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第一章「和」国大乱
幕間「善乃の日記・その一」
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〇長月の十五夜、今夜は満月。
男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。
こんなことを言って日記を書き始めた方がいらっしゃると、いつしかお父様に聞いたことがあります。私もそれにならって、今日から日記を書き始めることにしました。少し気はずかしいですが、誰に読まれるでもありませんから、私の思ったことをそっちょくに書いていこうと思います。
今の時間は夜。月明かりが窓から差し込む中、私は、禮斎神宮の一室で日記を書いています。(『禮斎』の字は難しいです。さっき、解土さんに教えてもらいました)
私こと東久部良善乃は、つい昨日、巫女の見習いとして、この神社に住みこませていただくことになりました。やしきでちょうよ花よと甘やかされていた私が、神様に仕えるお手伝いさんをすることになったのです。
なぜなら、私の家が、誰かさんの魔法でボロボロになってしまったので。けびいしの皆さんがお父様をつかまえたことで、私の暮らすたよりがなくなってしまったので。
でも、だからといって私は、今の状況に絶望していません。十一年連れそった家が消えたのは、もちろん悲しいけれど、それでも私は、少なからず前を向いています。
それは、お兄様が昨日かけてくれた言葉のおかげです。私の手を取ってくれた彼は、私に向かって、君は悪くないと言ってくれました。ひとりにはさせないと言ってくれました。それが私には、とても嬉しかったのです。
住む家や財産を失ったとしても、まだまだ私にはたよれる人がいると、肇お兄様に、そう教えていただきました。そういう意味では、私はとても、幸運だったのかもしれません。
ですから、これはせんせいです。私はこの幸運にちかって、これからも前を向き続けて生きていきます。どんなこんなんがあろうとも、歩みを止めることはありません。
この日記を書き始めたのは、それを自分に言い聞かせたかったからです。今後私の身には、いろんな辛いことや悲しいことが起こると思います。しかし、日記を開くたびに、最初の項を読むたびに、そのたびに私は、初志を思い出すでしょう。
そうして、今日この日にちかいを立てた私が、来たる日の私に語りかけるでしょう。「まだまだ私は、頑張れるよ」、と。
願わくば、このちかいがいつまでも、何度でも、私の心を照らしてくれますように。私が今握っている筆が、この先ずっと折れませんように。
ここまで書いて眠くなってきたので、今日は寝ます。明日は、今日できなかったことを覚えて、少しでも、私を拾ってくれた神社の皆さんに、お返しができるようになりたいです。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
〇長月の下旬、今日は晴れ。
今日は一日中、遊子橋さんのお仕事のお手伝いを、お兄様と一緒にしました。
実は、遊子橋さんのお仕事ぶりを間近で見るのは、初めてでした。解土さんや他の巫女さんから話には聞いていたのですが、今日直接それを見て、やっぱり遊子橋さんはすごい人なんだなと、改めて感じました。
お掃除から始まって、都の人のよろず相談、まよけの結界の管理をしましたが、中でもそのすごさを実感したのは、二つ目のときです。遊子橋さんは、都の民草のお悩みを何でも聞いて、その解決に日々ほんそうしているのです。
大和で一番大きい神社の一番高い地位にいる人が、しゃがんで、庶民と目線を合わせて対話をしているのです。これは私にとって、本当におどろくべきことでした。私がやしきにいたとき、お父様などのえらい人は、指令が主なぎょうむで、自ら現場に足を運ぶことはなかったのですから。
私もそれを見習わなければいけないなとは思いつつ、遊子橋さんのように、全ての人を平等に扱う器量の大きさにたどりつくのは難しいのでしょう。そもそも、私は皆がもてはやすほど、聖人ではないので……。
と、遊子橋さんの話はこれくらいに。今日は一日中お兄様といられて、とても楽しかったです。何やら彼は、今朝がた結さんと喧嘩をしてしまったらしいです。それが原因で、部屋に一人でいたとか。お兄様からすれば、それはさいなんだったのでしょうが。
中でも一番嬉しかったのは、結界の管理の道中、私がかげ口を言われたときに、お兄様がそっと、私の頭をなでてなぐさめてくれたことでした。言葉は少なかったですが、それだけ私のことを想って、私だけの味方をしてくれたのが、とっても嬉しかったのです。
お兄様は、遊子橋さんと自分との間にへだたりがあることをうれいていましたが、私としては、ずっと私の味方をしていてくれたほうが嬉しかったり……そんなことを考えるのは、本当は善くない事なのかもしれません。
ほら、やっぱり私って、名前ほど善い子じゃありませんよね。お父様の娘だけのことはあるのかもしれません。
とにかく今日は、とても充実した一日でした。明日ももっと、満たされる一日になればと思います。おやすみなさい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
〇神無月の中旬、今日は曇り。
今日は私にとって、とても重大なことが起こりました。一世一代のにゅーすがまいおりてきたのです。(『にゅーす』とは、お兄様の世界の言葉で、知らせという意味らしいです。何だか面白い語感です)
なんと、東久部良善乃十一才、禮斎神宮の巫女見習いであるこの私に、初の妹分ができたのです。私もついに、お姉さんになる時が来たということです。
珍しい銀色の髪をさげ、どこかむすっとした表情のその娘の名前は、『滝』と言います。彼女は私と同じく、お兄様たちがほごした、てんがいこどくの子供だそうです。
それを知った私としては、大いに気持ちがたかぶりました。このたかぶりは、同じような年の仲間ができた喜びからなのか、年長者としての責任感からなのか……
おそらく、そのどちらもがあって、私は、とってもやる気に満ちているのです。私がお姉さんとして、お滝をみちびかなくては。お兄様や遊子橋さんや解土さんが私にしてくれたようなほどこしを、彼女にもする必要があるのです。そう思うと、一層身が引きしまります。
……と、思っていたのですが。重大な問題が、一つありまして。
それは、当の本人にあまりやる気がない、ということなのです。
私のときとは、正反対と言いますか。これからの展望に胸をおどらせていた私とは違い、終始仏頂面で、教えた巫女の仕事も適当にやろうとする始末。あまりの無礼なそぶりに、ぼうぜんとしてしまったほどです。
いや、もちろん、皆がみんな、私のように前向きにはなれないということは分かります。今までこどくに生きてきた彼女なら、なおさらそうだということも。
とはいえ、もう少し恩に報いる気持ちを持ってもいいんじゃないかと、思わざるを得ません……何にせよ、これは、かなり大変なしどうになりそうな予感がします。
私にその役がつとまるかはわかりませんが、しかし最善を尽くしたいと思います。お滝をきちんとみちびけるかどうかで、私の真価が決まると言っても良いでしょう。
というわけで、今日は寝て、明日に備えます。まだまだ教えることはたくさんあるので、少しずつ彼女を変えていければと思います。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
〇霜月上旬、晴れのち曇り。
今日は久しぶりに、一日中お休みの日でした。
お滝が来てから一ヶ月ほど経ち、肌寒さもひとしおになってきた今日この頃。私たち二人は、街へお出かけに行きました。
思えば、彼女のだらけぶりにも、もうずいぶんと慣れてしまいました。そんなことに慣れる自分が情けないと思いつつも、お滝のへたれた根性が、一ヶ月やそこらでどうにかなるものではないということもおりこみずみです。
もっと長い目で、変えていかないと……彼女の芯に染みついたなまけぐせを、徐々に抜いていく必要があるでしょう。
さて、街に行ったという話でしたね。禮斎神宮の東には、立派な都の街が広がっています。人々の家のみでなく、市場や商店、広場や神社ぶっかくなど、色んな施設が立ち並んでいます。
私たちはあてもなく、その街をぶらぶらとしていたのです。以下、会話の内容もおりまぜながら書いていきます。
「あーあ、せっかくの休日だってのに、何でわざわざ外に」
「聞こえていますよ、お滝」
「あ、す、すんません……」
朝、いつまでも寝ていようとするお滝を叩き起こし、半ば無理やりに町へとくりだしました。こうでもしないと彼女は、いつまでもだらけようとするので。
「それにしても、だんだんと冬が近づいてきますね。風が寒いです」
「まあ、もう霜月っすからね……今日はここらで切り上げますか」
「ことにつけて帰ろうとするのは止めなさい」
あと、そのけいちょうふはくな敬語もやめてほしいです。
「冬物の服とか、かざりとかを見てみるのもいいかもしれませんね。お滝、行きましょう」
「いやあ、あたしは、そういうの興味ないんで……」
「あなたはただでさえ常日頃からしみったれた表情をしているのですから、しゃれっ気くらいは身に付けないとだめですよ」
「善乃さん、たまにめっちゃしんらつなこと言うっすよね」
「とにかく、ほら、行くよ!」
言って私は、お滝の手を引いて、髪飾りを取り扱っているお店へ行きました。おこづかいで、私とお滝の分を買うつもりです。
「この雪模様のくし、可愛いですね。あなたの銀ぱつに似合うのでは?」
「はあ、そっすか」
「それとも、むしろこの赤いかんざしの方が映えるかしら」
「ふーん、そういうもんすかね」
「もう、本当におしゃれの話が出来ないんだから」
年頃の娘のくせに、この子は全くそういうことに興味を示しません。お姉さんとしては、心配になってしまいます。
「あ、でも、おこづかい的に、二人分買うのはきびしいかも……どうしましょう」
「私の分はいいっすよ、別に」
「いいえ、そうもいきません。あなたはこういうの、一個も持っていないでしょう。ここは、お滝の分を……」
「どうしたんだい、善乃ちゃん。しんこくな顔して」
私がお財布を見つめながら悩ましい顔をしていると、脇から一人の男の人の声がかかりました。
振り向くと、そこには見知った顔のおじさんがいました。三六さんです。見た目三十路くらいの、ちょくちょく私に話しかけてくれる、気の良いおじさんなのです。
「ああ、三六さん……ええ。今少し、お財布がきびしくて。かみかざりを二つ買おうと思ったんですけど、一つはあきらめるしかないかと話してたんです」
「ん? 二つって……?」
「はい、一つは、このお滝に買ってあげようと思って」
私がお滝の肩を持ってずいと前に出すと、彼は口をおさえながら、かんきわまったように話しました。
「す、少ないこづかいで妹分におくり物たァ、なんて健気なッ……! よしっ! 善乃ちゃんのぶんは、お兄さんがおごってあげよう!」
「え、いや、悪いですよ……!」
「いいからいいから。ここはお兄さんに任せとけって」
言うと三六さんは、私の手からかんざしをとって、お会計を済ませてしまいました。余談ですが、彼は自分のことをお兄さんだと言い張るくせがあります。余談ですが。
「ほらよ、受け取りな」
「三六さん……ありがとうございます。大切にしますね」
「ふ、ふっ。良いってことよ」
私が笑顔で返すと、彼は後ろ手を振ってその場から去ってしまいました。何はともあれ、これで二人分のかみかざりを手に入れることが出来ました。
「……」
「? お滝、何か言いましたか?」
「いや、なんでもないっす」
その時、お滝が何かをつぶやいたような気がしましたが、私には聞き取れませんでした。
そのお店をたったあとも、私たちは色々なところに行きました。本屋さんとか、お茶屋さんとか、公園とか。
そしてその度に、色々な施しをしてもらいました。本屋さんでは、気になるずかんを買ってもらったり、お茶屋さんでは、お団子をつけてもらったり、公園では、遊び道具をもらったり。多くて書ききれませんが、本当にいろんな人に。
こういうことは、私にはかなりよくあることなのです。何故だかわかりませんが、町の人は、特に男の人は、私に色々なものをくれます。その度に悪いとは思っているのですが、向こうが半ば強気に押してくるので、受け取らないわけにもいきません。
そうして日がかたむき始め、そろそろ神社に帰ろうかとしたとき、かみかざりの店を出てからいぶかしげな顔をしていたお滝が、私の後ろで口を開きました。
「やはり、似とるな」
「え?」
「ひい様に、よく似とる……外面は気立てが良く物静かで■■としておるが、内面には自分に向けた欲が■■■■ている――しかしてその欲におぼれることもなく、むしろそれを■■■■ことで、周囲の者を■■■■にとりこにしておる……まさに■■の女、か」
「お、お滝? どうしたの?」
心ここにあらずといった様子で、ぶつぶつと何かをつぶやくお滝。ところどころ、何を言っているのか分からない所もありました。私は少し怖くなって、彼女の肩をゆさぶって声をかけました。
「……あ、ああ。いえいえ、何でもないっすけどね。ただ、昔の私の……ともだちが、善乃さんにすごく似てるって話っす」
「ともだち?」
はっと気づいて、とりつくろうかのように私に話すお滝。
「はい、まあ、アネキみたいなもんでした。何をするにも二人で、一緒にバカやって、みたいな」
まあ、もうはなればなれになっちゃったっすけどね。悲しさが宿る目で、お滝は言いました。
お姉さんのような人。お滝はてんがいこどくだと聞いていましたが、お兄様にほごされる以前から、仲の良い人がいたとは。
まだ幼い彼女にとって、そんな大切な人と別れなければならないというのは、とても辛いことだったのでしょう。私もお父様や家の皆とはなれて暮らしていますが、それにしたって彼らはまだ生きていて、この都にいるのです。
そんな私でさえ寂しくなるのに、今後会う可能性がほとんどないというのは……若干にして彼女は、私よりも辛い経験をしているようでした。
「……ねえ、お滝」
「はい?」
私は意を決して彼女の方に振り向き、口を開きました。
「あなたが今、私についてどう思っているかは分からない。でも私は、あなたのことを本当の妹のように思ってる。だから、私のことも、本当の姉だと思ってほしい」
「……!」
「もちろん、今すぐになんて言わない。これから過ごしていく中で、少しずつで構わない。だから、私にだけは、素直な気持ちをさらしてほしい」
本当の姉妹みたいに、と。
私が言って手を差しのべると、お滝は目を見開いて、意外そうな表情をしました。しかしすぐに、にやっと口の端をあげて、
「……はは、やっぱり、似てますね」
そういうと、私の差し出した手を取り、並んで夕焼けの帰り道を歩きました。
とまあ、こんな具合に、今日一日で、お滝との仲がぐっとちぢまった気がします。もっと精進して、彼女の心をほだしていければいいな、と、隣で寝息を立てているお滝を見ながら、今はそんなことを考えています。
今日はもう寝ます。おやすみなさい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
〇師走上旬、曇り
お兄様と結さんが、神社を出ていってしまいました。
何やら重々しい顔をして、更には見知らぬ男の人と共に。私に何の説明もなく、ただ留守を任せたとだけ言って。日が昇り切らない、うす暗い時刻に出て行ってしまいました。
はっきりと言いましょう。恥ずかしながら、私は、はげしくどうようしました。検非違使の任務でもなく、ただの旅のようなふんいきでもない。重大なことが起こっているのだろうと、何も分からないながらに感じ取ってしまったのです。
私も何か、彼らの役に立ちたい。だけど、どれだけ気取っても私はまだ子供だし、そもそも発現者でもない。
私に、魔法は使えない。
普段からたいそうな口を叩きながら、私は彼らに、何をすることもできないのでしょうか。そう思うと、胸がはりさけそうで、涙があふれそうでした。
「落ち着いてください。善乃さん」
そんな風に私が部屋で一人思いつめていると、私の肩に、背中ごしに小さな手が置かれました。
「お、お滝……」
「善乃さん。らしくないですよ。そんな風に思いつめて、ふさぎ込んでいる暇はないんじゃないですか」
振り返ると、いつになく真面目な表情のお滝が、私の目を見すえていました。
「本当にあいつらの手助けをしたいなら、いつもみたいに頭をひねってください。ぼうりゃくを巡らせて、手を考えてください。あなたは、そういうことが出来る人でしょう――可愛らしい見た目とは裏腹に、策士でしょうに」
「……!」
真剣な眼差しのまま、しかしいつものようにニヤリと笑って、私を励ましてくれるお滝。本当に私のことを想って言ってくれているのだろうということが、ひしひしと伝わってきました。
それが嬉しくもあり、同時に情けなくもありました。妹分のお滝が見かねて言うほどに、その時の私はひどい有様だったのでしょうから。いつまでもこんな風にしてはいられないと、私の胸に灯がともりました。
「ありがとう、お滝。あなたの言う通りです」
「へへ、そりゃどうも……んで、何か思いつきましたか?」
せっつくように、私の隣に正座していうお滝――今ふと思ったのですが、彼女の敬語、いつの間にか正しくなっていますね。たいだな性格は変わりませんが、一歩前進です。
「ええ。思えば、簡単なことでした。今の私にできることがすくないなら、誰かに頼ればよいのです」
そこで私は、頭にひらめいたことを語りました。
「しかし、むやみに大人にふれまわるわけにもいきません。ただ事でないことは確かなのですから、なるべくひそやかに行動したほうが良いでしょう。というわけで、偉い人はダメです」
本当は遊子橋さんや解土お姉さんにも相談したかったですが、彼らにも立場というものがあります。あまりだいたんな行動はできないでしょう。
「それに、発現者であることが望ましいです。お兄様たちの後を追うには、彼らの魔力をたどる必要があります。ですので、それが見えない一般の人もダメです」
「ほうほう」
私の淡々とした説明を、お滝はうなずきながら聞いていました。
「そして、これが一番大事なことですが……私が信じられる人でないとダメです。私が、この人たちにならお兄様のことを任せられると思う人にしか、この話はできません」
つまり、偉い立場にでなく身軽で、なおかつ能力者で、更には私が信頼を置ける。この三拍子がそろった人に当たればいい。
そして、その三拍子を満たす人は、私の知る限りでは、彼らしか、お兄様のご友人たちしか、いませんでした。
「……検非違使に行きます。彼らにお願いをして、お兄様たちのあとを追ってもらいましょう」
私は言うと、お滝には神社を任せて、検非違使の本部へと走っていました。
そこからは早かったです。門の前にたまたまいた三輪さんに声をかけると、彼女はまたたく間に大地をかけ、他の五人を招集してくれました。
私が事情を話すと、彼らにもそのしんこくさが伝わったのでしょう。皆は二つ返事で、快く私の依頼を引き受けてくれました。俺たちに任せろと言って、一目散に走ってくれました。
現在日記を書いているのは、その夜のことです。彼らが今どこにいるかは、分からないけれど……でも、あの人たちならきっと、お兄様たちに追いついてくれます。お兄様たちを、助けてくれます。
今の私には、祈ることくらいしかできませんが、どうか彼らの旅路が、平穏無事でありますように。そして、この一連の流れが、どうか落着しますように。
男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。
こんなことを言って日記を書き始めた方がいらっしゃると、いつしかお父様に聞いたことがあります。私もそれにならって、今日から日記を書き始めることにしました。少し気はずかしいですが、誰に読まれるでもありませんから、私の思ったことをそっちょくに書いていこうと思います。
今の時間は夜。月明かりが窓から差し込む中、私は、禮斎神宮の一室で日記を書いています。(『禮斎』の字は難しいです。さっき、解土さんに教えてもらいました)
私こと東久部良善乃は、つい昨日、巫女の見習いとして、この神社に住みこませていただくことになりました。やしきでちょうよ花よと甘やかされていた私が、神様に仕えるお手伝いさんをすることになったのです。
なぜなら、私の家が、誰かさんの魔法でボロボロになってしまったので。けびいしの皆さんがお父様をつかまえたことで、私の暮らすたよりがなくなってしまったので。
でも、だからといって私は、今の状況に絶望していません。十一年連れそった家が消えたのは、もちろん悲しいけれど、それでも私は、少なからず前を向いています。
それは、お兄様が昨日かけてくれた言葉のおかげです。私の手を取ってくれた彼は、私に向かって、君は悪くないと言ってくれました。ひとりにはさせないと言ってくれました。それが私には、とても嬉しかったのです。
住む家や財産を失ったとしても、まだまだ私にはたよれる人がいると、肇お兄様に、そう教えていただきました。そういう意味では、私はとても、幸運だったのかもしれません。
ですから、これはせんせいです。私はこの幸運にちかって、これからも前を向き続けて生きていきます。どんなこんなんがあろうとも、歩みを止めることはありません。
この日記を書き始めたのは、それを自分に言い聞かせたかったからです。今後私の身には、いろんな辛いことや悲しいことが起こると思います。しかし、日記を開くたびに、最初の項を読むたびに、そのたびに私は、初志を思い出すでしょう。
そうして、今日この日にちかいを立てた私が、来たる日の私に語りかけるでしょう。「まだまだ私は、頑張れるよ」、と。
願わくば、このちかいがいつまでも、何度でも、私の心を照らしてくれますように。私が今握っている筆が、この先ずっと折れませんように。
ここまで書いて眠くなってきたので、今日は寝ます。明日は、今日できなかったことを覚えて、少しでも、私を拾ってくれた神社の皆さんに、お返しができるようになりたいです。
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〇長月の下旬、今日は晴れ。
今日は一日中、遊子橋さんのお仕事のお手伝いを、お兄様と一緒にしました。
実は、遊子橋さんのお仕事ぶりを間近で見るのは、初めてでした。解土さんや他の巫女さんから話には聞いていたのですが、今日直接それを見て、やっぱり遊子橋さんはすごい人なんだなと、改めて感じました。
お掃除から始まって、都の人のよろず相談、まよけの結界の管理をしましたが、中でもそのすごさを実感したのは、二つ目のときです。遊子橋さんは、都の民草のお悩みを何でも聞いて、その解決に日々ほんそうしているのです。
大和で一番大きい神社の一番高い地位にいる人が、しゃがんで、庶民と目線を合わせて対話をしているのです。これは私にとって、本当におどろくべきことでした。私がやしきにいたとき、お父様などのえらい人は、指令が主なぎょうむで、自ら現場に足を運ぶことはなかったのですから。
私もそれを見習わなければいけないなとは思いつつ、遊子橋さんのように、全ての人を平等に扱う器量の大きさにたどりつくのは難しいのでしょう。そもそも、私は皆がもてはやすほど、聖人ではないので……。
と、遊子橋さんの話はこれくらいに。今日は一日中お兄様といられて、とても楽しかったです。何やら彼は、今朝がた結さんと喧嘩をしてしまったらしいです。それが原因で、部屋に一人でいたとか。お兄様からすれば、それはさいなんだったのでしょうが。
中でも一番嬉しかったのは、結界の管理の道中、私がかげ口を言われたときに、お兄様がそっと、私の頭をなでてなぐさめてくれたことでした。言葉は少なかったですが、それだけ私のことを想って、私だけの味方をしてくれたのが、とっても嬉しかったのです。
お兄様は、遊子橋さんと自分との間にへだたりがあることをうれいていましたが、私としては、ずっと私の味方をしていてくれたほうが嬉しかったり……そんなことを考えるのは、本当は善くない事なのかもしれません。
ほら、やっぱり私って、名前ほど善い子じゃありませんよね。お父様の娘だけのことはあるのかもしれません。
とにかく今日は、とても充実した一日でした。明日ももっと、満たされる一日になればと思います。おやすみなさい。
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〇神無月の中旬、今日は曇り。
今日は私にとって、とても重大なことが起こりました。一世一代のにゅーすがまいおりてきたのです。(『にゅーす』とは、お兄様の世界の言葉で、知らせという意味らしいです。何だか面白い語感です)
なんと、東久部良善乃十一才、禮斎神宮の巫女見習いであるこの私に、初の妹分ができたのです。私もついに、お姉さんになる時が来たということです。
珍しい銀色の髪をさげ、どこかむすっとした表情のその娘の名前は、『滝』と言います。彼女は私と同じく、お兄様たちがほごした、てんがいこどくの子供だそうです。
それを知った私としては、大いに気持ちがたかぶりました。このたかぶりは、同じような年の仲間ができた喜びからなのか、年長者としての責任感からなのか……
おそらく、そのどちらもがあって、私は、とってもやる気に満ちているのです。私がお姉さんとして、お滝をみちびかなくては。お兄様や遊子橋さんや解土さんが私にしてくれたようなほどこしを、彼女にもする必要があるのです。そう思うと、一層身が引きしまります。
……と、思っていたのですが。重大な問題が、一つありまして。
それは、当の本人にあまりやる気がない、ということなのです。
私のときとは、正反対と言いますか。これからの展望に胸をおどらせていた私とは違い、終始仏頂面で、教えた巫女の仕事も適当にやろうとする始末。あまりの無礼なそぶりに、ぼうぜんとしてしまったほどです。
いや、もちろん、皆がみんな、私のように前向きにはなれないということは分かります。今までこどくに生きてきた彼女なら、なおさらそうだということも。
とはいえ、もう少し恩に報いる気持ちを持ってもいいんじゃないかと、思わざるを得ません……何にせよ、これは、かなり大変なしどうになりそうな予感がします。
私にその役がつとまるかはわかりませんが、しかし最善を尽くしたいと思います。お滝をきちんとみちびけるかどうかで、私の真価が決まると言っても良いでしょう。
というわけで、今日は寝て、明日に備えます。まだまだ教えることはたくさんあるので、少しずつ彼女を変えていければと思います。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
〇霜月上旬、晴れのち曇り。
今日は久しぶりに、一日中お休みの日でした。
お滝が来てから一ヶ月ほど経ち、肌寒さもひとしおになってきた今日この頃。私たち二人は、街へお出かけに行きました。
思えば、彼女のだらけぶりにも、もうずいぶんと慣れてしまいました。そんなことに慣れる自分が情けないと思いつつも、お滝のへたれた根性が、一ヶ月やそこらでどうにかなるものではないということもおりこみずみです。
もっと長い目で、変えていかないと……彼女の芯に染みついたなまけぐせを、徐々に抜いていく必要があるでしょう。
さて、街に行ったという話でしたね。禮斎神宮の東には、立派な都の街が広がっています。人々の家のみでなく、市場や商店、広場や神社ぶっかくなど、色んな施設が立ち並んでいます。
私たちはあてもなく、その街をぶらぶらとしていたのです。以下、会話の内容もおりまぜながら書いていきます。
「あーあ、せっかくの休日だってのに、何でわざわざ外に」
「聞こえていますよ、お滝」
「あ、す、すんません……」
朝、いつまでも寝ていようとするお滝を叩き起こし、半ば無理やりに町へとくりだしました。こうでもしないと彼女は、いつまでもだらけようとするので。
「それにしても、だんだんと冬が近づいてきますね。風が寒いです」
「まあ、もう霜月っすからね……今日はここらで切り上げますか」
「ことにつけて帰ろうとするのは止めなさい」
あと、そのけいちょうふはくな敬語もやめてほしいです。
「冬物の服とか、かざりとかを見てみるのもいいかもしれませんね。お滝、行きましょう」
「いやあ、あたしは、そういうの興味ないんで……」
「あなたはただでさえ常日頃からしみったれた表情をしているのですから、しゃれっ気くらいは身に付けないとだめですよ」
「善乃さん、たまにめっちゃしんらつなこと言うっすよね」
「とにかく、ほら、行くよ!」
言って私は、お滝の手を引いて、髪飾りを取り扱っているお店へ行きました。おこづかいで、私とお滝の分を買うつもりです。
「この雪模様のくし、可愛いですね。あなたの銀ぱつに似合うのでは?」
「はあ、そっすか」
「それとも、むしろこの赤いかんざしの方が映えるかしら」
「ふーん、そういうもんすかね」
「もう、本当におしゃれの話が出来ないんだから」
年頃の娘のくせに、この子は全くそういうことに興味を示しません。お姉さんとしては、心配になってしまいます。
「あ、でも、おこづかい的に、二人分買うのはきびしいかも……どうしましょう」
「私の分はいいっすよ、別に」
「いいえ、そうもいきません。あなたはこういうの、一個も持っていないでしょう。ここは、お滝の分を……」
「どうしたんだい、善乃ちゃん。しんこくな顔して」
私がお財布を見つめながら悩ましい顔をしていると、脇から一人の男の人の声がかかりました。
振り向くと、そこには見知った顔のおじさんがいました。三六さんです。見た目三十路くらいの、ちょくちょく私に話しかけてくれる、気の良いおじさんなのです。
「ああ、三六さん……ええ。今少し、お財布がきびしくて。かみかざりを二つ買おうと思ったんですけど、一つはあきらめるしかないかと話してたんです」
「ん? 二つって……?」
「はい、一つは、このお滝に買ってあげようと思って」
私がお滝の肩を持ってずいと前に出すと、彼は口をおさえながら、かんきわまったように話しました。
「す、少ないこづかいで妹分におくり物たァ、なんて健気なッ……! よしっ! 善乃ちゃんのぶんは、お兄さんがおごってあげよう!」
「え、いや、悪いですよ……!」
「いいからいいから。ここはお兄さんに任せとけって」
言うと三六さんは、私の手からかんざしをとって、お会計を済ませてしまいました。余談ですが、彼は自分のことをお兄さんだと言い張るくせがあります。余談ですが。
「ほらよ、受け取りな」
「三六さん……ありがとうございます。大切にしますね」
「ふ、ふっ。良いってことよ」
私が笑顔で返すと、彼は後ろ手を振ってその場から去ってしまいました。何はともあれ、これで二人分のかみかざりを手に入れることが出来ました。
「……」
「? お滝、何か言いましたか?」
「いや、なんでもないっす」
その時、お滝が何かをつぶやいたような気がしましたが、私には聞き取れませんでした。
そのお店をたったあとも、私たちは色々なところに行きました。本屋さんとか、お茶屋さんとか、公園とか。
そしてその度に、色々な施しをしてもらいました。本屋さんでは、気になるずかんを買ってもらったり、お茶屋さんでは、お団子をつけてもらったり、公園では、遊び道具をもらったり。多くて書ききれませんが、本当にいろんな人に。
こういうことは、私にはかなりよくあることなのです。何故だかわかりませんが、町の人は、特に男の人は、私に色々なものをくれます。その度に悪いとは思っているのですが、向こうが半ば強気に押してくるので、受け取らないわけにもいきません。
そうして日がかたむき始め、そろそろ神社に帰ろうかとしたとき、かみかざりの店を出てからいぶかしげな顔をしていたお滝が、私の後ろで口を開きました。
「やはり、似とるな」
「え?」
「ひい様に、よく似とる……外面は気立てが良く物静かで■■としておるが、内面には自分に向けた欲が■■■■ている――しかしてその欲におぼれることもなく、むしろそれを■■■■ことで、周囲の者を■■■■にとりこにしておる……まさに■■の女、か」
「お、お滝? どうしたの?」
心ここにあらずといった様子で、ぶつぶつと何かをつぶやくお滝。ところどころ、何を言っているのか分からない所もありました。私は少し怖くなって、彼女の肩をゆさぶって声をかけました。
「……あ、ああ。いえいえ、何でもないっすけどね。ただ、昔の私の……ともだちが、善乃さんにすごく似てるって話っす」
「ともだち?」
はっと気づいて、とりつくろうかのように私に話すお滝。
「はい、まあ、アネキみたいなもんでした。何をするにも二人で、一緒にバカやって、みたいな」
まあ、もうはなればなれになっちゃったっすけどね。悲しさが宿る目で、お滝は言いました。
お姉さんのような人。お滝はてんがいこどくだと聞いていましたが、お兄様にほごされる以前から、仲の良い人がいたとは。
まだ幼い彼女にとって、そんな大切な人と別れなければならないというのは、とても辛いことだったのでしょう。私もお父様や家の皆とはなれて暮らしていますが、それにしたって彼らはまだ生きていて、この都にいるのです。
そんな私でさえ寂しくなるのに、今後会う可能性がほとんどないというのは……若干にして彼女は、私よりも辛い経験をしているようでした。
「……ねえ、お滝」
「はい?」
私は意を決して彼女の方に振り向き、口を開きました。
「あなたが今、私についてどう思っているかは分からない。でも私は、あなたのことを本当の妹のように思ってる。だから、私のことも、本当の姉だと思ってほしい」
「……!」
「もちろん、今すぐになんて言わない。これから過ごしていく中で、少しずつで構わない。だから、私にだけは、素直な気持ちをさらしてほしい」
本当の姉妹みたいに、と。
私が言って手を差しのべると、お滝は目を見開いて、意外そうな表情をしました。しかしすぐに、にやっと口の端をあげて、
「……はは、やっぱり、似てますね」
そういうと、私の差し出した手を取り、並んで夕焼けの帰り道を歩きました。
とまあ、こんな具合に、今日一日で、お滝との仲がぐっとちぢまった気がします。もっと精進して、彼女の心をほだしていければいいな、と、隣で寝息を立てているお滝を見ながら、今はそんなことを考えています。
今日はもう寝ます。おやすみなさい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
〇師走上旬、曇り
お兄様と結さんが、神社を出ていってしまいました。
何やら重々しい顔をして、更には見知らぬ男の人と共に。私に何の説明もなく、ただ留守を任せたとだけ言って。日が昇り切らない、うす暗い時刻に出て行ってしまいました。
はっきりと言いましょう。恥ずかしながら、私は、はげしくどうようしました。検非違使の任務でもなく、ただの旅のようなふんいきでもない。重大なことが起こっているのだろうと、何も分からないながらに感じ取ってしまったのです。
私も何か、彼らの役に立ちたい。だけど、どれだけ気取っても私はまだ子供だし、そもそも発現者でもない。
私に、魔法は使えない。
普段からたいそうな口を叩きながら、私は彼らに、何をすることもできないのでしょうか。そう思うと、胸がはりさけそうで、涙があふれそうでした。
「落ち着いてください。善乃さん」
そんな風に私が部屋で一人思いつめていると、私の肩に、背中ごしに小さな手が置かれました。
「お、お滝……」
「善乃さん。らしくないですよ。そんな風に思いつめて、ふさぎ込んでいる暇はないんじゃないですか」
振り返ると、いつになく真面目な表情のお滝が、私の目を見すえていました。
「本当にあいつらの手助けをしたいなら、いつもみたいに頭をひねってください。ぼうりゃくを巡らせて、手を考えてください。あなたは、そういうことが出来る人でしょう――可愛らしい見た目とは裏腹に、策士でしょうに」
「……!」
真剣な眼差しのまま、しかしいつものようにニヤリと笑って、私を励ましてくれるお滝。本当に私のことを想って言ってくれているのだろうということが、ひしひしと伝わってきました。
それが嬉しくもあり、同時に情けなくもありました。妹分のお滝が見かねて言うほどに、その時の私はひどい有様だったのでしょうから。いつまでもこんな風にしてはいられないと、私の胸に灯がともりました。
「ありがとう、お滝。あなたの言う通りです」
「へへ、そりゃどうも……んで、何か思いつきましたか?」
せっつくように、私の隣に正座していうお滝――今ふと思ったのですが、彼女の敬語、いつの間にか正しくなっていますね。たいだな性格は変わりませんが、一歩前進です。
「ええ。思えば、簡単なことでした。今の私にできることがすくないなら、誰かに頼ればよいのです」
そこで私は、頭にひらめいたことを語りました。
「しかし、むやみに大人にふれまわるわけにもいきません。ただ事でないことは確かなのですから、なるべくひそやかに行動したほうが良いでしょう。というわけで、偉い人はダメです」
本当は遊子橋さんや解土お姉さんにも相談したかったですが、彼らにも立場というものがあります。あまりだいたんな行動はできないでしょう。
「それに、発現者であることが望ましいです。お兄様たちの後を追うには、彼らの魔力をたどる必要があります。ですので、それが見えない一般の人もダメです」
「ほうほう」
私の淡々とした説明を、お滝はうなずきながら聞いていました。
「そして、これが一番大事なことですが……私が信じられる人でないとダメです。私が、この人たちにならお兄様のことを任せられると思う人にしか、この話はできません」
つまり、偉い立場にでなく身軽で、なおかつ能力者で、更には私が信頼を置ける。この三拍子がそろった人に当たればいい。
そして、その三拍子を満たす人は、私の知る限りでは、彼らしか、お兄様のご友人たちしか、いませんでした。
「……検非違使に行きます。彼らにお願いをして、お兄様たちのあとを追ってもらいましょう」
私は言うと、お滝には神社を任せて、検非違使の本部へと走っていました。
そこからは早かったです。門の前にたまたまいた三輪さんに声をかけると、彼女はまたたく間に大地をかけ、他の五人を招集してくれました。
私が事情を話すと、彼らにもそのしんこくさが伝わったのでしょう。皆は二つ返事で、快く私の依頼を引き受けてくれました。俺たちに任せろと言って、一目散に走ってくれました。
現在日記を書いているのは、その夜のことです。彼らが今どこにいるかは、分からないけれど……でも、あの人たちならきっと、お兄様たちに追いついてくれます。お兄様たちを、助けてくれます。
今の私には、祈ることくらいしかできませんが、どうか彼らの旅路が、平穏無事でありますように。そして、この一連の流れが、どうか落着しますように。
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