死んだ日の朝に巻き戻りしました  ら、溺愛生活がリスタート?

ピコっぴ

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3 新しい生活の始まり

3‑2 門出

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     🌊

 不満顔の父とアルカイックスマイルで見送る義母の視線が痛い。

 エミリアは、にこにこと義母に寄り添って立っている。視線は、エリオス殿下に向かっていた。


「少し早いですが、晩餐の用意をさせますから」という父の申し出を、キッパリと断ったエリオス殿下。

「今夜は、職員寮や魔法省施設の案内を兼ねて、職員食堂で食べようと思う。せっかくのお心遣い申し訳ない」

 と、にべもない。
 気まずいことこの上ないけれど、殿下を上座に我が家の食堂で皆で食事を摂っても、私は食べた気がしないだろうから、ほっとする。


「これから忙しくなると、中々こちらには帰って来られないかもしれませんが、皆さま、お身体に気をつけてお過ごしください」
「いや、殿下の手を煩わせないよう、尽くしなさい。学校の成績も良かったのだから、何とかなるだろう。御迷惑にだけはならないようにな」
「はい。精進致します」

「ラケル、だったかな? カッコネン魔法騎士爵家の令嬢だね。エステルに用意した部屋は、騎士や魔法士などの団員用ではなく、職員用の寮なのでね、手狭な一人部屋なんだ。侍女を置く余裕はないので申し訳ない。
 だが、その分魔導的にも物理的にもセキュリティは強固で、魔法省の女性職員用だから、男性や一般人は立ち入らないし、王族であっても、わたしももちろん部屋を訪ねていくことは出来ないから、安心してくれるかな。ゆくゆく、大きな部屋に移れるようになったら、呼び寄せるように手配させよう。
 エステルが、この先、魔法士師団に入る時、希望するなら、君もエステルの側仕え兼団員として入団テストを受ける事も許可するよ。もちろん、最低限の能力は求めるがね」
「勿体なきお言葉、ありがたく存じます」

 深い最上礼のカーテシーで応えるラケル。


 メイド達が付き従い、従僕が行李を運んでくる。

「エステル。この行李一つだけなのかい?」
「はい。研究や仕事に邪魔にならない(一人でも着替えられる)シンプルなワンピースドレスと部屋着と、簡単な日用品だけで十分でしょう。書籍はしばらくは図書館のものをお借りして、必要に応じて送ってもらいますわ」
「ふむ。魔法耐性魔導が織り込まれたローブを皆と同じように数着支給するから、仕事中の衣類は心配ないよ。そうか。姉や妹の荷物と比べてはいけなかったな。女性というものはかくも荷が多いものなのかと思っていたから、余計なことを言って失礼した」

 王室のフットマンが、行李を受け取って馬車の屋根に載せる。

「ラケル。わたくしがいない間も、お母さまお祖父さまのお庭と、わたくしのお部屋、よろしくね?」
「お任せください」

 ラケルは淋しそうに頭を下げた。

「エステル。ラケルを悪く思わないでくれ。ラケルが漏らした訳じゃない。俺が、風霊の活動を一時停止させて俺との連携も遮断しようとしたラケルの魔法を破って、無理やり開示させたんだ。ラケルが悪い訳じゃないんだ。すまなかった」

 セオドア従兄にいさまの謝罪は、周りの人には何の事だかわからないだろう。

 あの時ラケルが行ったのは、セオドア従兄にいさまと場を繋げることではなく、逆に聴かれないように連携を断つ事だった。
 魔法士ではなく騎士でも、アァルトネン分家の次男坊。お従兄にいさまの方が、分家筋から更に分かれて興した士爵家のラケルより魔法は強いので、結局はお従兄にいさまに会話が伝わってしまった。

 もちろん、お従兄にいさまがいつでも盗み聞きしている訳ではない。
 事情がわかってみれば、簡単なこと。
 ラケルの耳飾りに擬態している風霊はさほど上位の精霊ではない。簡単に性能を検索してみたところ、見聞きした情報を記憶し、必要に応じてラケルとセオドア従兄にいさまが再生可能だという事のようだった。元々はメッセンジャー機能のための精霊である。

「ラケルを叱ったりしませんわ。いずれ皆が知ることですもの。ただ、敢えて広げないでとお願いしただけで、他言無用と命じた訳ではありませんからご心配なく。今も変わらず、ラケルのことは信用しています」
「そうか。本当に、すまなかった」
「いえ、いいのです。お従兄にいさまもご達者で」

 なんだか、ずっと長い間会えない場所に行くかのような、変な挨拶になってしまったわ。

 殿下に手をとられ、フットマンの置いた階段状の踏み台を使って、馬車に乗り込む。

 自分が就けなかった魔法省での直属機関の仕事に、見習い助手とは言え私が抜擢されたと思い不満なのと、自分の娘がまだ学生の内から王家の補佐役に引き抜かれた譽れへの自慢げな思いとが、複雑に入り交じった父の表情かお

 生さぬ仲とは言え、義娘が王家に仕えるのが誇らしい反面、自分の娘が見向きもされない事への不満が、見てとれる義母。

 お気に入りのドレスを着て、精一杯のカーテシーと笑顔で挨拶したにもかかわらず、殿下からは業務的な感じの返事しかもらえず、父との話し合いには参加も出来ず、接点が持てなかった事への不満がありありと顔に出ているエミリア。
 自慢の、赤銅色にも薄紅にも見える艶やかな巻き髪をくるくると弄って、なおも殿下にアピールしているけれど、殿下は一瞥もくれないまま、私の向かい側に乗り込んできた。

 来る時は隣に座っていたけれど、皆の手前、未婚の女性と同乗する事への礼儀に則って、隣には座らないのだろう。








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