、魔力の消費はどうじゃ?」
「そうですね、あまり感じません。一度空っぽになったからか、今まで以上に満ちている感じがします」
「ふむ。使いすぎには注意じゃが……、まぁ、リザたちなら滅多なことで使い切ることはなかろうしのぅ」

 クリフ様は片手を顎に添えた。そして目元を細めながらそう言い、思い出したかのように渋い表情を浮かべる。私たちがカナリーン王国から帰ったときのことを思い出しているのだろう。

「そうですね、きっと、あのときだけが特別だったと思います」

 ――私にできることをやり遂げたかった。月の女神が愛した人々は、五十年以上あの地に縛りつけられていた。どうしてそんなことを最期の王がしたのかはわからないし、理解したいとも思わない。ただ、月の女神の願いを叶えたかった。

「無理や無茶はせんようにの?」
「はい、クリフ様。約束しますわ」

 私のことを本気で案じてくれる人たちがいるのだから、私も自分のことを大切にしないとね。

 クリフ様は満足そうにうなずき、魔塔の外へと連れて行ってくれた。魔塔でクリフ様と別れ、待っていてくれたカインと一緒にアンダーソン邸に帰る。

 アンダーソン邸につき、自室に行こうとすると、自室の前でアル兄様とエドがいて驚いて駆け寄った。

「アル兄様、エド、どうして私の部屋の前に?」
「おかえり、リザ。ヴィーが作った杖のことがきになってさ。待ってたんだ」
「それがリザ姉様の杖?」

 ヴィニー殿下の作った杖、と言うことで興味があったみたい。私はふたりの顔を交互に見て、「これです」と杖を差し出す。アル兄様とエドは目を輝かせて杖を眺める。

「すごーい」
「うん、良く出来ている。さすがヴィー」

 誇らしげなアル兄様と、目を輝かせているエド。杖をじっくりと観察して、ふたりは満足したように息を吐く。

「いいなぁ、僕も作りたいなぁ」
「ひいおじいさまから止められてるもんね、アル兄様」
「……なんでエドがそれを知ってるのかなー?」

 アル兄様はエドの頭に手を置いて、ぐりぐりと撫でまわした。エドはきゃあきゃあと楽しそうにはしゃいでいる。

「ひいおじいさまから聞いたから!」

 と胸を張ってエドがそう言うと、アル兄様は肩をすくめた。

「クリフ様、エドになんてことを……!」

 なんて芝居がかった言い方をしていたので、くすくすと笑ってしまった。私が笑うのを見て、アル兄様とエドも笑い出した。そんな和やかな時間を過ごしているうちに、あっという間に日が暮れた。

 ――愛しい時間だと思う。こうして家族と笑い合える時間が、とても。

 この日々を大切にしながら、残りの休暇を大切にしようと考えた。

 アカデミーの長期休暇が明けたらすぐに舞踏会というイベントが待っているから、ダンスの練習をしないといけない。ヴィニー殿下の婚約者になってから、初めてのイベントだ。どんなドレスにしようか、今から悩んでしまうわね。
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