【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

秋月一花

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1章:婚約破棄とプロポーズ

ゆっくりと休憩 5話

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 ――その竜はずっと独りぼっちだった。

 なぜ、自分がここに存在しているのかわからない。

 ただ、そこに『いる』だけだった。

 そんな中、竜は温かな光を感じる。

 ゆっくり、ゆっくりとその光に導かれるように歩を進め、その光に触れた。

 光はすっと消えて、代わりに一人の少女が現れ、竜に触れて微笑む。

「やっと逢えましたね、私の騎士さま」

 ……どうして、どうしてここで一巻が終わりなのよー!

 やっと少女が念願の竜に出会えたのにーっ!

 思わず、ほぅ、と感嘆の息を吐いてしまった。気になるところで終わってしまって……続きがものすごく気になるわ。

「二巻はないのかしら?」
「その本、先日発売されたばかりですので……」

 それなら二巻の発売はまだ先のようね……発売されるまでお預けか! うう、本気で続きが気になるわ。

 物語は、一人の少女の夢の中に、『ここはどこ?』、『独りぼっちは寂しい』と泣く小さな竜が出てきて、『それなら私があなたを探しに行くよ。探し当てたら、私の騎士さまになってね』と少女がその竜を探しにため冒険に出る――という内容だった。

 人が滅多に通らない森の奥深くに竜が隠れていて、ずーっと洞窟の奥で暮らしていたけれど、ある光――きっと少女のことよね――が見えて、ようやく外へ歩き出す。

 そんな少女と竜が出会ったところで物語が終わってしまった! どうして少女は竜を騎士にしたいのかしら?

「お昼の時間になりましたが、昼食はどうしますか?」
「もうそんな時間? うーん、お腹空いていないから、まだいいわ。ローレンは食べてきて?」

 なんせ紅茶とクッキーで、結構お腹がタポタポしているのよね。

 午前中のすべて、読書に費やしたわ……こんなに夢中になって本を読んだの、この世界では初めてかもしれない。

「そんな……具合が悪いのですか?」
「違う違う、本を読みながらお茶とクッキーを食べたからよ」

 ローレンの震える声に、軽く手を振って苦笑する。元気なことをアピールして、空になったティーポットとクッキーが乗っていた皿に視線を誘導すると、彼女は納得したようにうなずいた。

 なんせ、あれだけたっぷりとあった紅茶が、空になっているからね。

 ローレンの淹れる紅茶は美味しいから、ついつい口に運んじゃう。

「それでは、部屋に戻りますか?」
「そうねぇ……もう一冊、本を読もうかしら。お勧めはある? あ、できればあまーいロマンスがいいわ」

 私がリクエストすると、「それでしたら」とローレンは書庫を見渡して、スタスタと迷うことなく本棚に向かい、本を取り出すと戻ってきた。
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