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4章

4章106話(406話)

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「シー兄様は……?」
「シリル様は会場の警備があるでしょう?」

 困ったように笑うディアに、私は戸惑うように彼女を見た。

「それに、生徒は参加自由だから、わたくしは壁の花になろうかと思って」

 そう言ってぽんと私の肩に手を置く。気にしないで、と言うように。そんなディアにイヴォンが声を掛ける。

「ディアは踊るつもりはないの?」
「そうよ、せっかくセリーナ先生にも習ったのに」

 セリーナ先生が領地から遊びに来てくれたときに、ディアも一緒にダンスのレッスンを受けた。私とアル兄様、ディアとシー兄様というペアでダンスを教わっていたのだ。

「見ているほうが好きだわ……」
「誘われる可能性はあるわよ?」

 ジーンが友人から聞いたという話を教えてくれた。舞踏会の会場に入るときはパートナーがいる人はパートナーと腕を組んで入り、パートナーがいない人はそのまま会場に入るらしい。

 そして、パートナーとの一曲目が終わると別の人とも踊れるようになるとのこと。だから、パートナーのいない人は二曲目からダンスの申し込みをされることもあるそうだ。

「……そうなんだ?」
「ええ、同じ人とばかり踊るよりも、交流が持てるからって理由らしいわ」
「確かにこんな機会じゃないと、男性と交流する機会はなさそうよね」

 イヴォンが肩をすくめる。確かにそうよね。授業で同じ教室にいることもあるけれど、接点はそのくらいだ。

「じゃあ、二曲目からディアに申し込む人がいるかもしれないのね」
「曲のリストも先に渡されていたしね。難易度がおかしいものもちらほらあるけれど」

 ジーンがひらひらと曲のリストが書いてある紙を揺らした。知らない曲もあったので、マリアお母様やセリーナ先生に聞いてみたこともあった。

 お母様とシー兄様が踊ってみせてくれたけれど、どういう動きをしているのかさっぱりとわからなかった。私の隣で見ていたディアもきっとそうだったと思う。

「この難易度を踊れる人って少ないと思うけど……」
「でも、だからこそ輝くのよねぇ……。まぁ、最後の曲は優しい難易度に戻るのだけど」
「これ、全曲踊る人いるのかしら……?」
「いると思うわよ。ダンスが趣味な人もいるだろうし」

 これまでに全曲踊った人がどのくらいいるのかしら……? と考えながらも舞踏会について想像を膨らませた。

 舞踏会のために用意したドレスもきちんと持って来ているし、どんな舞踏会になるのかが今から楽しみだ。

「そうだ、またリザたちに協力して欲しいことがあるのだけど」

 ジーンがパンっと両手を合わせて、とても爽やかな笑顔を浮かべて声を弾ませた。
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