神様の料理番

柊 ハルト

文字の大きさ
67 / 150
バターの微笑み

07 ー 港街

しおりを挟む

 夕飯はアレクセイに約束した通り、鰤を丸ごと使った鰤大根を披露してやった。文字通り、身もアラも使い切ったものだ。アラでもモツでも、下処理をしっかりするのがポイントだ。
 念のために肉料理も作ったのだが、鰤大根は皆に好評で、誠は内心ほっとしていた。
 部屋に戻り、風呂に入った後はアレクセイと夜の教会が待っている。アレクセイにも先に風呂に入ってもらい、身綺麗にした後で一緒に闇に潜った。
 とぷり、と暗闇から教会内部に侵入した。祭壇付近と通路にはポツリポツリと明かりが灯されていて、幻想的な雰囲気を作り出していた。
 誠は自分達の周りに結界を張り、防音対策を練った。

「やっぱスイール村の教会よりは広いんだな」
「この領は栄えているからな」

 二人で通路を並んで歩いていると、少しだけ結婚式の予行演習のような気分になってくる。そんなバカなことを考えていると、アレクセイは名前を呼んでから、自分の腕を少し曲げた。

「…腕を組めって?」
「ああ。君とこうして歩くのが、今から凄く楽しみだ」
「俺も同じこと、考えてたよ」

 誠がそう言うと、二人でくすくすと笑い合った。お互いこの雰囲気に、少し浮かれているのかもしれない。けれど、たまにはこんなバカをしても良いだろう。
 自然と歩みは遅くなり、祭壇の前に着くと、誠はアレクセイに体を押し付けてまだ笑っていた。
 ひとしきり笑うと、アレクセイから少し離れた。

「これから何をするんだ?」
「俺の本業」

 そう言って、バッグから空の皿を取り出して祭壇の上に置いた。そしてその上に次々に、スイーツを乗せていく。

「これが、神様の料理番の仕事。見てて」

 誠が手を合わせると、山になったスイーツは徐々に光の粒子となり、次々に宙へ消えていった。この作業を他人に見せることはない。見れるのは遠野の者だけだ。
 ただただ、アレクセイに自分というものを知って欲しい。誠がこの儀式をアレクセイに見せたのは、それが理由だった。

「…一瞬、君も消えるのかと思った」

 アレクセイは少し手を広げて誠を抱きしめようとする。途中で止まったのは、誠に触れても良いのかと逡巡したからか。
 誠はそんなアレクセイに頬を緩ませながら、自らその腕の中に収まった。

「消えるわけないよ」

 アレクセイの背中に腕を回し、自分の存在を主張する。

「帰ろう」

 誠は顔をあげ、アレクセイに微笑んだ。


 二人でベッドに潜り込む。どこかふわふわとした気分なのは、お互い様なのだろう。体勢を変えても、居心地の良い場所を見つけても、眠気は一向に襲ってはこない。代わりに、アレクセイの腕が誠を襲っていた。

「…擽ったいよ」
「君はまだ寝たくないのかと思ってな」

 アレクセイの声が誠の耳元で響いた。ついでに耳朶にキスを落とされ、声が漏れる。
 それは合図だった。
 唇を深く合わせ、互いの舌を絡め合う。じゅるりと舌と唾液を同時に啜られ、その音は誠の本能に火を点けた。
 アレクセイの指は誠の着ているパーカーのジッパーを下ろし、性急に脱がせていく。そして自分のシャツもキスを続けたまま脱いで、誠の前に素肌を晒していた。
 綺麗に色付いている牡丹の花が視界に映ると、誠はその花の輪郭を辿るようにアレクセイの胸元に指を滑らせた。

「擽ったいな」

 今度はアレクセイが文句を言う番だったが、誠はクスクスと笑いながらそのまま指を腹部に滑らせていく。アレクセイは誠の悪戯な指を捕まえると、口に含んで舌を這わせて遊びだす。薄灯に反射するアレクセイの舌が、何とも艶かしい。誠は自分のものが徐々に隆起していくのを自覚していた。

「アレクセイ…」

 名前を呼んだ声が掠れた。
 アレクセイは、分かっているとでも言うように、誠のスウェットを下着ごと下ろした。

「最後まではしないし、今はできないが…良いか?」
「ん…早く」
「…マコト、煽るな」

 布団を跳ね除け、アレクセイは誠を掻き抱いて深いキスをした。上顎を舐め上げると、今度は誠の喉にキスを落とす。そして首元にも触れると、所有印がある場所を大事そうに撫でた。

「ああ…こんなにもくっきりと出ているんだな」
「魔法だっけ…?」
「そうだ。けれど、俺から干渉はできなくなっている。マコト…もしかして、君の力か?」
「うん。最初何だか分からなかったから除けようと思ったけど、銀狼と繋がってると思ったら、ね。でも、俺からはアレクセイと繋がってるって分かるよ」

 誠はアレクセイに微笑むと、トライバル模様の狼を撫でた。すると狼は薄く光り、本来の役目を取り戻す。その感覚が分かったのか、アレクセイは尾を揺らした。

「…繋がりが、戻った」
「遮断してただけだからな。ん、やっぱ暖かい」

 本来の役目を取り戻し、肌に刻まれている狼も喜んでいるのだろうか。手で覆うと、甲をアレクセイにベロリと舐め上げられた。

「そっちの狼の相手も良いが、こっちの狼の相手もしてくれないか」
「何それ、ヤキモチ?」
「ああ。覚えておけ、マコト。ヴォルクの狼は、ツガイに対しては狭量になる」

 いきなり育ちかけていた起立を握られ、誠は声を上げた。ギラギラと光るアイスブルーは、熱く燃えている。アレクセイの指に脇腹をなぞられ、誠は更に声を上げた。
 体が敏感になっている。触れられるところ全部が、性感帯にでもなったようだ。アレクセイに性器同士を擦り付けられるたびに、段々と息が上がっていった。

「んぁ…」

 自分に覆い被さっている狼を受け入れるように、自然と足が開く。けれどアレクセイは誠の片足を抱えると、太腿にキスをしてから甘噛みをするだけだった。

「俺を受け入れてくれるのは嬉しいのだが、ダメだ、マコト。俺を誘惑するな」

 熱い吐息を吐きながら懇願するアレクセイの方が、よっぽど誠を誘惑している。アレクセイは誠の体を返して俯せにさせると、その上からまた覆い被さった。

「今日は太腿を貸してくれ。一緒に気持ち良くなろう」

 甘く低い声までが、誠を一気に快楽の海へ堕とす。狼ならマウントを取る行為だが、相手がアレクセイだというだけで、誠の本能はその行為を許していた。

「あっ…」

 アレクセイの指が、誠の性器の付け根と後孔の間辺りを押した。
 知らない刺激が誠の中を駆け巡る。思わず耳と尾が出てしまったが、アレクセイに尾の付け根を擽られ、それが快感に変わっていくのは時間の問題だった。
 尾をかき分けるように背骨に沿ってキスを落とされ、後孔の縁をなぞられる。反射的に尾でアレクセイの体を押しのけようとしてしまったが、鍛えられた体はびくともしなかった。

「悪戯好きな尾だな」

 狐耳の内側を舐められ、太腿を揃えるようにアレクセイに足を固定させられると、その太腿の付け根にぬるりとした太いものがゆっくりと差し込まれてきた。どくどくと脈打つそれは、アレクセイの性器だ。それに気付いたのは、先程指で押された部分を段差が通り抜けた時だった。

「んぅ…、あっ…」

 思わず腰が上がる。しかしアレクセイに腰を掴まれているので、自由になれるはずがなかった。
 そこを擦られるスピードが早くなる。耳に背後から熱い息がかかる。誠は揺さぶられながら、撫でられた後孔が疼いているのが自分でも分かってしまっていた。
 お互いの先走りが混ざり、にちゃにちゃという淫靡な音を部屋に響かせている。その音も、二人の官能を高める要因の一つにしかならなかった。
 アレクセイは誠と自分の性器が密着するように手を添えると、もっと大胆に腰を前後に動かしはじめた。
 誠は自分のものだとマーキングするように、アレクセイは先走りを、普段は隠されている部分に塗り込んでいるようだ。
 カリの段差と浮き出た血管で敏感な場所を擦られた誠は、自分のものとは思えない甘く強請るような声を止める術を知らない。身を任せたまま、二人は熱を高め合っていた。
 しばらくして、誠はアレクセイと同時に白濁を吐き出した。
 誠は先にドサリとベッドに沈み込んでしまった。膨れきった熱は弾けたが、埋み火はまだ体内で燻っている。一人では得られない高揚感と快楽、そして、欲望。爛れた行為だと思う反面、もっとこの体を貪って欲しい共思う。それを示すように、尾はアレクセイの腕に巻きついていた。
 アレクセイは山吹色の尾を潰さないよう気を付けながら、背後から誠を抱きしめて体を横向きにする。そしてうなじにキスをしながら、白濁を誠の薄い腹に伸ばして、更にマーキングをしていた。

「まだ、するの?」

 整わない息の中、誠は振り返る。見つめたアイスブルーは、ぎらついた欲望の炎を灯したままだ。アレクセイは誠の体調を考えて終わりにしようと言いたげだったが、その前に誠は自ら抱きつき、続きを求めた。
 二人の熱が再び燃えさかるのに、時間はかかるはずもなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

ブラッドフォード卿のお気に召すままに

ゆうきぼし/優輝星
BL
第二章スタート!:イブキと婚約をして溺愛の日々を送ろうとしていたブラッドフォード。だが、国の情勢は彼の平穏を許さず、王の花嫁選びが始まる。候補者が集まる中、偽の花嫁(♂)が紛れ込む。花嫁の狙いはイブキの聖獣使いの力で。眠りについた竜を復活させようとしていた。先の戦においての密約に陰謀。どうやらイブキの瞳の色にも謎があるようで……。旅路にて、彼の頭脳と策略が繰り広げられる。 第一章:異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。 *マークはR回。(後半になります) ・ご都合主義のなーろっぱです。 ・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。 腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手) ・イラストは青城硝子先生です。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

処理中です...