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4章:これは、私の恋物語
これは、私の恋物語 3話(完)
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婚約式も無事に終わり、月日は流れ――本日私は、ユミルトゥスの学園に初登校する。
「緊張しているかい?」
「していない、と言えば噓になりますわ。だけど、楽しみのほうが勝っていますの」
ちなみに、婚約式のあとは家族たちと一緒に食事をして、お父さまとお兄さまはスターリング公爵夫妻に深々と頭を下げ、『娘(妹)をよろしくお願いいたします』と頼み込んでいた。
帰るときには、私のことをぎゅっと抱きしめて『連絡を待っている』と、『元気に暮らすんだよ』と言葉を残してくれた。そして、私にお母さまの形見のネックレスを渡してくれたの。
そのことを思い出すと、胸が少しだけ切なく、それ以上に温かくなる。
「そうか」
フィリベルトさまは柔らかく微笑み、ぎゅっと私の手を握る。私も握り返した。
「それじゃあ、行こうか。今日からここが、リディアの通う学園だよ」
「はい。案内をよろしくお願いいたします」
二人一緒に歩き、フィリベルトさまに案内されて職員室まで足を運び、改めて担任の先生に挨拶をした。
実は、寮に入るときに一度顔を合わせていたの。フィリベルトさまは「それじゃあ、またあとで」と職員室から去り、私は少しの時間、先生と会話をし、教室まで向かう。
扉を開けて教室に入ると、一斉に学生たちの視線が私に集中した。
学園の計らいで、フィリベルトさまと同じクラスになった私は、こうなるだろうとは想定済みだったので、にっこりと微笑む。
「留学生のリディア・フローレンスと申します」
スカートの裾を持って、カーテシーをしてから、胸を張って学生たちを見渡す。
フィリベルトさまと視線が交わると、彼は小さくうなずいた。
静かに左手を胸元に置くと、きらりとダイヤモンドの指輪がきらめいた。指輪に気づいた人たちが、「キャァ」と短く黄色い悲鳴を上げる。
「そちらにいらっしゃる、フィリベルト・スターリングさまの婚約者です。どうぞ、よろしくお願いいたします」
堂々と、胸を張って彼の婚約者を名乗れる。そのことが、とても嬉しいの。
反応は様々だったけれど、パチパチと拍手の音が聞こえ始めた。
どんどんと大きくなって、割れんばかりの拍手の音に、一瞬呆気に取られてしまったけれど――初めて会った学生たちにこんなふうに祝福の拍手を受けるとは、となんだか心がくすぐったい。
――これが、私の恋物語。
これから先もずっと続く、私だけの物語。
再度、フィリベルトさまと視線が合って、花が綻ぶような笑顔を浮かべた。
留学生として学園に登校した初日、胸に希望と期待を膨らませてこの教室に立った。
――さぁ、私だけの物語を、もっともっと楽しんでいきましょう。
フィリベルトさまと一緒に、作り上げていくの。
私たちの、恋物語を。
―Fin―
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