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EPILOGUE
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しおりを挟む玄関の扉がゆっくりと閉まる。
警察官の足音が遠ざかるのを聞きながら、男は静かに封筒を握りしめた。
指先に感じる紙の質感は、どこか冷たく硬い。
ソファに腰を落とし、封筒の縁をゆっくりと裂く。
視線を落とすと、白い書類の上に黒い文字が整然と並んでいた。
その一行を追うごとに、胸の奥に沈んでいた何かが、微かに軋む。
DNA鑑定報告書
発行日:20☓☓年☓☓月☓☓日
検査機関:中央法医学研究所
依頼者:帝都警察署
対象者:
(対象者①)
(対象者②)
検査の結果、対象者①と対象者②のDNA一致率は99.98%と確認されました。
また、過去の犯罪捜査データベースに登録されていた10年前の誘拐事件における行方不明者のDNA情報との照合を行った結果、完全一致が確認されました。
この結果により、対象者①は10年前に誘拐された少年と同一人物である可能性が極めて高いと判断されます。
発行責任者:法医学研究所 所長
承認:帝都警察署 科捜研担当
「DNA鑑定の結果……99.98%の一致。」
肺の奥まで詰めていた空気を、長く押し出す。
それは溜息と言うには、あまりにも静かだった。
視線を巡らせる。
薄暗いリビングには、読まれかけの新聞が机の隅に折り重なっている。
台所の片隅には、冷めたままのコーヒーがひっそりと佇んでいた。
何も変わらない夜だったはずなのに、今は妙に空間が広く感じられる。
封筒の紙が、指の中でわずかに折れる音を立てた。
男は目を閉じる。
それは、あまりにも長い時間がかかった報せだった。
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