キッドナッパー

Day.2

7

朝の光が窓の外から差し込んでくる。
まだ太陽は完全に昇りきっていないが、空はすでに淡い青に染まりつつあった。

フロントガラス越しに見える世界は、まだ眠っているような静けさを帯びている。
駐車場の奥では、トラックが数台並んでいる。
エンジンをかけたばかりなのか、白い排気がゆっくりと立ち上がっていた。

青年はゆっくりと目を開ける。
車内は静かで、遠くの鳥の鳴き声だけが微かに聞こえる。

助手席の少年はすでに目を覚ましていた。
ライトグレーのパーカーを胸元にかけたまま、小さくあくびをする。

「寒くなかった？」
青年はシートを戻しながら、ふと少年に目を向けた。
少年は少し肩をすくめる。
「うん、平気。」

窓の外では、淡い朝の陽が水溜まりの表面を撫でるように照らし、小さな反射を生んでいる。
アスファルトの湿り気はまだ完全には乾いておらず、うっすらと霧のような気配が残っていた。

青年は車内の空気を感じながら、エンジンをかける。
車の中に低く振動が広がり、カーステレオが微かにノイズ混じりの電子音を漏らす。

「腹減ってる？」
少年はぼんやりと窓の外を眺めながら、少し考える。
「……なんか温かいもの食べたいな。」
青年は頷き、ゆっくりと駐車場を離れる。

タイヤが濡れたアスファルトを踏みしめる音が、微かに車内に響く。
遠くの空には、うっすらと白い雲が漂っていた。
新しい一日が、静かに始まっていく。