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14話
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虎太郎が個室を出て行くと、市原が申し訳なさそうに声を掛けていた。
「先程まで、大丈夫そうでしたのに、飲ませ過ぎてしまいましたかね‥?」
村田が市原の言葉に返事をしていると、隣に座っている汰久が口を開く。
「市原課長は、以前、弊社の担当でいらっしゃいましたか?」
「そうなんだよ。今日は、担当の来栖が出張でね。代わりに来させてもらったんだ。久しぶりに村田さんに会えて、楽しませて貰っているよ」
「そうでしたか、私も移動したばかりで、これから沢山お世話になると思いますので、来栖さんにもよろしくお伝えください」
人懐っこそうな笑顔で話しかけてくる汰久に、市原も良い人が移動してきましたねーと、村田と話をしていた。
その時、汰久がおもむろに携帯を取り出した。
「あっ、すみません。ちょっと急ぎの電話が入って‥」
そう言って市原にペコリと頭を下げ、了承を得ると、部屋を出て行った。
虎太郎はトイレを済ませ、頭を冷やすために顔を洗っていた。
ハンカチで顔を拭っていると、トイレの入り口がカチャリと開く音がした。
顔を上げ、視線を送ると、そこには汰久が立っていた。
「‥虎太郎?大丈夫か‥?そんなに酒強くないのに、飲み過ぎだらダメだろ?」
あんな事をしておいて、数か月ぶりに会うのに、全く空白を感じさせない言葉で、あの時と、全く変わらない笑顔で近づいてくる。
「‥‥なんで、お前がここにいる」
「なんでって言われてもな~お前に会いたくて、ここまで来た俺に対して、つれないよな~」
後退りをする虎太郎に、何の躊躇いもなく距離を詰めてくる汰久。
その姿に、虎太郎はどうしようもなく恐怖を感じる。
「‥‥くっ‥来るな!‥‥俺に近づくな!」
いつの間にか壁際まで追い詰められた虎太郎を、嬉しそうに汰久が見つめている。
「‥はぁ~虎太郎。会いたかったよ。お前、連絡してくれないから。でも、やっと‥‥俺の手の届く所に来たね」
そう言って汰久はウットリとした顔をして、逃げ場がなく恐怖で体の震えが止まらない虎太郎の頬をゆっくりと撫で顎を持ち上げると、自分と視線を合わせる。
「そんなに怯えないで‥。俺は、ただお前に伝えたいことがあっただけ‥」
汰久はポケットから携帯を取り出すと、震える虎太郎の目の前に差し出す。
「ほら、見える‥?」
そう言って虎太郎に見せてきたのは‥‥あの時、軽井沢でのあの夜、汰久に犯され屈辱を受けたあの時の映像が、目の前に流れている‥。
「そっ‥‥そんな‥」
その映像を見た瞬間、虎太郎は目の前が真っ暗になり、意識が朦朧とする。
汰久は、崩れ落ちそうになる虎太郎の身体を支え、細い腰を掴んだ。
「おっと‥大丈夫?」
すぐに正気に戻った虎太郎は、自分が汰久の腕の中にいる事に気が付くと、力いっぱい腕を振り払う。
「‥はっ‥離せ!!」
震える腕をがっしり握り返され、振り払う事も出来ず、ただ汰久を睨みつけるだけだった。
「‥虎太郎、また連絡するよ。分かるよな?これをどうするかは、お前次第だ‥」
汰久は携帯を見せつけるように言葉を残し、トイレを出て行った。
長い暗闇の中を歩き続けている。
永遠とも思える時間。
何故、自分が歩いているのか分からない。
立ち止まると、すぐに足元からぬかるんだ地面へと引きずり込まれる。
足がだんだん重くなり、体が沈んでいく‥‥助けて‥誰か‥。
そう声にならない叫びを上げたところで、虎太郎はハッと目が覚めた。
周りを見渡しそこが自分のベッドだと気が付く。
びっしょりと汗をかき、全力疾走した後のような呼吸をしていた。
昨夜、あれから自分がどんな会話をして、どうやって家に帰ったのか全く思い出せなかった。
ただ、あの携帯から流れていた映像は、消してしまいたくても繰り返し頭の中を流れていた。
「‥‥うっ‥‥っ‥」
苦しくて悔しくて涙が出てくる。
虎太郎は出社すると、すぐに市原の所に向かった。
「おはようございます」
顔を上げた市原の顔が、一瞬怪訝な顔になる。
「おはよう。若奈‥お前、大丈夫か?」
「‥はい。昨日はすみませんでした。僕‥あまり覚えていないのですが‥何か失礼な事を‥」
不安そうな虎太郎を前に、市原は手をひらひらと横に振った。
「いや、大丈夫だ。ちょっと飲ませ過ぎた俺が悪い。あの後、すぐに解散して、お前をタクシーで家まで送ったんだ。ちゃんと眠れたか?」
「‥はい。ご迷惑をお掛けして・・」
「大丈夫だから、それより、若奈。顔色悪いぞ、二日酔いか?」
「‥あっ‥いえ、大丈夫です」
虎太郎は逃げるように自分の席に戻る。
確かに、今朝鏡に映った自分の顔を見た時、あまりの顔色の悪さに驚いた。
なんとか、今日を乗り切ろう。
そうすれば、明日は土曜だし仕事は休みだ。
そう自分に言い聞かせて奮い立たせていた。
一日がスローモーションのように長く感じた。
ようやく終業時間になるという頃、携帯にメールが届き、虎太郎は開いた。
『今日、俺の家に来るように』
その言葉と、住所が書いてあった。
汰久からだ。こんなに早く連絡がきた‥。
心の準備が出来ていない。
行きたくない‥。
だが、なんとしてもあの映像を消してもらわなくてては‥あいつが何を求めているのか、何を要求してくるのか分からないが、虎太郎は腹を括るしかなかった。
「先程まで、大丈夫そうでしたのに、飲ませ過ぎてしまいましたかね‥?」
村田が市原の言葉に返事をしていると、隣に座っている汰久が口を開く。
「市原課長は、以前、弊社の担当でいらっしゃいましたか?」
「そうなんだよ。今日は、担当の来栖が出張でね。代わりに来させてもらったんだ。久しぶりに村田さんに会えて、楽しませて貰っているよ」
「そうでしたか、私も移動したばかりで、これから沢山お世話になると思いますので、来栖さんにもよろしくお伝えください」
人懐っこそうな笑顔で話しかけてくる汰久に、市原も良い人が移動してきましたねーと、村田と話をしていた。
その時、汰久がおもむろに携帯を取り出した。
「あっ、すみません。ちょっと急ぎの電話が入って‥」
そう言って市原にペコリと頭を下げ、了承を得ると、部屋を出て行った。
虎太郎はトイレを済ませ、頭を冷やすために顔を洗っていた。
ハンカチで顔を拭っていると、トイレの入り口がカチャリと開く音がした。
顔を上げ、視線を送ると、そこには汰久が立っていた。
「‥虎太郎?大丈夫か‥?そんなに酒強くないのに、飲み過ぎだらダメだろ?」
あんな事をしておいて、数か月ぶりに会うのに、全く空白を感じさせない言葉で、あの時と、全く変わらない笑顔で近づいてくる。
「‥‥なんで、お前がここにいる」
「なんでって言われてもな~お前に会いたくて、ここまで来た俺に対して、つれないよな~」
後退りをする虎太郎に、何の躊躇いもなく距離を詰めてくる汰久。
その姿に、虎太郎はどうしようもなく恐怖を感じる。
「‥‥くっ‥来るな!‥‥俺に近づくな!」
いつの間にか壁際まで追い詰められた虎太郎を、嬉しそうに汰久が見つめている。
「‥はぁ~虎太郎。会いたかったよ。お前、連絡してくれないから。でも、やっと‥‥俺の手の届く所に来たね」
そう言って汰久はウットリとした顔をして、逃げ場がなく恐怖で体の震えが止まらない虎太郎の頬をゆっくりと撫で顎を持ち上げると、自分と視線を合わせる。
「そんなに怯えないで‥。俺は、ただお前に伝えたいことがあっただけ‥」
汰久はポケットから携帯を取り出すと、震える虎太郎の目の前に差し出す。
「ほら、見える‥?」
そう言って虎太郎に見せてきたのは‥‥あの時、軽井沢でのあの夜、汰久に犯され屈辱を受けたあの時の映像が、目の前に流れている‥。
「そっ‥‥そんな‥」
その映像を見た瞬間、虎太郎は目の前が真っ暗になり、意識が朦朧とする。
汰久は、崩れ落ちそうになる虎太郎の身体を支え、細い腰を掴んだ。
「おっと‥大丈夫?」
すぐに正気に戻った虎太郎は、自分が汰久の腕の中にいる事に気が付くと、力いっぱい腕を振り払う。
「‥はっ‥離せ!!」
震える腕をがっしり握り返され、振り払う事も出来ず、ただ汰久を睨みつけるだけだった。
「‥虎太郎、また連絡するよ。分かるよな?これをどうするかは、お前次第だ‥」
汰久は携帯を見せつけるように言葉を残し、トイレを出て行った。
長い暗闇の中を歩き続けている。
永遠とも思える時間。
何故、自分が歩いているのか分からない。
立ち止まると、すぐに足元からぬかるんだ地面へと引きずり込まれる。
足がだんだん重くなり、体が沈んでいく‥‥助けて‥誰か‥。
そう声にならない叫びを上げたところで、虎太郎はハッと目が覚めた。
周りを見渡しそこが自分のベッドだと気が付く。
びっしょりと汗をかき、全力疾走した後のような呼吸をしていた。
昨夜、あれから自分がどんな会話をして、どうやって家に帰ったのか全く思い出せなかった。
ただ、あの携帯から流れていた映像は、消してしまいたくても繰り返し頭の中を流れていた。
「‥‥うっ‥‥っ‥」
苦しくて悔しくて涙が出てくる。
虎太郎は出社すると、すぐに市原の所に向かった。
「おはようございます」
顔を上げた市原の顔が、一瞬怪訝な顔になる。
「おはよう。若奈‥お前、大丈夫か?」
「‥はい。昨日はすみませんでした。僕‥あまり覚えていないのですが‥何か失礼な事を‥」
不安そうな虎太郎を前に、市原は手をひらひらと横に振った。
「いや、大丈夫だ。ちょっと飲ませ過ぎた俺が悪い。あの後、すぐに解散して、お前をタクシーで家まで送ったんだ。ちゃんと眠れたか?」
「‥はい。ご迷惑をお掛けして・・」
「大丈夫だから、それより、若奈。顔色悪いぞ、二日酔いか?」
「‥あっ‥いえ、大丈夫です」
虎太郎は逃げるように自分の席に戻る。
確かに、今朝鏡に映った自分の顔を見た時、あまりの顔色の悪さに驚いた。
なんとか、今日を乗り切ろう。
そうすれば、明日は土曜だし仕事は休みだ。
そう自分に言い聞かせて奮い立たせていた。
一日がスローモーションのように長く感じた。
ようやく終業時間になるという頃、携帯にメールが届き、虎太郎は開いた。
『今日、俺の家に来るように』
その言葉と、住所が書いてあった。
汰久からだ。こんなに早く連絡がきた‥。
心の準備が出来ていない。
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