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第一章 辺境の町
第198話 これは無理ですね
しおりを挟む「ちょっと早いが、ここらで昼食にするか」
「いいですねっ。じゃあさっさと片付けちゃいましょう!」
「リノは俺と一緒に見張りを頼む」
「分かりました」
お昼と聞いて少し元気を取り戻したリノだけど、疲れていると思うので見張りをお願いして、ラグナードが倒してくれた迷いの魔樹の後始末と聖魔水晶の採取は私がすることにした。
何度も同じ手順を繰り返ししているので、手慣れてきた。短時間でその場を離れることが出来た。
その後は魔物と遭遇する事もなく、一旦、中奥から比較的安全な外周の森まで出ると、ちょうどいい空き地を見つけたのでそこでお昼にする事に……。
大きな切り株が点在しているのでその内の一つに座って各自持ってきた簡易食と、ここに来るまでに採取したダイダイの実を取り出した。果汁をたっぷり含んでいるので、ジュースにして飲むみたい。
森の中で道具もないしどうするのかと思っていたら、ラグナードが細い木の幹からストローを作ってくれたんだ。
中が空洞になっているらしくて、よく揉んで柔らかくした実にブスッと突き刺し中身を吸い出すんだとか。なるほど!
どれどれ? おおっ、こ、これは!? 百パーセントの果汁ジュースだっ、味が濃くって美味しい~!
それにしても、こんなやり方があったのか。知らなかったから今までは剥いて食べてたんだけど、これなら手も果汁まみれにならなくて済むし、いいねっ。
食べながら、午後からの予定を話し合う。
「あの、迷いの魔樹はまだ近くにあるんでしょうか?」
「あぁ。俺の『索敵』範囲にはいくつも反応があった。残念な事にスモールトレント付きの大きな奴も一体見つけたよ」
「そんな……じゃあ最優先で討伐しないと。私の『索敵』ではさっき討伐した魔樹の近くに二つ、弱い反応があったたけでそれ以外は分からなかったんだよね」
「あの大きいのはここから少し距離があったから無理はない。弱い反応のはもっとある。想定以上に数が多いから、危険な奴から優先順位を決めて倒していかないとな。一日では終わらないし、何日かに分けて討伐していくしかないだろう」
「ここまでは他の冒険者達もほとんど来て無いってギルドでも言ってましたよね。私達だけで大丈夫でしょうか?」
「……正直、無理だな。ギルドの話では町近辺から徐々に捜索範囲を広げてジニアの村周辺まで行く予定らしいが、討伐する人手が足りないままでこの場所から増えていったらまずい事になる」
ボトルゴードの町は辺境にあって大金を稼げるものが特にないため、高位の冒険者には旨味がないから来ることはない。森の力が強いのはここだけじゃないし、人族の街全体で冒険者の数事態が少なく、どこも手が回っていない状況だ。
これが昔なら、魔樹討伐が得意な長寿種族の冒険者がたくさんいて、力を貸してくれていたらしいが。だけど、過去に起こった人族の暴挙で数を減らしたままなのと、遺恨から率先して人族の町を守ろうとしなくなったこともあり、そもそも人族の町にさえ滅多に来なくなっているので、当てにできない。
この町である程度実力をつけた冒険者も、より稼げる街を目指してすぐ出ていってしまい、中々居着いてくれないらしいし。
つまり、広大過ぎる森の中から、低級の冒険者達だけで迷いの魔樹を探しだし討伐することになるのだが……それは大変で、町近くの森以外は手付かずといったところ。
なので領主が出す予定の兵を、此方に優先的に回して貰わないと長期化する可能性があった。
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