キッドナッパー

TERRA

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Day.3

19

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モーテルのドアが静かに閉まる。
朝の空気は冷たく、湿り気を帯びていた。
外へ出ると、霧が低く垂れ込め、木々の影を曖昧にぼかしていた。
建物の外壁はうっすらと露に濡れ、駐車場のアスファルトには細かな水滴が光る。

遠くで鳥の声がする。
しかし、霧のせいで、その姿は見えない。
青年は無言のまま、少年のフードを引き上げた。
布地がすっぽりと少年の頭を覆い、さらに影を作る。
少年はそれに逆らうことなく、ただじっとしていた。
昨日から借りている青年のパーカーは、まだ少し大きい。
それでも、この朝の湿気と冷たさから身を守るには十分だった。

駐車場には他の車が数台停まっている。
しかし、霧のせいで、その輪郭はぼんやりと滲んでいる。
青年はドアを開けると、運転席へ座る。
少年もそれに続き、助手席へ滑り込んだ。
ドアが静かに閉まる。
エンジンをかけると、車の振動が微かに響く。
しかし、すぐに二人は言葉を失った。

「……さて。」
青年はハンドルを握りながら、短く息をつく。
「どこへ行こうか。」
少年は隣で、じっとフードの影の中から外を見つめていた。
霧に包まれた景色が、フロントガラス越しに広がる。
木々の間に潜む何かが、こちらを見ているような錯覚を覚える。

けれど、行き先はまだ決まらない。
車のエンジン音が、静かな朝の空気を揺らした。
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