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しおりを挟む「いっ………たいです、お父様。」
帰ってくるなり私の頬を容赦なく叩いてきたお父様。
この親ないわ。
私の顔を見るなり暴力振るうとか一気に冷めたわ。
「アニョテス公爵家の恥さらしが。どれだけ私が恥ずかしかったか……それに判定で完全に真っ黒になりおって不気味で近寄るな。」
痛い痛い……髪を引っ張らないでよ。
もう、こんなに鷲掴みされたらハゲちゃうじゃない。
「ふふ。お怒りもわかりますがもうお父様ったらラニアお姉様が苦痛の表情ですわ。やめて差し上げて。」
「なんて優しいのプリットは。こんなラニアにまで優しくしなくてもいいのよ。」
なんの茶番を見せられてるのか。
プリット顔がニヤニヤしてまさに悪役令嬢のようだ。
絶対に家族以外の人の前ではしない顔だね。
双子のプリットと私は顔はパッと見は似ているが激似というわけではない。プリットはいつも愛想が良くニコニコしてるが、私は学ぶことに必死であまり笑わない子だった。
だから余計に周りからしたら可愛くないんだろうな。
どうでもいいけれど。
「プリットは神聖力を授かった。アニョテス公爵家の誇りだ。ラニア、お前は恐れられている暗黒の魔力だ。関わりたくないのが本音だが、それだと体裁が悪い。今の学園までは面倒を見てやるがそれからはどこでの垂れ死んでもいいようにしておけ。」
最低な親だ。
余命宣告をしっかり聞いてたんだあの状況で。
私のことを公爵家から切り離したいんだね。
このまま飛び出したいが荷造りの準備もまだ……今は仕方ない。
「わかりました。」
「あらあら、ラニアお姉様早速荷造りですか?そんな地味なドレスしか持ってないなんて可哀想だわ。見て、私を……ふふふ、とてもキラキラして綺麗でしょう?ラニアお姉様には似合わないですが……きゃはははっ。」
わざわざ私の部屋にきて自分のドレスを回りながら見せつけてきたプリットが超ご機嫌だ。
私が追い出されることがそんなに嬉しいんだ。
双子なのに結局わかりあえなかったな。
「私ね、もしかしたら皇太子妃になるかも~。神聖力だから王族も私を狙ってるみたい、ふふふ。皇太子様は金髪さらさらで金色の瞳の令嬢憧れナンバーワンだから私の相手に文句無しの相応しい人だわ。神聖力がなくても私の虜になってたでしょうけど、より私の皇太子妃が確実になったでしょうね。きゃはははは。……………はぁ、一言も話さないなんて陰気臭いったらないわ。同じ顔なんて本当に嫌だったけど、髪色が変わるだけでこうも変わるのね。これからは私と双子だと言いふらさないでね。ふふふ、今のラニアお姉様……いや、ラニアは真っ黒がお似合いだわ。」
ペラペラとしゃべるな~。
よっぽどお喋りしたいんだね。
私のことそんな風に思ってたんだ。
浮かれて気持ちが大きくなってるんだろうな~。
私は皇太子様のことなんとも思ってないから別にいいけど……否定することも別にしなくていいよね。
それに双子だと皆が知ってるのにわざわざ言いふらすなんてするわけないじゃん。
「双子なのに私のお姉様はいつも地味で性格も物静かで話しかけても返答がないんですの。双子としてお姉様のことが心配で心配で………。」といかにもお姉様を心配してますオーラを親しくなった令息達にしてたらそりゃー噂にもなるわ。
お陰で知らない令息から幾度も「地味」だの「愛想無し」だの通りすがりに言われたものだ。
これってプリットが原因だよね~って気づいた時にはもう「引き立て役のラニア」なんて令嬢達にまで言われてたのは驚いた。
プリットの影響力は絶大だったな~。
もっと良い方向に社交すればいいのにもったいないな……なんて思ってたら、ここまで嫌われてたなんてね。
まあ、私が学園を出たら会うこともなくなるんだろうな~プリットだけじゃなく両親とも。
願ったり叶ったりだ。
「はあ、なにも言い返せないなんて情けないわ。まっ、私の美貌を前に何も言えないのはわかるわ。親に愛情を注がれてこんなに私は美しいんですもの。ラニアと比べるの可哀想なほどにね。きゃははは。学園にいる間は大人しくしてなさいよ。家の者の不祥事で私の皇太子妃がなくなったら困るから。」
「いっ………たっ。」
「私の引き立て役お疲れ様、ボロボロラ・ニ・ア。あははっ。」
私の髪を根本から握り締めて数本とれた髪を見つめて満足そうに去っていった。
似たもの親子だけど、さすがにハゲは見過ごせない。
急いで確認したら大丈夫だったからよかったものの、物理的攻撃はやめてほしい。
家族よりもノクスの方が私のことを人として見てくれてるよ。
私の命っていつまでなんだろ……ノクスに会いたい。
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