あさひ市で暮らそう〜小さな神様はみんなの望みを知りたくて人間になってみた〜

宇水涼麻

文字の大きさ
53 / 80

53 昔の映画

 旭市はハンバーガーショップが多い。流行りもあるかもしれないが、どこも個性を出していてどこも美味しい。

 その一つ『モグタロウ』は中央郵便局から西へ向かった市役所通り(現在市役所は移転している)にあり、黄色の星と水色で書かれた名前の派手な看板とハンバーガーののぼりが目印の店である。

 真守はネットでメニューをチェックして、シイタケバーガーを目当てにやってきた。
 香取市産の肉厚ジューシーシイタケを柔らかくソテーにして特製和風ソースとクリームチーズを後攻撃陣に添え、シソを布団にしたビーフ百パーセントのパティに総攻撃を仕掛けそうなハンバーガーが真守をワクワクさせて足を向けさせた。

 だが……真守は優柔不断で決断力が甘く流されやすい男であった。

「クワトロハチミツバーガーを一つください」

 メニューの『おすすめ!』マークに流されて注文していた。

「店内でお召し上がりですか?」

「は、はい。ほ、ほうじ茶ラテをアイスで」

「ありがとうございます。先会計になります。中でお待ちください」

 会計を済ませて客間に入るとそこは緑が溢れた明るい空間が広がっていた。ゆったりとできそうなソファ席とじっくりと味を楽しめそうなカウンター席と家族で食べるテーブル席。様々な気分で席を選べる雰囲気に店主の心遣いを感じる。
 観葉植物に囲まれた絵画は真っ白な壁を優雅に彩っている。
 カウンター席を選んだ真守は常連のように馴染むスペースにストンと座る。

「お飲み物お待たせしました」

 ほうじ茶ラテに小さなお皿に盛られたお菓子が付いていたことに真守は驚いた。テイクアウトも可能な店なので回転率が重要かと思いきやそれを裏切るサービスにふっと緊張をほぐした。ほうじ茶ラテは玄米茶の香りがしっかりして甘みとミルクがちょうどいいものであった。

 真守はメニューをもう一度今度はゆっくりと見ていく。

「シソドリンクとか手作り梅ドリンクもあるんだ。豚丼はずいぶんと色とりどりで野菜がたっぷりだ。水萌里が喜びそうなメニューばかりだな」

 美味しいものに笑顔をこぼす水萌里を思い出して今度は一緒に来ようと思った。

「ハンバーガーお待たせしました」

 皿の上にポテトフライが添えられたそれはバーガー袋に入っていて串が刺さっており食べやすそうになっている。
 トマトの赤色とチーズの黄色とレタスの緑色のリズムの良いコントラストが目で食欲を刺激する。チーズの下のハンバーグはキラキラとジューシーさを強調していて真守を誘ってきた。
 大きく口を開いて上から下まで一口……はツライほど大きなハンバーガーに汁があふれることを気にせず喰らいついた。

『うまっ! なんだ、この邪魔しない甘さは? ハチミツと言われたからもっとグッと来るかと構えていたが、肉に溶け込むような甘さがある』

 注意深く食べ口を見ると飴色に焼かれた厚切りの玉ねぎが縁の下の力持ちを担っていた。という自己講釈こうしゃくをしながらの食べ方も真守らしい。

『自然の甘さのはずだぁ』
 
 ポテトフライとハンバーガーを交互に勢いよく食べていく。

『これをジャンクフードだというのなら、俺はそれを快く受け入れよう』

 至福の時間とばかりに自分にひたりながら食べていると次々と人が減りソファに一組と真守だけになった。どうやらワンオペらしい店内ではテイクアウトも人気があるようで、客間に来ても何も飲まずに帰っていく客も多くいた。
 ふと間が空いたのか店主女性が真守の皿を下げに来た。

「いかがでしたか?」

「とても美味しかったです。メニューも豊富なんですね。次は妻も連れてきます。
 このたんぽぽオムライスとか、俺、好きなんですよ」

「え? たんぽぽオムライスって何ですか?」

「え? このオムライスって卵の真ん中に筋を入れると左右にパアっと広がってツヤツヤな半熟卵が現れて「うわぁ」ってなるヤツですよね」

「そうですそうです! お客様に「うわぁ」って言ってほしくてやってます!」

「あ……もしかしてこれがたんぽぽオムライスって知りませんでした?」

「………………はいっ!」

 間はあったが明るくうなづく店主に真守は苦笑いした。店主が携帯を取り出して調べ始める。

「ホントだっ! たんぽぽオムライスって調べたらすぐにこれが出てきました」

「ですよねぇ…………」

 苦笑いを深める真守。

「伊丹十三監督の「たんぽぽ」って映画で始まったオムライスなんですよ」

「すごぉい! 教えてくださってありがとうございます!」

 こうして真守は家路についたが、帰りの車の中で二人にお土産を買うことを忘れてしまったことに気がついた。

「あああ! スイーツバーガー買っていこうと思っていたのにぃ!」

 六種類もあるスイーツバーガーの何にするかを悩んでいるうちに店主との話になりすっかり頭から抜けていた。

「でも、来て食べた方が美味いに決まっているもんな」

 自分に納得させるように大きな声でそう言った。
 そして後日、水萌里を『モグタロウ』に連れていくためメニュー検索していた真守は驚いた。新作が次々に出ているのだ。

「これステキ!」

 一緒に見ていた水萌里が飛びついたのは『英国式アフタヌーンティースタンド』で三段もあるスタンドに可愛らしいお菓子やバーガーがたくさん乗せられている。予約制のそれを二つ注文し三人で向かった際には水萌里も洋太もずっとハイテンションで、真守はフッと目元を優しく下げた。

「まだまだ食ってないものがあるぞ! また来ような!」

 洋太は大きなパフェのクリームを口に付けたままメニューを楽しそうに見ていた。

「パフェやタルトは季節で変わるみたい。楽しみ!」

 水萌里も嬉しそうに見ていた。

 ☆☆☆
 ご協力
 モグタロウ様

感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 他サイトにも投稿しております。 ※本作品をAIの学習教材として使用することを禁じます。 ※無断著作物利用禁止

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中