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第一章「和」国大乱

第四十三節「胸中」

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 そう仮定すると、辻褄が合うことはいくつもあった。

 一つに、黒幕がどうして、人間側のかなり詳しい事情まで把握していたのか、という謎について。

 彼は、人と妖怪の仲を裂きつつも、双方の被害を最小限にする癖がある。それは、これまで散々議論してきた話だ――その理由自体も謎ではあるのだが、今はおいておこう。

 例えば、妖怪を都に召喚して、人々の恐怖を煽るという作戦を遂行する場合、彼は、『その時その場所で、目撃者はいるが、その目撃者は命に関わる被害を受けないという状況』を作り出す必要がある。

 しかし、ならば山姥を神社の敷地に呼んだとき、黒幕は何故、『その場に解土さんという都合の良い人しかいないこと』を知っていたのか。

 何故、怪異の目撃者となりえ、かつ、有事の際にはその場から即時に離脱できる解土さんの、夜の見回りのコースを知っていたのか。

 単に、探査の魔術が優れているのかとも考えたが――それでも、彼女のルーティンを、それも夜の見回りなどという、普通の人が知らない些末な業務のことを完全に把握しているのは、どうも不思議だ。

 またもう一つ、シンプルかつ重要な謎として、そもそも黒幕は、結界をどう破ったのかということがある。

 山姥や酒呑童子を都におびき寄せたとき、また、他の事例においても。都を取り囲む要塞として機能する魔よけの結界を、黒幕はどうして破ったのか。

 これも勿論、そういうスキルを持っているから、という結論で、一応は片付いてしまうのだが――

 もし、それを故意に壊せば、『彼』が気付くはずなのだ。

 都の結界を一身に負って丁寧にメンテナンスをしている『彼』が、その異変に気付かないはずがないのだ。

 だが。

 その『彼』自身が黒幕ならば?

 そう仮定すれば、そのような無数の謎は、全て紐解かれてしまう。

 元より国の中枢、都を守護する神社の長という地位についている『彼』ならば――頭を捻らずとも、上記のような問題に限らず、様々な障壁を十把一絡じっぱひとからげに超えてしまえる。

 その仮定によると、これ以上ないくらい、全ての事象に説明がつく――ただ。

 それは俺たちにとって、あまりにも認めたくない仮定だった。

 認めたくなくて、目を逸らしたい仮定だった。

 だから俺たちは、出雲への道中、全くの無言で移動した。比翼連理のテレパシーさえ使わなかった。

 胸の奥が締め付けられて、何かを言える状況じゃなかったから。何かを話せば、途中で堰が切れてしまいそうだったから。ただ、あのお札を握りしめて、がむしゃらに走った。

 阿波を発ち讃岐を越え、瀬戸内海を渡って備後の山を登った。その時点でもう、出発から二時間は経過していたと思う。それでも俺たちは足を止めず、日本海側へ、出雲の方へと、足を動かした。

 何度も頭の中で逡巡する、最適な、しかし最悪な想定に苛まれながら。

 この目で『彼』の姿を見るまでは、まだ分からないじゃないか――と。そんな愚かしい楽観は、さりとて崩れ去った。

 出雲のの地。国造りの神が祀られていた、大社おおやしろのある地へ降り立った俺たちの目の前には――果たして、『彼』がいたのである。

「なんでここにいるんですか――遊子橋さん」

 震える声を抑え、脚を踏ん張りながら、俺は目の前の『彼』に、分かり切った問いを投げかける。

 すらっと高い背丈、頭に冠をかぶり、黒い袍と紫の袴という宮司の正装を着用している、顔立ちの整った『彼』――朽ちた大社おおやしろに背を向け、正面から俺たちと対峙する『彼』。

 遊子橋崇文さん。禮斎神宮の宮司であり、俺たちを拾ってくれた恩人でもある、『彼』に。

「ははは、おかしな質問ですね。肇さん。それに結さん。あなたたちは、それを知っているからこそ、ここに来たのでは?」

 それに対し、普段と変わらない柔和な莞爾かんじで、答えを返す遊子橋さん。いつもは安心を覚える彼の笑顔を、今日は直視できない。俺は少し目線をずらしながら、言葉を続ける。

「……本当に、あなたなんですか。百年前から続く、人と妖怪の対立を生み出したのは」
「はい、そうです」
「自分で結界を破って、山姥や酒呑童子たちを、都に召喚して……」
「正しく」
「……禮斎神宮の宮司という立場を利用して情報を得て、全てを有利に進めてきた」
「ええ、申し開きをするつもりはありません。正真正銘、この私が、遊子橋崇文こそが、あなたたちが――いいえ、皆が追い求めていた、あの『黒幕』です」

 彼から肯定の言葉が飛び出すたび、俺の中の何かが崩れていく。

 山姥に追い詰められた時と、同じだ。この人が黒幕なのだと頭で理解はすれど、今の今まで、その実感が出来なかった。したくなかった――そんな拒絶の壁が、徐々に破壊されていく。本当にこの人が犯人なのだと、腑に落ちる感覚。

 おそらく、結も同じ思いなのだろう。お札を握る彼女の左手に、力が入っているのが分かる。

「……半妖の里に行きました。そこで、深雪さんや八百比丘尼さんにも会いました」
「ええ、そうですね。あの酒呑童子の入れ知恵で、あなたがたは私の古巣へと赴いた。結果論ですが、私にとっては、彼を召喚したのは失敗だった」

 沈黙を恐れて言葉をつづける俺に、全て知っているという素振りで返す彼。

「彼女らの話は聞いたでしょう? 半妖は、人からも妖怪からも拒絶され、惨めな人生を送ってきたと――ええ、私も、同じような過去を送ってきましてね」
「……だから、そんな思いをする半妖を消すために、こんなことをしでかしたんですよね」
「おや、やはりそれも、見抜かれていましたか。いやはや、胸の内をさらされるというのは、何とも恥ずかしいものですね」

 そう語る遊子橋さんは、未だ笑顔を崩さない。崩してくれない。

「はい。私はそのために、このようなことを起こした。実際、人王と魔王の袂が別れてから、生まれる半妖はかなり少なくなりました。今となっては、人、妖怪、そのどちらもがどちらもを、少なからずとも忌避している――大成功です。大成功だったのです、私の計画は」

 あなたがたが、この世界に来るまでは――と。

 声色を少し低くして、彼は続ける。

「私の想定外は、常にあなたがたと共に起こりました。転生という奇跡から始まり、山姥との邂逅、再会、祠の破壊、酒呑童子との和解――そして、隠れ里への来訪。あなたがたは行く先々で、私の想定を崩していった」

 風にたなびく髪をそのままに、彼は一歩、大社の方へと後ずさった。その動きに、俺たちは反射的に身構える。

「――しかし、まだ崩れきってはいない。私の理想は、まだ終わってはいない。今、まさにこの瞬間に諦めなければ。悲願の達成は、なる」

 力強い口調で、更に二、三歩と、後ろへ下がる柚橋さん。

「……興覚めかもしれせんが、先にお教えしましょう。今から私がこの地に呼び出すのは、私の全てをつぎ込んで召喚するモノ――それは、山を動かすほどの力を持つモノ。大地を操る、造国のカミ」

 彼はその場で俺たちの目を見て、滔々と手の内を明かす。

 なぜそんなことをするのかという疑問が、頭をよぎったが――いや、問題はそこではない。問題は、彼が言った言葉の方だ。

「い、いや、神って、どういう……」
「あなたがたが思う『カミ』そのものですよ。私はその力を借り、この大和を、文字通り文壇する。今、心の内で分かれているだけの境界を、可視化する。そうして目に見える距離を作り、人妖に知らしめるのです――君らは、交わってはならないということを」
「っ――!!」

 彼のとんでもない主張に、俺たちは揃って絶句してしまう。

 その神とやらの正体は分からないが、しかし、嘘やでまかせでないことだけは分かる。

 彼は、本気でやろうとしているのだ。本気で神を呼び出し、この大和を物理的に分断し、そして、消えない礎をこの国に植え付ける気なのだ。

 二度と交わるなという、呪いのこもった礎を。

「ま、待ってください! まだ――まだ、間に合います! もうやめにしましょう、こんなことは……!」
「そうですよっ! そんなひどいこと……」

 すぐさま前のめりで、説得にかかる俺たち、だが――

「いいえ、もう遅いのです。今ここで私が行動をやめたところで、すでに私の祠の防衛装置は、大和中で起動してしまっています」

 未だ張り付いたような笑顔をしている彼の口から、晴天の霹靂のような事実が明かされる。

 祠の防衛装置がもうすでに、『大和中で』起動してしまっている? 彼は、そう言ったのか? 

「や、大和中でって――拠点は、三つじゃないんですか!? 阿波、下関、出雲の三つじゃ……」
「いえ、それは、妖の領域内での話です。それに加えあと三つ、私は人の領域に拠点を持っている」

 具体的には、陸奥、武蔵、加賀の三つですが――まるで用意された文章を読むような平坦さで、ただ淡々と事実を述べる彼。

「そ、そんな……、じゃあ、今も人間の領域で、あのがしゃどくろみたいな妖怪が出てきているってことですか……?」

 額に汗した結が、沈痛な面持ちで彼に問いかける。そうだ。もし、あのレベルの妖怪が、人の国で暴れだしたとしたら――その被害はどうなる? 

 ともすれば、今までのように、人命が脅かされないとは言い切れないのではないか?

「はい。そういうことになります。ここでのんびりしている時間はないのですよ、お互いに――ここが正念場。まさに、最終決戦です」

 と、俺が思い惑っていると、彼はついに俺たちに背を向け、まっすぐに大社の方へと歩きだしてしまった。

「ま、待っ――遊子橋さん!」
「……」

 俺の呼びかけを無視し、一直線に社へ向かう彼。その歩みに、迷いは感じられない。

「「――ひとつだけ教えてください、遊子橋さん!!」」

 だが俺たちは諦めず、一目散に進むその背に向け、大声を張り上げて彼に問いかける。二人がずっと気になっていた、あのことを聞くために。

 ……確かに今、ここでちんたらしている暇はない。おそらく彼の持つ最大の切り札であろうそれを止めるには、今もなお歩を進める彼の背中に、銃弾を撃ち込むのが正解なのかもしれない。
 
 でも、それでも俺たちは、聞きたかった――信じたかった。彼の、胸の内を。

「遊子橋さん、あなたはなぜ今まで、人の、妖怪の命を奪わなかったんですか!!」

 俺が声を荒げると、彼の歩みが、ぴたりと止まった。先ほどまでの一心不乱なそぶりが、嘘かのように固まったのだ。

「調べたんですっ。あなたは、苦い思いをする半妖を大和から消すため、百年もの月日をかけて計画を実行した――でも、その過程で、命を奪うことを嫌い、大事おおごとになることをしなかった。できたはずなのに、しなかった」
「……」
「それは――それは、あなたが心のどこかで、人や妖怪を憎み切れなかったからじゃないんですか。どうしようもない私たちを、見捨てることができなかったからじゃないんですか!」
「…………」
 
 俺に続き、結が彼へと言葉をかける。

 そうだ。

 もしも彼が、俺たちのことを憎み、ただ半妖の滅亡を望むのならば、そもそも俺たちを根絶やしにするような計画を立てればよかったのだ。そうすれば、確実に半妖は滅ぶ。にっくき人間や妖怪も、この世から消え去ってしまう。

 しかし、彼はそうはしなかったではないか。大きな波風を立てず、そのために回りくどいやり方を好んでいたではないか。

 それは、彼が最後の最後まで、人と妖のことを見切れなかった証左なのではないか。

「……そんなのは、君たちの買い被りで――」
「俺にはっ! 転生してからずっと、あなたの側にいた俺たちには! あなたの今までの言動が、全部嘘だったなんて思えないんですよ!」

 遊子橋さんのかすれた言葉を遮り、俺は半ば怒鳴るように主張する。胸中の想いを、おもいっきり彼へとぶつける。

 俺たちには、彼と過ごした日々が、彼からもらった恩が、彼が施した慈悲が――人間に向けられたそれらの想いが、すべて嘘だとは到底思えない。

 だから、今までずっと、残してきた謎――酒呑童子と同盟を組んでからずっと、置いておいた謎について。

 黒幕が、人と妖怪を殺さなかった理由について。

 俺たちには、今となっては、理解できる――彼が、遊子橋崇文が黒幕であるのならば!

 これ以上なく慈悲深い彼に、どうして命を奪うことができようか!!

「だから俺たちは、まだ間に合うと言っているんです!」
「あなたにその心があるなら、今からでもやり直せる! だから、私たちを信じて――」

 と、言葉を重ねるうちにヒートアップをし、捲し立てる俺たちの言葉が終わる前に。

 彼は突然、こちらを振り返った。但し、うつむいたまま――顔が見えないまま。

 その咄嗟の行動に、俺たちは言葉を詰まらせてしまう。出かかった言葉を、ひっこめてしまう。

「……確かに、私は半端者だ」

 その静寂の中、彼は呟くように、重く低い声を漏らす。

「――私は遠い昔、人や妖怪から迫害された。父と母を失い天涯孤独の身となった私を、半妖であることを理由に追い払い、除け者にした。私は、彼らを深く憎んだ――」

 彼は、ぽつりぽつりと、身の上を独白する。

「――そんな私に、両親はあるものを授けてくれていた。それは『天性』――あるいは『魔性』。魔力を操り、魔法を扱う力。暗躍に役立つ『隠匿』の特性を。それに気づいたとき、私は喜んだ。『これで、憎き奴らに復讐をすることが出来る』、と――」

 自身の能力を明かしながら、彼は続ける。

「――しかし、どうしたことだろうか。いざその『特性』を使って、とんでもないことをやってやろうとするたびに、私の中の何かが、それを妨げた。私を虐げてきたはずの彼らを、殺めることが出来なかった――」

 懐に手を入れながら、彼は続ける。
 
「――力を持て余し、放浪した末、私は八百比丘尼に拾われることにした。里に住む半妖たちの境遇を知れば、彼らへの憎しみを深め、行動に移すことが出来るかもしれないと思ったからだ――」

 でも、できなかった。

 私は結局最後まで、彼らを殺したいと思うほどには、彼らを憎み切ることが出来なかった。

 懐からあのお札を取り出し、彼は続ける。

「――何度も考えた。何故私は、そこへ踏み切れないのだろうかと。半妖をこの世から消すと決めて里を飛び出してからも、人と妖を引き裂く計画を立てている内も。何度も反芻して、何度も自照して、やっと思い出したのは――子供の頃の記憶だった」

 ああ。

 私に道を説いた父は、紛れもなく妖だったのだ。

 私に愛をくれた母は、紛れもなく人だったのだ。

 そんな親から生まれ、育てられた私が――彼らの良心を際限なく浴びていた私が。

 彼らを憎み切れるはずがなかったのだ。

「……ね。私は半端者なんですよ。血筋はおろか、心根までも半端者なんです。国を動かすほどの野心を持っていながら、相手への甘さを捨てきれなかった。どうしようもなく中途半端な存在なんです。だから、あなたたちの言うことは間違っていない」

 そう言うと彼は、持っていたお札を、地面へはらりと落とす。

 その動作を見た俺たちは、束の間、安堵を覚える。説得が通じ、召喚をやめたのかと――

 しかし。

「――しかし。私の悲願が間違っているとも思わない」

 彼は顔を上げ、こちらに表情を見せた。

 そこにあったのは、いつもの柔和な莞爾ではなく、覚悟の決まった顔。

 凛々しく、目に力が宿った表情。
 
 今まさに迷いを断ち切ったという、そんな決意の表れだった。

「地獄を送る半妖が生まれるくらいならば、人と妖怪の仲を引き裂くこともやむを得ない。私は、その思いを拭い去ることはできない。人や妖を、簡単に信じ切ることなどできやしない」

 言うと遊子橋さんは、左手を口元へ、右手を地面へと向け、ぴたりと止まる。

 その目の前にいる俺たちはと言うと、そんな彼の表情に息を呑んで――ともすれば、呆けて。なにも、することが出来なかった。

「だから、肇さん、結さん。やっぱり、ここが最終決戦なんです。あなたがたの理想が、私の理想を上回ると思うのならば――見事、私を止めて見せてください」

 言い終わると、彼は術を敷く――彼の魔力が、お札を介して大地へと伝い、更に大社おおやしろへと流れる。

「『いつななここのたり布留部ふるべ由良由良止ゆらゆらと布留部ふるべ。』――この国に眠る、古代の記憶よ。地を揺るがし、山を集め、川を引く者よ。今ここに、我の全てを用いて甦れ――」

 彼が呪文を唱えると、彼の中心から、さらに大量の魔力が――いや、魔力だけではない。

 うまく説明はできないが、彼の『すべて』が流れ出し、奔流している。それは、気か、精か、それとも魂か――それらは薄紫に発光し、気流を産み、当たり一面を渦巻くほどであった。彼の髪が、天へと逆立つ。

「「遊子橋さん!!」」

 呆気に取られていた俺たちが、せめてもの抵抗にと彼の元へと駆け付けたときには、もう遅かった。

「来たれ。造国の古代神――『大太郎法師だいだらぼっち』よ」

 その言葉を皮切りに、ふっ、と彼の体から力が抜け、大地へとひれ伏す。

 瞬間、亀裂。

 眼前の大社を中心に、何キロにも及ぶほどの亀裂が、大地に走る。

「うぉ……!」
「きゃっ!?」

 腰を砕くほどの地響きが生まれ、俺たちは咄嗟にしゃがみ込む。倒れた遊子橋さんに被害が加わらないよう、彼の身を庇いながら。

 そして、隆起。
 
 亀裂の中心、大社の下の大地が、轟音を轟かせながら、どんどんと盛り上がっていく。その隆起の勢いは、衰えることも無く、天へと伸びていく。

「っ、ここは危険だ! 一旦引く!!」
「う、うんっ!!」

 大地を突き破る『それ』のあまりの巨大さに舌を巻いた俺たちは、彼の身を抱えながら『動静自在』を発動し、脱兎の如くその場から脱出した。直後、俺たちのいた大地の下からも、『それ』の一部が露出する。

「……こ、ここなら、一旦は大丈夫だよね――」
「ああ、とにかく、早くあいつを――」

 そうして、ひとまず安全な場所に移動した俺たちは、そろって『それ』のいる方を振りむき――そして、言葉を失った。

『それ』は、山よりも高い背丈を有していた。

『それ』の頭は雲を突き破り、天をさしていた。

『それ』の足は大地を抉り、『それ』の手は大樹を薙ぎ倒した。

 がしゃどくろなどとは、比べ物にならないほどの巨大さ――目測ではかることが出来ないほどの、巨人。

 大地を、山林を、源泉を、炎熱を、そして魂魄を――この世の全ての質料を混ぜて、それがひとの形相を取ったかのような、何とも描写し難い外観。

 人の身である俺たちには、その実態を正確につかむことすらできない、圧倒的に高位の存在。

「これが、神様――」
「――国を造った、だいだらぼっち」

 俺たちは口をそろえ、その壮大さを述べる――称える。

 畏敬と絶望の入り混じった、その言葉で。
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