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第一章 辺境の町
第228話 戦闘開始
しおりを挟む――やがて……。
討伐部隊全体の準備が整った。いよいよだね……ちょっとドキドキする。
ここからは、本体まで時間をかけずに一気に突き進む予定です。
あらかじめ決めてあった合図と共に、各々が一斉に松明に火をつけ、前方に突き出すと……。
すぐに炎に反応して、一部の蔦がウネウネと不気味に蠢きだすっ。うわっ、これだけいっぺんに動かれると気持ちわるっ!
炎で牽制して、本体のある中心部に向かって追い立てながら、草薮や蔓、枝などが複雑に絡み合って進めない状態の森を、木こりギルドの人達が中心になって打ち払い、人が通れる道を作るためにただひたすら黙々と手を動かす。
蔓状の魔樹は、下手に切り刻むとその切れ端からも増殖するという厄介な性質を持っているので、こうして着実に本体まで炎で追い込む。
地味な作業だけど、やっぱり奴にはよく効いてるみたい。徐々に奥へと引っ込んでいくよ。
今回、便利な火魔法を使わないのは、大火事になるのを阻止する他にも、その魔力に反応した他の魔物が寄ってくるのを防ぐためというのもある。
ただ松明も、火力が弱かったり数が少なかったりすると、すかさず消そうとして触手を伸ばしてくるので、程よい火加減と一度に触手が対応力出来ないほどの多くの火種を用意するのが重要になる。
今のところ、こうして広範囲を包囲して、一斉に大勢の持つ松明で追い立てる作戦は上手くいっている……はずだ。
音の対策も立てている。一連の作業をしている間に、伐採の音に引かれて寄ってくる魔物がいるから討伐が必要になんだよね。こればかりは仕方がない。伐らないわけにはいかないからね。
魔力以外に音にも敏感な奴らの相手をする為に、冒険者がいる。
木こりギルドや狩猟ギルドの人達が伐採と触手の牽制してくれている間、彼らを魔物から守りつつ、余裕があれば魔樹を追い込んでいくのが主な仕事になるんだけど……初めてからそれほど時間は経っていないのに、どうやらもう来たみたいだね。
静かだった森に、戦闘音が響く。
あちこちに散った討伐隊のどれかと、交戦しているんだろう。ここでもすぐ、迎え撃つ事になりそうだ。皆の緊張が一気に高まる。
そして、さほど待たずにその時は来た。
茂みがカサッと揺れる音と共に、魔物の反応が急速に迫るっ。
――ゴブリンだ。
「ちぇりゃあああああぁっ!」
即座に対応し先陣を切ったのは、最後尾を守ってくれていた、同じ班で行動するもう一組の冒険者パーティーの青年だった。容赦なく剣で切り捨てていく。
尚も奥からは、ガサガサと大きな音を立てて草藪を突き破り、何匹も向かってくる音が聞こえるっ。
「うわっ、こっちにも群れが来たよ……」
「どうします? 伐採の音を聞きつけてどんどんやってくるみたいですが!」
「早すぎるだろ!?」
「大丈夫だ、反応数はそれほど多くない。落ち着いてやれば、対処できる!」
「「分かった!!」」
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