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第一章 辺境の町
第199話 また明日
しおりを挟む「じゃあ、俺はここで」
あれからラグナードに宿の前まで送ってもらった。 結構遅くなっちゃったしリノには会わずにこのまま帰るという。
「うん。遅くまで色々とありがとう、ラグナード」
「ああ。明日も早いから早く寝ろよ」
「ふふっ、分かってるよ。また明日ね。ラグナードも気をつけて帰って」
「俺は心配ないって。でも、ありがとな。じゃあまた」
「うん。おやすみなさい」
「おう」
軽く片手を上げて返事をしてくれた後、彼は自分の泊まっている宿へと帰っていった。
色々と思うところはあるけど、これ以上ないほどいい結果になったと思う。
怒濤のように目まぐるしく変化した方針とラグナードの的確なサポートのおかげで、あっという間に町を出る準備が整ってしまった。
のんびりとしていた思考が蹴っ飛ばされたよね。
初めはアイテムを揃えて、暫くこの町でキノコ狩りをする予定だったんだ。
本当は秘密を抱えてて目立ちたくない私達は、町から早く移動したかったし、その方が安全なのも分かっていた。
ただ、何しろ二人とも資金が底をついていたから。冒険者としての能力も資金もギリギリの底辺を這ってる状態だったからさ。無理だって諦めてた。
だって旅支度も整えずに移動したら、この世界ではマジにヤバいから。命の保証が危ういから。
安心して町から出れないうちは、移動は見合わせようねってリノとも話してたんだ。
ラグナードがその考えは甘いって一刀両断した時、この町の居心地のよさに安心してしまってのんびりし過ぎたんだって気づいた。本当、彼がいなかったらどうなっていたか。頼りになる先輩冒険者さんには感謝しかないよね。
「ただいま」
「あ、お帰りなさい。ローザ」
ドアを開けて声をかけると、リノが顔を上げてニッコリと微笑みながら挨拶を返してくれた。
食事も済ませ、今は宿の部屋で細々とした荷物を整理してくれていたらしい。
「見てください、ローザ。もう、ほとんど片付きましたよ。元々あんまり散らかってなかったですけどね」
「本当だ。随分とスッキリしたね。この辺にあった、保存食とか薬草とかも片付けてくれたんだっ」
「はいっ。こっちの袋にまとめてあります。後でチェックしといてくださいね」
「わぁ、助かる。ありがと、リノ」
「いえいえ。これくらい何てことないですよ、エヘヘ」
お礼を言われて、ちょっと照れくさそうな顔をする彼女も可愛い。
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