キッドナッパー

TERRA

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EPILOGUE

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町は静かだった。
夕暮れの淡い光が屋根を撫で、細い電線の影を地面に落としている。
風はゆっくりと吹き抜け、家々の間をすり抜けながら、遠くへ消えていく。

車のタイヤが舗装された道路をなぞるように滑り、控えめなブレーキ音とともに停車した。

青年は窓越しに外を見つめる。
街並みはどこか懐かしく、しかし時間の流れが確かにここにも刻まれている。

門の先、シンプルなダークグレーのフレームの扉がそのままの姿で佇んでいた。

父が先に車を降りる。
青年は、一瞬ためらいながらも、静かにドアを開ける。

空気の温度が変わる。
地面を踏みしめる感触が、思い出せないほど遠いものに感じる。
家の前に立ち、父は一歩前へ進む。

ドアノブに手をかけ……。

カタン。
ゆっくりと扉が開かれる。

そこに、柔らかな光が広がる。
そして、少年が立っていた。
素足のまま、迷いのない目で青年を見つめる。

風が静かに吹き抜ける。

一歩、少年が踏み出した。
その表情は、あまりにも自然で、あまりにも温かかった。

青年は無意識に息を止める。
鼓動が、少しだけ早まる。

少年の口元が僅かに動いた。
「おかえり、お兄ちゃん。」

その瞬間、沈黙の中で時間がほどけた。
光が滲み、風がゆるやかに通り抜ける。
青年は、微かに目を伏せたまま、立ち尽くした。
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