【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

秋月一花

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1章:婚約破棄とプロポーズ

ゆっくりと休憩 3話

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 騎士や貴族の男性が挨拶をするときにされるくらい、だったから……まぁ、いいか。

 疲れたから、今日はもう休もう。ベッドに横になって毛布をかけて目を閉じると、あっという間に眠りに落ちた。

 ――いろいろなことがあったから、疲労ひろう困憊こんぱいだったのだと思う。婚約の破棄を宣言されたことのショックで前世を思い出し、やってもいないことをでっち上げられ、他国の男性からプロポーズされたんだもの。

 前世の記憶だけでも頭の中は結構、混乱している。それを整理するためにも、睡眠は大事よね。

 ◆◆◆

 翌朝、ローレンに起こされた。彼女が目覚めの紅茶をれてくれ、ふんわりといい香りが漂い、鼻腔をくすぐる。

「熱いので、お気をつけください」
「ありがとう」

 カップを受け取り、ふーふーと息を吹きかけて冷まし、こくりと一口飲んだ。

 温かい紅茶が喉を通り、胃の中に落ちていく。身体がぽかぽかと温まる感覚に、ゆっくりと息を吐く。

 ローレンが、のんびりと好きなことをしていてほしい、とお父さまから伝言を教えてくれた。

 ……でも、私の好きなことって、なにかしら?

 正直、自分の趣味がなんなのか、わからないわ。

 前世の私なら、ゲームってきっぱり言い切れるんだけど……この世界の私は、次期王妃教育に追われていて、好きなことを考える余裕なんてなかった。

 だから、なにも思い浮かばないのよ。

 とりあえず紅茶を飲み終えて、着替える。今日はラフな格好をお願いした。

 屋敷内から出るつもりないからね。たまにはいいでしょう。

「ローレン、今日は髪を三つ編みにしてくれる?」
「三つ編みですね、かしこまりました」

 すっ、すっ、と髪を毛先から丁寧にかしているローレンに、三つ編みにするようにお願いすると、彼女はすぐに三つ編みにしてくれた。

 髪を左右にわけ、きっちりと三つ編みに編んでくれる。器用ね。

 これで作業がしやすくなるわね。

 せっかくだから、今までできなかことを楽しもうと考えて、ぐっと両手の拳を握って意気込んだ。

 ああ、でも……本当になにをしようか悩んじゃうわ。考えてみれば、プライベートな時間ってあまり過ごした記憶がない。

 いろいろ学ぶことが多くて、そういう時間を作ることができなかった。

 はぁ、と小さくため息を吐くと、ローレンが心配そうに「お嬢さま?」と声をかけてきた。

「ねえ、ローレン。貴女あなたの趣味ってなにかしら?」

「え、私の趣味……ですか?」

 いきなり問われて、ローレンは明らかに声をひっくり返し、こほんと咳払いをする。

「あ、言いたくないのなら、話さなくてもいいのよ」
「……いえ、突然で驚いてしまって。私の趣味はそうですね……読書、でしょうか」
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