結婚させられたくないので魔導騎士団に入団しますっ!

モー子

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閑話①

閑話 —会いに来たよ②―

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『……!!』
『……!?』
『…………!!』

 廊下の先が騒がしくなってきたようだ。スペンサー男爵家の使用人達が騒ぎを聞き付けて、上がってきたのかもしれない。

「……っ!!  やっばっ!!」

 素早く立ち上がった不審者のように現れたルードヴィヒは、自分と同じ位の体格のセリーナを肩に担ぎ、彼女が出てきたばかりの部屋に駆け込んだ。

「……ルー?」
「いぁ……あのな…」

 突然訪ねてきた普段王都の城の一角に住んでいる幼馴染はなんと、黙って抜け出してここまで来てくれたらしい。移動は王都からの荷に隠れてきたとかで、よく見れば彼の姿はボロボロの状態だった。無事な姿を見れば大丈夫だったのだろうが、セリーナは驚きに目を見開いた。

「えっ!?  ぇええ……ムグゥ」
  
 つい声を荒げそうになったセリーナの口をルードヴィヒが慌てて押さえる。

「んんん~」

 口を押さえられたセリーナは、押さえつけてくるルードウィヒの腕をバンバンと叩いた。

「大きな声出すなよっ」

 セリーナが必死でウンウンと頷くと、ルードヴィヒの腕が緩む。

「ねぇ…もしかして、うちにも無断で入ってきたの?」
「いぁ…その…おしのび的な……?」

 ――無断で来たからばれたら回収されちゃうもんね
 ――ここにも忍び込んでくれてよかったのかなぁ?
 ――でも……大変だったよね…
 ――うれしい
 ――すっごくうれしいよぅ
 ――心配かけちゃってごめんねだけど、嬉しいなっ
 ――ルーはあたしが言わなくっても、あたしの事を考えてくれるんだねっ
 
 目の前でバツが悪そうに俯いている朱色の頭が揺れている。

「もぉ…ルー…っ!!  しーーっ」

 セリーナの耳にパタパタと廊下を近づいてくる音が聞こえる。ルードヴィヒを自身のベッドに押し込むと、セリーナは鏡台の前にたって涙の痕をタオルで押さえた。そこへドアをノックする音と、使用人の声。

「セリーナ様、起きてらっしゃいますか?」
「はい」

 静かにドアが開く。

「物音と叫び声がしましたが……」
「ごめんなさい…タオルを取ろうとして、そこの置物倒しちゃって…」

 侍女がセリーナの目元を見て、辛そうに眉を伏せた。セリーナの目線の先にあった倒れた置物を元に戻すと、その人は眉を下げてセリーナの涙の痕に冷やしたタオルを用意してくれてあててくれた。

「……左様でございますか…さぁ、そろそろお休みくださいね セリーナ様」
「ええ そうします」

 セリーナの返事を聞いて頭を下げると、侍女は静かに部屋を出ていった。静かにドアが閉まり、足音が遠のいていく。今、侍女が出ていった扉に張り付き耳をあて、足音が聞こえなくなるのを確認していると、バサリとなにかに覆われた。柔らかい肌触りでほんのり花の香りがするそれは、いつもセリーナが使っている掛け布団だ。

「ルー?」
「んっ」

 掛布団をかぶったルードヴィヒに背中から抱きしめられている。まるで小さい子をあやす様に。

「ルーは…あたしの為に、来てくれたの?」
「んっ」
「……ひとりで?」
「すごいだろっ」
「……皆に黙って?」
「直ぐに行かなきゃって思って…」
「……泣いてると思った?」
「…まぁ…(ぐるるるるっ)……っ!!」

 部屋に響く、元気な腹の虫。セリーナは振り替えってルードヴィヒの顔を覗き込んだ。
そこには腹を押さえて力無く笑う幼馴染み。鏡台の中に隠し持っていたお菓子を取り出すと、ルードヴィヒが嬉しそうに、少し口を尖らせて笑った。水分補給用のデカンタに柑橘の香りの付いた水も置かれているので、それをコップに注いでやった。

 菓子を食べながら、道中での事や王都での事ルードヴィヒの父親であるリーベルタスの事など、面白おかしくルードヴィヒが話してくれた。お菓子を食べ終わると、話を続けながら2人でベッドにもぐりこんだ。
 掛け布団とルードヴィヒの腕にくるまれて、セリーナは笑った。人の体温が心を穏やかにしてくれるようだった。久しぶりに笑い、世間話や互いの事を話し、手を繋いで眠った。


 翌朝事態は 凄い騒ぎになっていたようだ。
王都から置き手紙1つだけ残して、突如にいなくなった第2王子の嫡子。手紙にはスペンサー領に行くと書いてあったが、その足取りは全く掴めていなかった。やっとスペンサー男爵家やスペンサー領の騎士達にも連絡が入り、街や近くの街道を捜索しようという話にもなっていた。かどわかしや誘拐かと騒がれていた頃、ある騎士がスペンサー男爵家を訪ねてきた。

「こちらにお馬鹿でやさしい王子さまがひとり、家出してきていると伺ったのだが?」

 何か楽しそうにそう言う騎士に、スペンサー男爵家の執事は穏やかな笑顔でゆっくりと頷いた。

「姫さまのお客様ですね。昨夜遅くにお見えになられましたので、まだお休みの様です」

 にこにこと笑顔を顔面に貼り付けているスペンサー男爵家のハイスペック執事のユニは、騎士を応接室に通した。

「長旅ご苦労様です騎士様。貴方様が来られたのですね。お疲れになったでしょう、少々お休みになってくださいませ」
「……では、ありがたく…一緒にどうですか? 」

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