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にしょう!
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結論から言うとマクシミリアンたちはだいぶマシになった。
アリーの恐れていたゼロに何を掛けてもゼロという事態にはならず、当社比3倍くらいの勢いでマシになった。
かける数×かけられる数の、かける数の方──つまり彼らが持っている貴公子としてのポテンシャル──が地にめり込む勢いで小さいという事実はあるが。
瞑想による精神集中により、闘気や覇気を自由自在に出し入れできるようになったおかげで、平常時の彼らの髪の毛は重力に逆らうことがなくなった。
ごく当り前の髪型になってみると、それなりに整った顔立ちが前面に出て、王太子や貴族の息子らしく見えないこともないこともないこともない。恐らく見えると思う、多分、いやきっと。
<しかし、こんなに殺伐としたお仕立て会を生まれて初めて見るわ……>
王太子ともなれば国中の仕立て屋を百人集めることもたやすい。山から下りてきた彼らは、早速アリーとの約束を守ってワードローブを充実させることにした。
呼びつけられた仕立て屋たち(全員男)は、言ってみれば営業職の極みのようなもの。ごますり、おべっかお手の物! といった職人たちにとって、筋肉特戦隊ほどの肉体を持った貴公子の衣装など、想像の埒外であったらしい。
5人分の衣装を超特急で、最新の流行に寄せて仕立てるという何気に難易度の高い作業に、お仕立て会は現在進行形で怒号飛び交う戦場になっている。
もちろんマクシミリアンたちは動かざること山の如し状態で静かに立ち、仕立て屋たちが唾を飛ばしながら交わす議論を泰然と眺めていた。
そしてその様子を壁際に立って見学しながら、やはりアリーは過去9回の人生を思わずにいられなかった。
<あれだけ着道楽だったモヤシ軍団が、まさか『着られれば何でもいい』状態になるなんて……>
彼らは男ながらに「鏡よ鏡」をやりかねないほど美しかったので、公爵令嬢アリーシアとその四人の友人たちは、ふり落とされないように必死で美容に励んだものだ。
そして今では、別の意味で振り落とされそうになっている。何と遠くまで来たことだろう。
<いやいやいや、私は別に振り落とされていいんだし。まあ、お友達だった4人が振り落とされないようにするお手伝いだけは、してあげたいと思うけど……>
この国の価値観では、女は利口すぎてはいけない、夫に煩くまとわりついてはいけない、跡継ぎを作るという務めを果たした後は夫を自由にさせてあげなくてはいけない、とされている。
今のアリーなら「しゃらくせえええええっ!」と飛び膝蹴りを繰り出せるが、あの4人にはまず無理だろう。
聖女ミアの魅了云々の以前に、四天王たちが婚約者を大事にしていないそぶりを見せたら、そこは拳で矯正しなければとアリーは誓いを新たにした。
「どうだろうかアリー。似合うだろうか」
ちょっと照れているようなマクシミリアンの声がして、アリーははっと我に返った。
慌てて前を見ると、マクシミリアンは頭の先からつま先まで黒で統一された装いをしていた。
流行を取り入れた洒落たデザインで、惚れ惚れするような最高級の仕立てだ。
彼の後ろを見ると、何人もの仕立て屋が壁際に倒れ込むように座っている。まさに「燃え尽きたぜ……真っ白にな……」と言わんばかりの惨状。
最新式の足踏みミシンなどを持ち込んでいたとはいえ、ここまで素早く一着仕立てるとは。どうやら仕立て屋として新たな境地──別に登り詰めなくてもいい高み──に至ってしまったようだ。
「どうだろうか、似合っていないか?」
ちょっと焦れたようなマクシミリアンの声がする。アリーは改めて、彼の姿をじっくり眺めた。
天を衝く勢いで逆立っていた髪の毛が、お洒落な雰囲気の無造作ヘアに様変わりしている。過去9回のようなうっとうしいロン毛ではないが、これはこれで王子様っぽい。
糊のきいた黒いシャツに、光沢ある黒の上着。 脚衣はしっかり足首まで覆っていた。とりあえず、ひざ丈のブリーチズを捨て去ってくれたことにひれ伏してお礼を言いたい。
「よく……よくお似合いですわ、殿下」
それは心からの言葉として、アリーの口からするっと出てきた。たしかに似合っていた。
過去9回の人生でも同じ言葉を何度も言ったが、そのときとは心の持ちようが全く違っていた。
アリーの恐れていたゼロに何を掛けてもゼロという事態にはならず、当社比3倍くらいの勢いでマシになった。
かける数×かけられる数の、かける数の方──つまり彼らが持っている貴公子としてのポテンシャル──が地にめり込む勢いで小さいという事実はあるが。
瞑想による精神集中により、闘気や覇気を自由自在に出し入れできるようになったおかげで、平常時の彼らの髪の毛は重力に逆らうことがなくなった。
ごく当り前の髪型になってみると、それなりに整った顔立ちが前面に出て、王太子や貴族の息子らしく見えないこともないこともないこともない。恐らく見えると思う、多分、いやきっと。
<しかし、こんなに殺伐としたお仕立て会を生まれて初めて見るわ……>
王太子ともなれば国中の仕立て屋を百人集めることもたやすい。山から下りてきた彼らは、早速アリーとの約束を守ってワードローブを充実させることにした。
呼びつけられた仕立て屋たち(全員男)は、言ってみれば営業職の極みのようなもの。ごますり、おべっかお手の物! といった職人たちにとって、筋肉特戦隊ほどの肉体を持った貴公子の衣装など、想像の埒外であったらしい。
5人分の衣装を超特急で、最新の流行に寄せて仕立てるという何気に難易度の高い作業に、お仕立て会は現在進行形で怒号飛び交う戦場になっている。
もちろんマクシミリアンたちは動かざること山の如し状態で静かに立ち、仕立て屋たちが唾を飛ばしながら交わす議論を泰然と眺めていた。
そしてその様子を壁際に立って見学しながら、やはりアリーは過去9回の人生を思わずにいられなかった。
<あれだけ着道楽だったモヤシ軍団が、まさか『着られれば何でもいい』状態になるなんて……>
彼らは男ながらに「鏡よ鏡」をやりかねないほど美しかったので、公爵令嬢アリーシアとその四人の友人たちは、ふり落とされないように必死で美容に励んだものだ。
そして今では、別の意味で振り落とされそうになっている。何と遠くまで来たことだろう。
<いやいやいや、私は別に振り落とされていいんだし。まあ、お友達だった4人が振り落とされないようにするお手伝いだけは、してあげたいと思うけど……>
この国の価値観では、女は利口すぎてはいけない、夫に煩くまとわりついてはいけない、跡継ぎを作るという務めを果たした後は夫を自由にさせてあげなくてはいけない、とされている。
今のアリーなら「しゃらくせえええええっ!」と飛び膝蹴りを繰り出せるが、あの4人にはまず無理だろう。
聖女ミアの魅了云々の以前に、四天王たちが婚約者を大事にしていないそぶりを見せたら、そこは拳で矯正しなければとアリーは誓いを新たにした。
「どうだろうかアリー。似合うだろうか」
ちょっと照れているようなマクシミリアンの声がして、アリーははっと我に返った。
慌てて前を見ると、マクシミリアンは頭の先からつま先まで黒で統一された装いをしていた。
流行を取り入れた洒落たデザインで、惚れ惚れするような最高級の仕立てだ。
彼の後ろを見ると、何人もの仕立て屋が壁際に倒れ込むように座っている。まさに「燃え尽きたぜ……真っ白にな……」と言わんばかりの惨状。
最新式の足踏みミシンなどを持ち込んでいたとはいえ、ここまで素早く一着仕立てるとは。どうやら仕立て屋として新たな境地──別に登り詰めなくてもいい高み──に至ってしまったようだ。
「どうだろうか、似合っていないか?」
ちょっと焦れたようなマクシミリアンの声がする。アリーは改めて、彼の姿をじっくり眺めた。
天を衝く勢いで逆立っていた髪の毛が、お洒落な雰囲気の無造作ヘアに様変わりしている。過去9回のようなうっとうしいロン毛ではないが、これはこれで王子様っぽい。
糊のきいた黒いシャツに、光沢ある黒の上着。 脚衣はしっかり足首まで覆っていた。とりあえず、ひざ丈のブリーチズを捨て去ってくれたことにひれ伏してお礼を言いたい。
「よく……よくお似合いですわ、殿下」
それは心からの言葉として、アリーの口からするっと出てきた。たしかに似合っていた。
過去9回の人生でも同じ言葉を何度も言ったが、そのときとは心の持ちようが全く違っていた。
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