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第一章 辺境の町
第190話 魔素溜まり
しおりを挟む六級冒険者の(但し実力はもっと上)彼が今回、九級と十級の新人冒険者である私達とパーティーを組んでくれた理由の一つに、一緒に行動した方が効率がいいスキルを持っていたことが挙げられる。
そのスキルとは、私の持つ聖魔法の『浄化』だ。
元々、聖魔法は素質があるものが少なく、冒険者となると更になり手がいないから稀少な存在だったみたい。
態々危険な冒険者稼業に就かなくとも教会や貴族などに高額で雇ってもらえるし、町中での仕事も引く手あまただから、それも当然かもしれない。
長寿種族は人族より聖魔法の素質があり、その中でもエルフ族は種族的に親和性が高いことが知られているので、見つかると勧誘が厄介だったと思う。冒険者の大半は人族だからね。
色々とバレる前にラグナードとパーティーを組めたのは、そう言う意味でもよかった。
彼とパーティーを組むにあたって話し合いで決めたことは、二つ。
まずは、迷いの魔樹討伐を優先させること。その為にパーティーを組んだんだから当然だよね。
魔樹を倒したり魔素溜まりを探索するのは主にラグナードが、その後の『浄化』処理は私が、リノはその間、荷物と周辺の見張りを担当することに……安全の為も明確な役割分担って大切。
その場所までは護衛するから、魔力を温存しておいて欲しいと言われた。うん、了解です。
もう一つは、仮のパーティーなので報酬はきっちり人数分で割って、パーティーの共有費は作らないってこと。
実力差的には、私達二人とラグナードで半折でいいと言ったんだけどね。最終的にはリーダー権限で彼が三等分にと決めてくれた。いい人過ぎる。せめて、お荷物にならないように気を付けよう。
予定通り、街道を10km程進んでから北の森に入り、虹色の樹などがある巨木群へと進んでいく。
今回は、私達よりずっと強くて五感の優れた獣人族のラグナードがいるので、この辺りにいる弱い魔物なら連続して群れで襲って来られても余裕で対処出来そう。
彼の『索敵』スキルはなんとレベル5に達していて、意識せずとも常時発動出来るらしいよ。すごいよね!?
その為、一番前で先導してくれてる。
下草も多く、木の根がゴツゴツとしてて歩きにくい場所が続き、獣人族やエルフ族ほど森が得意でない人族のリノには厄介な道程だ。
この中を物音を立てず気配を消しつつ進むのは難易度が高いので、そこは気にせず移動を優先して進んでもらう事にした。
当然、魔物を引き寄せちゃうんだけど……ちょうどいいので最初の数回は私とリノとで連携して討伐するのを見てもらい、その後は三人でのパーティー戦を試した。
北の森の中でも弱い魔物としか遭遇しない場所にいる内に役割分担の確認もしておきたかったしね。
ラグナードに指導を受けながら、次から次へと出てくる魔物を討伐していく内に、段々と連携も取れて来たんじゃないかと思う。彼のOKも出て、これで一応は森の奥へ向かう準備が仕上がった。
最初の目的地である巨木群へ着いたので、一旦休憩をする事にした。
「結局、ここまで魔素溜まりはなかったな」
「この二日間で『浄化』して回ったからその成果が出ているのかも? 同じ場所に再発生している事もなかったし」
「新たな迷いの魔樹も見つからなかったですし、よかったですよね」
「そうだな。後は巨木群の奥がどうなってるか……」
他の冒険者もまだ来てない場所だろうし、行ってみないと分からないから不安もある。
……ウジャウジャ湧いてたりしたら、嫌だなぁ。
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