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1章:婚約破棄とプロポーズ
ゆっくりと休憩 1話
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「ただ」
「ただ?」
「私、いろいろと自分の性格を抑えてきたところもあるので、もう猫を被ることはやめますわ。それを見て、フィリベルトさまが良いとおっしゃるのなら、プロポーズを承諾しても良いと思いますの。ユミルトゥスは大きな国。我が公爵家にも利益があるでしょうし……」
「リディア……」
利益で結婚って、本当……貴族っぽいけどね。
それでも、貴族というのはそういうものだ。
公爵家の娘として、私が自由にできるのは、ほんの少しのことだけ。それを理解している。
「あ、いっそ私がユミルトゥスに留学するのはどうでしょう? どんな国なのか気になりますわ。今通っている学園には殿下たちがいますし……きっと、いろいろな目で見られるでしょうし……」
しゅんと肩を落としてみせると、お父さまはあたふたとしていた。
やだ、お父さまったら、こんなに可愛らしいところがあったのね。
……ああ、そうか。
こんなふうに話すことなんて、滅多になかったものね。
立派な王妃にならないとって、ほとんどの時間を勉強に費やしていた。
まぁ、もう王妃になることはないでしょう。あんな騒ぎを、アレクシス殿下が起こしたのだから。
王妃教育のおかげでいろいろ身についたし、知識はきっとどこかで役に立つでしょう。
……役に立つって、思いたい。
「とにかく、明日は学園を休みますわ。フィリベルトさまを招く手紙を出したほうがよろしいでしょうか?」
「いや、後日と伝えているのだろう? ならば、あちらから手紙がくるだろう」
そんなもんかしら? とりあえず、泣き疲れてしまったので、部屋に戻りたい。泣いたあとって、どうしてこんなに倦怠感があるのかな。
たくさん泣いてしまった。明日、腫れていないとことを祈ろう。
「お父さま、絶対に婚約は白紙にしてくださいませね」
「わかったわかった。今日はもう休みなさい。あとで食事を部屋に運ばせよう」
「……いいえ、今日は要りませんわ」
食べる気になれなくて、ふるふると首を横に振ると、お父さまは「そうか」とぽつりと言葉をこぼした。
お茶をすべて飲み終え、廊下に出て足早に自室へ向かう。
自室について、着替えもせずにベッドに横たわる。
なんだか急に疲労感が襲ってきたわ。
……それもそうよね、今日のパーティーに備えて、いろいろがんばっていたのだから。
「はぁ~……」
大きなため息を一つ。これからのことを考えると、頭が痛くなっちゃうわ。
まずは王妃教育をキャンセル、学園の先生たちにも婚約破棄のことを伝えないと……やることはたくさんあるわね、と思考を巡らせていると、扉がノックされた。
起き上がってベッドに腰をかけ、「誰?」と尋ねると、すぐに聞き慣れた声が返ってくる。
「ただ?」
「私、いろいろと自分の性格を抑えてきたところもあるので、もう猫を被ることはやめますわ。それを見て、フィリベルトさまが良いとおっしゃるのなら、プロポーズを承諾しても良いと思いますの。ユミルトゥスは大きな国。我が公爵家にも利益があるでしょうし……」
「リディア……」
利益で結婚って、本当……貴族っぽいけどね。
それでも、貴族というのはそういうものだ。
公爵家の娘として、私が自由にできるのは、ほんの少しのことだけ。それを理解している。
「あ、いっそ私がユミルトゥスに留学するのはどうでしょう? どんな国なのか気になりますわ。今通っている学園には殿下たちがいますし……きっと、いろいろな目で見られるでしょうし……」
しゅんと肩を落としてみせると、お父さまはあたふたとしていた。
やだ、お父さまったら、こんなに可愛らしいところがあったのね。
……ああ、そうか。
こんなふうに話すことなんて、滅多になかったものね。
立派な王妃にならないとって、ほとんどの時間を勉強に費やしていた。
まぁ、もう王妃になることはないでしょう。あんな騒ぎを、アレクシス殿下が起こしたのだから。
王妃教育のおかげでいろいろ身についたし、知識はきっとどこかで役に立つでしょう。
……役に立つって、思いたい。
「とにかく、明日は学園を休みますわ。フィリベルトさまを招く手紙を出したほうがよろしいでしょうか?」
「いや、後日と伝えているのだろう? ならば、あちらから手紙がくるだろう」
そんなもんかしら? とりあえず、泣き疲れてしまったので、部屋に戻りたい。泣いたあとって、どうしてこんなに倦怠感があるのかな。
たくさん泣いてしまった。明日、腫れていないとことを祈ろう。
「お父さま、絶対に婚約は白紙にしてくださいませね」
「わかったわかった。今日はもう休みなさい。あとで食事を部屋に運ばせよう」
「……いいえ、今日は要りませんわ」
食べる気になれなくて、ふるふると首を横に振ると、お父さまは「そうか」とぽつりと言葉をこぼした。
お茶をすべて飲み終え、廊下に出て足早に自室へ向かう。
自室について、着替えもせずにベッドに横たわる。
なんだか急に疲労感が襲ってきたわ。
……それもそうよね、今日のパーティーに備えて、いろいろがんばっていたのだから。
「はぁ~……」
大きなため息を一つ。これからのことを考えると、頭が痛くなっちゃうわ。
まずは王妃教育をキャンセル、学園の先生たちにも婚約破棄のことを伝えないと……やることはたくさんあるわね、と思考を巡らせていると、扉がノックされた。
起き上がってベッドに腰をかけ、「誰?」と尋ねると、すぐに聞き慣れた声が返ってくる。
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