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さんしょう!
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『ではご主人、我はちょっと山に籠ってくる。己を高めるためには大自然の中で修行するのが一番だからな』
『ああ、うん、いってらっしゃい。ついでで構わないから、ジャンの様子を見てきてくれたら嬉しいな』
『お安い御用だ、ご主人。聖女ミアが外に出てくる前には、必ず戻る』
決してマクシミリアンナイズされたわけではなく、元祖山好き(というか山生まれ)なたっくんが、超カッコよく窓から飛び立っていく。
あの甲斐性、めちゃくちゃ痺れる憧れる。たっくんにぞっこんな娘(鷹)さんいっぱいいるんだろうなあ、などと思いながらアリーは彼の背中を見送った。
『じゃあ、私も一旦魔界に帰ります。呼ばれたらすぐ出てきますからね。今夜ばかりは、ミアもおかしな動きはできないでしょうし』
アベルの姿がすうっと黒点に吸い込まれていく。アリーは「うん」とうなずいた。ミアとヘイヴン伯爵が大八車で運ばれていった先は、王族や貴族のための医療院だ。
「あそこは過去9回、処刑される前のわたしが収容された場所だからね。建物全体に、魔法を抑える特殊な石が使われてるから……」
なにしろ公爵令嬢アリーシアは、聖女ミア降臨までは「魔法の天才」と呼ばれていた。いかんせん体力が無さ過ぎて、魔法を連発することはできなかったけれど。
アリーシアは魔法の知識の豊富さと、光属性の次に発現が難しい闇属性を操れたことで、王太子の婚約者の座を転落後は危険人物扱いという憂き目にあった。
医療院の建物に魔法耐性のある材質が使われているのは、ちょこっととはいえ魔力のある王侯貴族が入院中、考えうるすべての不測の事故を防ぐため。その建物の一部に公爵令嬢アリーシア用の鉄格子がはめ込まれたことは、超絶苦い記憶だった。
もちろん治癒魔法まで使えなくなっては困るから、手術や処置を行うための部屋にはそういった加工は施されていないが、今日ミアが収容されている部屋に魔法封じ込め効果があることは、アベルによって確認済みだ。
<あそこに閉じ込められて、腕輪や首輪をつけられたのは、相当な屈辱だったなあ……>
アリーシアの魔法を完全に封じ込めるために、ご丁寧に腕輪と首輪まで用意してくれたのは、絶対にミアの仕業だと思う。それか、彼女の後ろにいる光の天使か。
「魔法を抑える効果を持つ石は、目玉が飛び出るほどお高いから。なにしろ、世界の端っこにある小さな島でしか採取できない、それはそれは希少な天然石だもの」
まさかエンゲージリングの前にこんなレアな石を貰うなんてと、屈辱と奇妙な可笑しさで泣き笑いしたことを、アリーはよく覚えている。
『アリー。もし、過去の実家であるグランツ公爵を見に行くならば、今がチャンスのようにも思いますが、どうします?』
ふよふよ浮いている黒点が、ふいに思いついたような声で言った。アリーは「え」と顔を上げ、それから小首をかしげた。
『だって、グランツ公爵家は過去9回、王太子の婚約者を輩出したほど勢いのあった家なんでしょう? なのに、西翼へ来てからまったく噂も聞きませんし。もしかしたら、思いっきり没落しているのかもしれませんよ。それを見て留飲をさげたら……いや、この提案はアリーの性格には合いませんね』
アベルは勝手に提案して勝手に結論めいたことを出してしまった。でも、その結論はあながち間違ってはいない。
「まあ、過去9回の因縁はあるとはいえ、実の両親と兄だった人だから……気持ちは複雑だよねえ。そこは、今回の人生の流れに任せることにする。顔を合わせたからと言って、別に何とも思わないだろうけどね。今のわたしには、心から愛する家族とスティラ様がいるし」
そう口にしながら、ちょっと嘘かもな、とアリーは思っていた。なんたって9回も家族だった人たちだ、そりゃあ会えば心が揺らぐだろう。
『アリーは優しすぎるんですよ。この世界の神は仕事が中途半端ですね。時を戻すなら、徹底的に傍観者を楽しめる性格にしてくれればよかったものを』
「うーん、よくわからないけど。でも神様、わたしに黒点とたっくんを与えてくれたから、そこはいい仕事したと思うよ」
それから、どうしても憎めない筋肉特戦隊たちとの出会い。度肝を抜かれまくったけれど、時々刻々と順調に過去の記憶が上書きされていくのを感じている。
「とりあえず、傍観者としてぎりぎり一杯のラインを攻めるつもり。ここまで巻き込まれたからには、もう後には引けないからね。だから頼りにしてるよ、魔王様」
おまかせあれ、と黒点が笑いながら揺れた時、ごくごく静かに、扉がノックされる音がした。
『ああ、うん、いってらっしゃい。ついでで構わないから、ジャンの様子を見てきてくれたら嬉しいな』
『お安い御用だ、ご主人。聖女ミアが外に出てくる前には、必ず戻る』
決してマクシミリアンナイズされたわけではなく、元祖山好き(というか山生まれ)なたっくんが、超カッコよく窓から飛び立っていく。
あの甲斐性、めちゃくちゃ痺れる憧れる。たっくんにぞっこんな娘(鷹)さんいっぱいいるんだろうなあ、などと思いながらアリーは彼の背中を見送った。
『じゃあ、私も一旦魔界に帰ります。呼ばれたらすぐ出てきますからね。今夜ばかりは、ミアもおかしな動きはできないでしょうし』
アベルの姿がすうっと黒点に吸い込まれていく。アリーは「うん」とうなずいた。ミアとヘイヴン伯爵が大八車で運ばれていった先は、王族や貴族のための医療院だ。
「あそこは過去9回、処刑される前のわたしが収容された場所だからね。建物全体に、魔法を抑える特殊な石が使われてるから……」
なにしろ公爵令嬢アリーシアは、聖女ミア降臨までは「魔法の天才」と呼ばれていた。いかんせん体力が無さ過ぎて、魔法を連発することはできなかったけれど。
アリーシアは魔法の知識の豊富さと、光属性の次に発現が難しい闇属性を操れたことで、王太子の婚約者の座を転落後は危険人物扱いという憂き目にあった。
医療院の建物に魔法耐性のある材質が使われているのは、ちょこっととはいえ魔力のある王侯貴族が入院中、考えうるすべての不測の事故を防ぐため。その建物の一部に公爵令嬢アリーシア用の鉄格子がはめ込まれたことは、超絶苦い記憶だった。
もちろん治癒魔法まで使えなくなっては困るから、手術や処置を行うための部屋にはそういった加工は施されていないが、今日ミアが収容されている部屋に魔法封じ込め効果があることは、アベルによって確認済みだ。
<あそこに閉じ込められて、腕輪や首輪をつけられたのは、相当な屈辱だったなあ……>
アリーシアの魔法を完全に封じ込めるために、ご丁寧に腕輪と首輪まで用意してくれたのは、絶対にミアの仕業だと思う。それか、彼女の後ろにいる光の天使か。
「魔法を抑える効果を持つ石は、目玉が飛び出るほどお高いから。なにしろ、世界の端っこにある小さな島でしか採取できない、それはそれは希少な天然石だもの」
まさかエンゲージリングの前にこんなレアな石を貰うなんてと、屈辱と奇妙な可笑しさで泣き笑いしたことを、アリーはよく覚えている。
『アリー。もし、過去の実家であるグランツ公爵を見に行くならば、今がチャンスのようにも思いますが、どうします?』
ふよふよ浮いている黒点が、ふいに思いついたような声で言った。アリーは「え」と顔を上げ、それから小首をかしげた。
『だって、グランツ公爵家は過去9回、王太子の婚約者を輩出したほど勢いのあった家なんでしょう? なのに、西翼へ来てからまったく噂も聞きませんし。もしかしたら、思いっきり没落しているのかもしれませんよ。それを見て留飲をさげたら……いや、この提案はアリーの性格には合いませんね』
アベルは勝手に提案して勝手に結論めいたことを出してしまった。でも、その結論はあながち間違ってはいない。
「まあ、過去9回の因縁はあるとはいえ、実の両親と兄だった人だから……気持ちは複雑だよねえ。そこは、今回の人生の流れに任せることにする。顔を合わせたからと言って、別に何とも思わないだろうけどね。今のわたしには、心から愛する家族とスティラ様がいるし」
そう口にしながら、ちょっと嘘かもな、とアリーは思っていた。なんたって9回も家族だった人たちだ、そりゃあ会えば心が揺らぐだろう。
『アリーは優しすぎるんですよ。この世界の神は仕事が中途半端ですね。時を戻すなら、徹底的に傍観者を楽しめる性格にしてくれればよかったものを』
「うーん、よくわからないけど。でも神様、わたしに黒点とたっくんを与えてくれたから、そこはいい仕事したと思うよ」
それから、どうしても憎めない筋肉特戦隊たちとの出会い。度肝を抜かれまくったけれど、時々刻々と順調に過去の記憶が上書きされていくのを感じている。
「とりあえず、傍観者としてぎりぎり一杯のラインを攻めるつもり。ここまで巻き込まれたからには、もう後には引けないからね。だから頼りにしてるよ、魔王様」
おまかせあれ、と黒点が笑いながら揺れた時、ごくごく静かに、扉がノックされる音がした。
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