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Day.2
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しおりを挟むエンジンの振動が一定のリズムを刻みながら、車はまっすぐな道を進んでいた。
遠くに見える標識がじりじりと近づいてくる。
舗装された道路の両脇には、草原が広がっている。
背の低い草が風に揺れ、ところどころで色褪せた標識が寂しく立っていた。
遠くには錆びかけたガソリンスタンドの看板がぽつりと浮かんでいる。
助手席の少年は窓枠に腕を乗せ、流れる風の冷たさを確かめるように指先を動かした。
青年はハンドルに指をかけたまま、ふと隣の少年に目を向ける。
「そういえば、キミは何で逃げてるの?」
少年は一瞬だけ視線を外へ向けたが、すぐに青年の方へ振り返る。
「うーん……全部から?」
「全部?」
「家も、学校も、父さんも、全部。」
助手席の少年は腕を組み、膝の上に肘を乗せる。
「息が詰まるんだよね。気づいたら全部決まってる感じ。」
青年は少しだけアクセルを踏み込みながら、その言葉を反芻する。
「みんな、僕のためだって言うんだけど……僕はそうは思わないんだ。」
少年は窓を少し開け、吹き込む風に髪を揺らしながら外を眺めた。
湿った風が車内に流れ込み、わずかに土の匂いを含んでいる。
遠くの空は淡い雲をまとい、陽の光が穏やかに差し込んでいた。
青年はしばらく黙っていたが、やがて少しだけ息をつく。
「みんな、そういうもんかも。」
少年は手を窓枠にかけ、少し考え込むような顔をする。
「それより、お兄ちゃんはさ、この辺の人?」
青年はハンドルを軽く切りながら、その言葉に少し考え込む。
「いや、そういうわけじゃないけど。」
少年はゆっくりと体をシートに沈める。
「へぇ、じゃあどんなところに住んでるの?」
青年はふっと息を吐き、視線を道路へ戻した。
「えっ?……ずっと、同じところにいたよ。変わらない場所っていうか。」
その言葉はどこか曖昧だった。
少年はじっと青年を見つめる。
車内の静けさの中、ラジオのノイズ混じりのメロディがかすかに響いている。
「お兄ちゃんって、変わってるね。」
窓の外では、草原の中にぽつりと立つ標識が風に揺れていた。
青年は何も言わず、ただアクセルを踏み込む。
車は、まだ続く道をまっすぐに進んでいく。
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