9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん

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ごしょう!

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 マクシミリアンは今度こそ聖女ミアに背中を向けた。
 正々堂々ぶつかってこい、というマクシミリアンの言葉に「ちまちま魅了魔法使ってんじゃねーぞぶっ飛ばすぞ」という意味があることくらいは、脳味噌の軽い聖女ミアでも理解できたらしい。
 はっきりとわかるくらい青ざめた顔をして、小刻みに震えている。

《いいですね。さっきのワルツ中の魔法大決戦で、光のクソどもも疲労困憊であるらしい。魅了魔法を放つどころか、聖女ミアのオーラを維持することすらできていない》

《魅了魔法というのは、完全に定着するまで重ね掛けをしないとならないんだったな。それでなくとも消費魔力が大きいところを、イベルとおばあちゃんたちが思いっきり削ってやった。これを繰り返していれば、国王派の連中で正気に戻る者も出てくるかもしれない。我の希望的観測かもしれないが》

《その可能性はありますよ。まあヘイヴン伯爵や国王夫妻、このあたりの魅了魔法は、何としても維持するでしょうが》

 アリーの中に残る公爵令嬢アリーシアの魂が慰められまくって、感動のあまり動けなくなっている間に、優秀なブレーン2名が解説してくれるので大変ありがたい。

<あのマクシミリアンが……。どっちかっていうと母親寄りで、嫁姑問題ではまーーったく頼りにならんかったマクシミリアンが……>

 10年間もの婚約者生活、息子タン大好きな王妃にいびられまくった。
 それを愚痴ろうものなら「気にしすぎじゃない?」「アリーシアにも悪いとこなかった?」「まあ何とか上手くやってよ」の3点セットでよけいに傷ついた。

<ああ……『わたしさえ我慢すれば』と唇を噛んだ日々が浄化されていく……>

 完全にこっちの味方になれとは言わない。親子の縁を切れとも言わない。でも一度でいいから母親にピシっと言ってほしかった。

<それがあってはじめて、こっちも『まあまあ、あちらも悪気はないんだし』って言えるんだよおおおお、まあ王妃に関しては悪気百パーセントだけどおおお>

《ご主人、じーんとしているところ悪いが、熱い瞳で王太子を見つめてしまっているし、さっきの王太子の発言で『男爵令嬢アリー』VS『聖女ミア』の構図が完璧に出来上がってしまったぞ? 気づいているか?》

 ブローチたっくんの言葉に、アリーは慌てて我に返った。大広間ではすでに次の曲が始まっており、大勢の人々がくるくると踊っている。

<い、いやいやいや。さすがにそれはないでしょう。他のご令嬢たちが黙っていないよ。公爵家……にはちょうどいい年頃の娘がいないけど、その下の侯爵家か伯爵家あたりが『ちょっと待ったーっ!』って言うはず……>

《そんなのいないっぽいですけどねえ》

  黒点アベルの声に、ダンスフロアを見渡す。アリーの目が捕まえて離さないマクシミリアンは、某侯爵家のご令嬢を巧みにリードし、スマートに踊っている。
 わりと美人で、それなりに気の強いはずのご令嬢は、完全なる消化試合の顔つきをしていた。
 マクシミリアンの上空には、イベル&疲労困憊 精霊レジェンドではなく、普段ジェフリーについているはずのウベル&おじいちゃん精霊たちが浮いている。
 マーティンとスティーブンが踊りに参加し、ジェフリーとクリスが待機。その後ろでイベル&疲労困憊 精霊レジェンドが休憩している。

<うう、四天王たち優秀すぎる……>

 じーんとする感動に浸りまくっていたのは、ほんのわずかな時間だったはず。しかし事態はどんどん進行していた。背後では、スティラが同年代の少年少女に囲まれて、はにかみながらも打ち解けたように笑っている。

<いかんいかん、社交の場でのじーんは要注意>

 ぼんやりしてしまった己を心の中で殴りつけ、アリーはスティラを取り巻いている少年少女たちに視線を走らせた。かなり厳選して選ばれていることがわかる、安心安全のラインナップだった。

<まあ、わたしはしょせん男爵令嬢だし。本分はスティラ様の侍女。ラドフェン公爵だって面白がっているだけで、本当に養女になさるおつもりはないわ。マクシミリアンが王太子妃に相応しい女性に出会えるまで、隠れ蓑になる覚悟はあるけど、でもそれだけよ>

《ご主人は自分のことになると、少々ポンコツだな》

《同感です。お、あっちから危険人物が近づいてきました。アリー、いよいよぼんやりしている場合じゃなくなってきましたよ》

 黒点アベルの言葉に、アリーは広間の右側に視線をやった。隣国エルバートの第二王子エミリオが、薄笑いを浮かべながら歩み寄ってくるのが見えた。
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