9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん

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にしょう!

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「この衣装は今の体躯によく似合っていると思っていたのだが……誰しもが一瞬にして二度も三度も四度も見るのだ」

「それは似合ってるんじゃなくて『いやこれ王太子?』って引きながら確認してるだけです」

 マクシミリアンの言葉をアリーは一刀両断した。離宮で彼を見た瞬間のアリーだって、短い間に五度見くらいしたと思う。
 天才クリスが驚愕したように口を開いた。

「山から下りてすぐリンダに会いに行ったのですが。彼女は『衣服がはち切れそうになるなんてどれだけ修行なさったの』と泣きながら褒めてくれたのです。しかし最終的に気絶してしまったのは、この身からあふれ出る闘気のせい……?」

「いやそれ褒めてませんし、あきらかに闘気のせいですし」

「そんな……」

 クリスが手で口元を押さえる。四天王たちが一斉にざわつくのを見ながら、アリーは肩で息を吐きだした。
 アリーシアだったころの四人の友人たちは、おそらく今も細っこい深窓のご令嬢のままだろう。
 過去9回の前世では、彼女たちは公爵令嬢の聖女苛め(してない)に加担したことになっていたが、みんな大人しくて気弱で心優しいお嬢さんだ。そして、揃って己の婚約者のことを、心から愛していた。

「これはゆゆしき事態だ。俺には闘気に耐性のある、太く雄々しく逞しいアリーがいるが、お前たちの婚約者はみな繊細。社交シーズンが始まるというのに満足にエスコートできないようでは、我が国の危機を救う会の活動がままならなくなる」

「さりげなく貶しながら頭数に入れるの辞めていただけません? 魔法の指南役をするとは言いましたが、社交の場のお相手役は承諾してませんから!」

 アリーの文句を清々しいまでに無視して、マクシミリアンは目を閉じて己の世界に入ってしまった。

「早急に自然体の構えを習得する必要があるな……腹の底には迸る戦意を持っていながらも、澄んだ湖面のごとく静まり返った、一見無防備な構えを会得する修行を……」

「殿下……それはもしや、山に入り樹木の下で沈思黙考に浸る修行、つまりは瞑想……!」

 リーダー格ジェフリーが問いかけ、マクシミリアンが「うむ」とうなずく。

「もう一度入るしかあるまい、あの山に」

「いや瞑想とか神に祈る前に普通にしてるはずですし、なんであなたたちは一直線に山に突っ走るんですか!?」

 まあこの場に座して目を閉じられても死ぬほど怖いんだけど、と思いながらアリーはツッコんだ。

「案ずるなアリー、明日の午後には戻る。わが身を覆うこの闘気、見事に静めてくるから待っているがいい!」

 マクシミリアンが膝の上のスティラを床に下ろし、ぬうううんと立ち上がった。そしてバッササアアアッとマントを翻す。面倒くさいからツッコまなかったけど、室内でもマントを羽織る癖は要矯正、と心にメモを取る。

「どこまでもお供いたします、殿下。己を見つめ直し、天地自然の理に触れ、自然体の構えを会得致しましょう。いくぞ、皆!」

「押忍!」

 四天王たちが見るものをただ引かせる暑苦しいノリで立ち上がる。「散!」と言って一瞬で消えそうな勢いでありながら、彼らは縦一列に並んでお行儀よく扉から出て行った。
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