キッドナッパー

TERRA

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Day.3

23

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霧が深く立ち込める山道を、二人は黙々と歩いていた。
湿った土を踏みしめるたびに、足元から柔らかな音が響く。
遠くで鳥の声がしたが、それはすぐに霧に呑まれて消えた。

少年は無意識にパーカーのフードを深くかぶる。
空気がひんやりと湿っていて、首元まで布を引き寄せた。

青年は少し息を吐き、後ろを歩く少年をちらりと見る。
「……誰も追ってこないよね?」
少年の言葉は微かに震えていた。

青年はその問いを受け流すように前を向き直し、短く答えた。
「キミは見つかっても大丈夫だから、心配しなくていいよ。」

それは、自分でも分かるほどぎこちない笑顔だった。
少年は青年の横顔を見つめたまま、少し眉をひそめる。

「……そう?」
「そうだよ。」

青年はわざと視線を外し、また歩き始める。
少年も黙ってついていく。

道は徐々に険しくなり、ぬかるみが靴底に張り付いた。
小さな石がごろごろと転がる。

少年が足を滑らせ、バランスを崩しかける。
その瞬間、青年の指が軽く少年の手に触れた。

掴むつもりではなかったが、少年も自然とその指にしがみつく。
そのまま、手は離れずに歩き続けた。

霧が深まり、木々の隙間からの光は弱々しい。
湿った風が吹き抜け、葉の間をささやくように揺らす。

その時、ぽつり、と冷たい感触が頬をかすめた。

青年は空を仰ぎ見る。
雲が厚く広がり、湿った空気が重さを増している。

「雨、降ってきちゃった……。」
少年が呟く。

次の瞬間、ぽつ、ぽつ、と降り始めた雨粒が勢いを増した。

「やばい、どこか雨宿りできるところ……。」
青年が周囲を見渡すと、少し先に大きな岩陰が見えた。

「向こうに行こう。」
二人は息を合わせるように走り出した。

二人はぬかるんだ地面を踏みしめながら、岩場に向かって走っていた。
雨は勢いを増し、霧と混じり合って視界を曖昧にしていく。

「急げ!」
青年が振り返りながら声をかける。

少年はフードを深くかぶり、濡れた靴で必死に地面を蹴った。
しかし、その時。

ズルッ
少年の足が濡れた泥の上で滑った。

「あっ!」
体が傾き、足元が崩れる。

バランスを失った少年はその場に倒れ込みそうになるが、必死に踏みとどまろうとする。
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