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Day.2
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しおりを挟む夕方、ガソリンスタンドの端に車を停めると、青年は軽くハンドルを叩いた。
「ガソリン入れてくる。」
そう言ってドアを開け、ゆっくりと車を降りる。
助手席の少年は座ったまま、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
空はすでに薄いオレンジに染まり始め、遠くの丘の端がかすかに霞んでいる。
ポケットに手を入れたまま、少年はふと思い出したように口を開く。
「お兄ちゃん、さ……星って見たことある?」
青年は給油機のノズルを取りながら、ちらりと少年へ視線を向けた。
「……星?」
「満天の星。映画みたいなやつ。」
青年は少し考え込むようにして、給油口のキャップを開ける。
「映画みたいなのは、ないかも。」
少年はそれを聞いて、小さく笑う。
「僕、見てみたいんだよね。」
青年は何も言わず、ただガソリンのメーターを見つめる。
「キャンプ場行きたいな。田舎なら見えるかもしれないし。」
青年はゆっくりと視線を戻す。
「あ……僕、隣のコンビニ行ってくるね。」
給油機に視線を落としていた青年は、なんとなく頷く。
「ん、わかった。」
少年は車を離れ、コンビニへ向かう。
夕暮れの光が傾き始め、駐車場のアスファルトには長い影が伸びていた。
店の自動ドアが開くと、冷たい蛍光灯の光が広がった。
少年は店内を軽く見渡しながら、ポケットの中を探る。
指先がスマホに触れた。
そのままサイドボタンを押して電源を入れる。
数日ぶりに起動したスマホがわずかに振動し、画面が淡く光る。
通知が次々と表示される。未読のメッセージ、着信履歴。
けれど、少年はそれらを軽くスワイプして消し、飲み物の棚へ向かう。
何かを確認するために電源を入れたわけではない。
ただ、なんとなく。
レジへ進み、スマホを手に持ったまま無意識に決済の画面を開く。
「ピッ。」
支払いが完了する。
その瞬間、何気ないひとつの動作が、これまでの旅の均衡を崩した。
青年はまだ給油機の横に立っている。
少年は変わらず買い物を続けている。
しかし、どこかで、ゆっくりと歯車が動き始めていた。
旅は、ただの逃避行から別の形へと変わろうとしている。
そして、そのことに少年はまだ気づいていなかった。
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