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第四話 断罪裁判
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連行という言葉がとてもしっくりくる。周りには20の兵、手には槍。先導しているのはかなり位が高そうで、かなり偉そうな男。30代前半といったところで、髪は金髪で肩口まで伸ばしている。スレンダー目で、見るからにお偉い面だ。
「あの、俺何かしましたか?」
「」
男は何も話さない。
俺はただ、奴らに連れて行かれるしかなかった。
途中ジャスにも会った。彼は叫んで、「レオンをどこに連れてく気だ!」と言うと男は
「、、、王への謁見だ。貴様は持ち場に戻れ。」
どこか含みのある言い方をした男はそのまま地下へと俺を先導した。
そして俺は、、、
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
投獄されていた。
薄暗い石造りの部屋。扉は木製で、いわゆる鉄格子ではなかった。
アレから3日、看守の兵が話していたことによると、外では俺の噂が立っていたらしい。
なんでも、俺が先の戦争で無意味に魔術を使って兵全体を危険に晒した叛逆の危険因子だとかなんとか。
なんだかんだで罪人扱いってわけだ。
まさか罪人扱いされるなんて誰が思うだろうか。
幸いというか、まだ正式な処罰は決定していない。
決まるのは、王の御前にて開かれる裁判だという。
それが今日だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ー裁判間近ー
手枷をつけた俺は、階段の前にいた。
「この先が、法廷の場である。くれぐれも粗相のないように。」
俺を連れてきた兵士がそう忠告してきた。
一体何が起こっているのか、これでわかる。
死刑とか嫌だぞ俺、、、
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
階段の先にあったのは、豪華な装飾が施された高い天井、壁。絨毯は赤と金の色合いで、見ただけでもthe王室って感じの広い部屋。その中央に座るのは王冠を被った男。彼が王だ。
「これより、ドレイン王国国王ルシアス・ヴァン・ドレイン3世の名において、断罪裁判を執行する!」
手前にいる騎士格好の男が、声高らかに宣言した。
「罪状!手前レオン氏は、先の戦にて無許可で魔術を使用し陣営の連携を乱し、戦争の不利益をもたらそうとした。」
、、、なんだって?俺が魔術を?いやいやいや、そんなわけないだろ。俺は3日前初めて初級魔術が使えるようになったばかりだぞ?
「なお、これは軽視できることではなく、国の安寧にも関わる大罪である。」
「この罪状は真か?レミッド大臣。」
「ハ!これは我が軍に起こった由々しき事態でございます。国王。」
国王の言葉に例の金髪の男が答える。
あいつ大臣だったのか。
「、、、魔術を使ったのは、例の歩兵の件ではなかったか?」
「アレとはまた別件ゆえ。捜索中、小耳に挟んだものですから。」
国王はこちらを向いた。
「お主、レオンと言ったな。これは本当か?」
「、、、俺は知りません。俺は負傷とともに、記憶を欠落しています。それに、魔術を使かえるようになったのは3日前です。」
金髪大臣。
「嘘をつくとお前のためにならんぞ!そんなものは理由にはならん。」
国王。
「落ち着けレミッドよ。、、、ふむ、それを証明できる者はおるか?」
証明できる者?俺の状態を知っている者、、、ジャス?
「、、、ジャスという歩兵の友人が、それを知っています。」
国王はお付きの者に何か伝えると
「レミッドよ、ジャスという者をここへ。この者の詳細を知っているかもしれん。」
「、、、ハ!今すぐに。」
少しするとジャスが現れた。
「ジャス。お呼びにより、馳せ参じました。」
ジャスは跪きそう言った。
「うむ。ジャスよ、主はこの者の友人であったな?何か知っていることがあれば包み隠さず教えてほしい。」
「ハ!3日前。私は彼のステータスを見る機会がありました。その時は確かに、彼は魔術を行使できる能力値ではございませんでした。」
「ふむ、、、稀ではあるが、記憶に介入し、ステータスに変化を起こす魔術もあると聞く。と、なると、記憶の欠落は間違いなかろう。」
「、、、しかし国王。彼が起こしたことは、記憶の欠落以前のこと。言っていることが正しかったとしても、その罪は依然として消えはしませぬ。」
レミッドが口を開く。
国王は依然として眉間にシワを寄せたままだった。
「これは、、、難しい審議であるな。」
「国王様!悩まれることはございません!記憶があるにしろ、ないにしろ、この者の犯した罪は明らかなのです!即刻処罰を言い渡し、鎖をつなぐべきです!」
国王は少し顔を歪めながら言った。
「しかしレミッドよ。この者は犯した罪はあったとしても記憶は消えている。身に覚えのないことに罰が与えられるものか。それに軍事には支障は出ていなかった。未遂であろう?この者が悪意のみでそのような行動に出るにはあまりに不審な点が多すぎる。」
「国が滅んでからでは遅いのです!国王!記憶が消えたからと言って、心まで入れ替えるかどうかはまた別の話!対処を怠れば、今度は未遂では終わらないかもしれません!」
「言ったであろう、不審な点が多すぎると。それにお主もそんなに熱弁をしてどうしたのだ?何かそんなにこの決議を終わらせたい理由でもあるのか?」
国王のその語りは探りを入れるそれだった。
レミッドも、たじろぎつつもすぐに姿勢を正した。
「、、、この国の、、、安寧を想ってのことです。」
怪しさMAXのレミッドが何を考えているかはわからない。が、絶対ろくなことではないのは確かだ。それも、人を陥れる類のこと。そういうのはどこの世界でも変わらないってことか。異世界に来てまで大人の汚いところを見たくは無かった。いや、異世界だからか。そういう世界に憧れていた俺だからこそワクワクしたりできるが、この世界の人々にとってここは未だ危険で、自分の命は自分で守らなきゃいけない。魔術なんて規格外の力があっても、それはこの世界にとって普通で、理の一つなんだ。もし元の世界で昔に生まれたとして俺は変わらずワクワクできるだろうか?生きていくわけだから必死なのもわかる。
だけどそれとこれとは話が違う。俺は転生して、この世の一部になった。だったら俺だって必死こいて生きてやる!大人しく食われてやるものか!
俺の異世界ライフは始まったばっかなんだよ!
「、、、俺は、、、無実だ。」
「⁉︎」
「⁉︎、、、何をいうかと思えば、貴様は罪人であるぞ!許可なく発言したことも問題だが、その上自分可愛さに罪を逃れようとするなど、それでも誇り高きドレイン王国の兵士か⁉︎」
「や、やめとけレオン!ここでの反発は流石にまずい!お前が不利になるだけだぞ!」
ジャスはひそひそと俺に静止の言葉をかける。
だが、、、いいや言ってやる!全部!思ったこと全部だ!
俺は知っている。
あの少年の、、、レオンの優しさを、、、強さを!彼は最後まで誇り高く戦っていた!そんな人間がそんなことするもんか!
「俺は、、、」
レオンは、、、
「そんなことする人間じゃない!」
国王と面と向かって反発してしまった。だがいい。言いたいことだ。言いたいこと言えずに罰せられるなんて絶対にしない!
「、、、あんた、、、レミッドだっけか?」
「おいやめとけ!」
「さっきから言いたいことばっか言ってくれるじゃねぇか?白々しいだの、嘘をつくだの。覚えてねぇっつってんだろうが!しらねぇんだよ何もかも!俺は歩兵なんだろ?歩兵の俺がなんでそんなヤベェことできんだよ?なぁ?なんもしらねぇ歩兵が!どうして国を滅ぼそうなんてできるんだ⁉︎」
「このッ!、、、」
「この国じゃ歩兵は武術を中心に鍛錬するんだろ?魔術が使えるわけがねぇんだよ!」
この国の軍部の構成は、後方に魔術。前衛に歩兵。中衛に騎馬と魔術。これが基本で、それぞれ鍛えるステータスは持ち場で必要とされる部分を徹底的に、らしい。歩兵のレオンが鍛えられたところは武術の一貫のみ、その他の役割はないのだ。
「それに、、、お前、、、誇り高き云々って言ってたよな?
自分でいうのもなんだが、俺は死ぬ間際まで必死に生きてたぜ、、、誇り高くな、、、」
言ってやった。主張は十分。
周りは静まり返り、各々が反応を見せる。
驚くもの、たじろぐもの、顔を顰めるもの、その中で国王だけはなんの変化も見せなかった。
レミッドが口を開いたのはその数秒後だった。
「、、、、、、言いたいことはそれだけか、、、」
睨みつける俺を見て、レミッドは鼻を鳴らした。
「フンッ、戯言をほざくしかできぬようになったか、、、これで決まった!今の貴様の行動は、王に対する叛逆以外の何者でもない!然るべき投獄ののちその首を公の前ではねおとし」
「レミッドォ‼︎」
国王がレミッドの言葉を遮った。
「、、、それを決めるのは貴様ではない!、、、」
言いようのない怒りをあらわにして、国王はレミッドを沈めた。しかしその冷静な顔の奥には、確実に怒りの炎が燃えていた。その怒りの矛先が俺か、レミッドか、はたまた二人かはわからない。
「この者の言っていることは虚言などではない。」
「「「⁉︎」」」
国王のはなった言葉に、俺を含めた全員が驚きの顔をあらわにする。
「ま、まさか使われたのですか⁉︎」
開口一番、レミッドが確かめるように言った。
「そうでなければ、こんなことは言わん。」
いったいなんの話をしてるんだ?全然見えてこないぞ、、、国王が俺を弁護したってことか?
すると国王がジャスの方を見て
「すまぬな、ジャスよ。わざわざ呼び立てしてきてもらい。これは諸事情により多くは使えんのだ。」
「いっ、いえ!滅相もございませぬ!」
ジャスが驚いて頭を下げた。声をかけられると思っていなかったのだろう。
「、、、しかし、だとしても話の争点は解決しておらん。後日に再度、審議をしなくてはならん。判決は明日、決定するものとする!」
「「「ハ!」」」
国王がそう宣言すると、王室中の全員が頭を下げた。
レミッドは不満そうに俺を睨みつけた。
判決は後日に持ち越しとなり、俺はまた牢獄に繋がれることとなった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「まったく、やってくれるぜ、、、」
扉の向こう側からジャスが声をかけてきた。
罪人の判決待ちって言う大事な時なのにどうやってここまで来たんだ?
「ごめん、ジャス。止めてくれたのに、、、」
「何はともあれ、何事もなくて良かったぜ。本当ならあそこで口開いた時点で、死刑確定だったかもしれねぇってのにな。」
「マジか、、、」
俺は苦笑いしながら答えた。
マジで首飛ぶとこだったのか、、、
「まぁお前らしいっちゃあ、お前らしいけどな。」
「どう言うことだ?」
「お前、前も上官に逆らって謹慎くらってただろ。正義感っていうか、他人の不利益を見過ごせない奴だったな。ってお前記憶ないんだったか笑笑」
ジャスは笑いながらそう言った。
そうか、、、レオンもそうだったのか、、、
「とはいえ、まだ油断は出来ねぇ。、、、レオン。あのレミッドって大臣、十分に注意しとけ。」
やっぱり何か隠してるのか。
「やっぱり、、、何かあるのか。」
「あぁ、最近きなくせぇことが目立ってきたって兵団の中じゃ噂されてる。何かでっけぇことに手出す気かもしれねぇ。」
なんだろうか。大臣という地位を得てなお、何かを欲しがるほどの野心家。大臣の上、、、、、、
「、、、国か?」
「、、、あながち間違っちゃいないかもな。あいつは、国王の腹心の1人だが、あいつはドレイク家の出だからな。」
「ドレイク家?」
「レミッド・ヴァン・ドレイク、3つある最高位貴族の1つドレイク家の次男。ドレイク家はドレイン一族の分家。つまり王族だ。」
「、、、王族の次男坊が大臣、、、」
「ちなみに、大臣は職業的な最高位だから、王族よりも身分は低い。」
、、、おかしい、、、わざわざ、王族という最高の社会的ステータスを捨ててまで大臣になったんだ?
「、、、わざわざ位を下げてまでやりたいこと、、、」
「俺たちもそれで動いてる。」
「動いてるって?」
「俺たちもわからねぇがレミッドが何かをやらかすのが邪魔な奴がいるんだろう。もっと上か、別の派閥か。
上官方はそれで大忙しだ。」
整理すると、レミッドが何か企んでるのは事実で、それを阻止しようとする派閥が今軍を動かしているってことか。いや全てじゃないんだろう。上官とその部下数名に知らされた極秘事項。、、、ジャスってもしかして結構お偉いさん?
「それしゃべってよかったのかよ。結構重要な話なんじゃないのか?」
「お前はダチだからな!特別だ。」
、、、こいつをこんな機密案件につかせた上官はバカだな。
「でもありがと。おかげで少し話が見えてきた。」
「いいってことよ!、、、気をつけろよ。明日は必ず動きがある。この裁判に何が隠されてるのか、そんなことは知ったこっちゃねぇが、、、ダチの瀕死は一度で十分だ。」
ジャスも心配してくれてるのか、、、
いよいよ明日、全てがわかる。俺を陥れてレミッドが何をするのか。誰がそれを止めたいのか。
、、、なぜ俺なのか。
こんな薄汚えところ、さっさと出てってやる!
「あの、俺何かしましたか?」
「」
男は何も話さない。
俺はただ、奴らに連れて行かれるしかなかった。
途中ジャスにも会った。彼は叫んで、「レオンをどこに連れてく気だ!」と言うと男は
「、、、王への謁見だ。貴様は持ち場に戻れ。」
どこか含みのある言い方をした男はそのまま地下へと俺を先導した。
そして俺は、、、
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投獄されていた。
薄暗い石造りの部屋。扉は木製で、いわゆる鉄格子ではなかった。
アレから3日、看守の兵が話していたことによると、外では俺の噂が立っていたらしい。
なんでも、俺が先の戦争で無意味に魔術を使って兵全体を危険に晒した叛逆の危険因子だとかなんとか。
なんだかんだで罪人扱いってわけだ。
まさか罪人扱いされるなんて誰が思うだろうか。
幸いというか、まだ正式な処罰は決定していない。
決まるのは、王の御前にて開かれる裁判だという。
それが今日だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ー裁判間近ー
手枷をつけた俺は、階段の前にいた。
「この先が、法廷の場である。くれぐれも粗相のないように。」
俺を連れてきた兵士がそう忠告してきた。
一体何が起こっているのか、これでわかる。
死刑とか嫌だぞ俺、、、
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階段の先にあったのは、豪華な装飾が施された高い天井、壁。絨毯は赤と金の色合いで、見ただけでもthe王室って感じの広い部屋。その中央に座るのは王冠を被った男。彼が王だ。
「これより、ドレイン王国国王ルシアス・ヴァン・ドレイン3世の名において、断罪裁判を執行する!」
手前にいる騎士格好の男が、声高らかに宣言した。
「罪状!手前レオン氏は、先の戦にて無許可で魔術を使用し陣営の連携を乱し、戦争の不利益をもたらそうとした。」
、、、なんだって?俺が魔術を?いやいやいや、そんなわけないだろ。俺は3日前初めて初級魔術が使えるようになったばかりだぞ?
「なお、これは軽視できることではなく、国の安寧にも関わる大罪である。」
「この罪状は真か?レミッド大臣。」
「ハ!これは我が軍に起こった由々しき事態でございます。国王。」
国王の言葉に例の金髪の男が答える。
あいつ大臣だったのか。
「、、、魔術を使ったのは、例の歩兵の件ではなかったか?」
「アレとはまた別件ゆえ。捜索中、小耳に挟んだものですから。」
国王はこちらを向いた。
「お主、レオンと言ったな。これは本当か?」
「、、、俺は知りません。俺は負傷とともに、記憶を欠落しています。それに、魔術を使かえるようになったのは3日前です。」
金髪大臣。
「嘘をつくとお前のためにならんぞ!そんなものは理由にはならん。」
国王。
「落ち着けレミッドよ。、、、ふむ、それを証明できる者はおるか?」
証明できる者?俺の状態を知っている者、、、ジャス?
「、、、ジャスという歩兵の友人が、それを知っています。」
国王はお付きの者に何か伝えると
「レミッドよ、ジャスという者をここへ。この者の詳細を知っているかもしれん。」
「、、、ハ!今すぐに。」
少しするとジャスが現れた。
「ジャス。お呼びにより、馳せ参じました。」
ジャスは跪きそう言った。
「うむ。ジャスよ、主はこの者の友人であったな?何か知っていることがあれば包み隠さず教えてほしい。」
「ハ!3日前。私は彼のステータスを見る機会がありました。その時は確かに、彼は魔術を行使できる能力値ではございませんでした。」
「ふむ、、、稀ではあるが、記憶に介入し、ステータスに変化を起こす魔術もあると聞く。と、なると、記憶の欠落は間違いなかろう。」
「、、、しかし国王。彼が起こしたことは、記憶の欠落以前のこと。言っていることが正しかったとしても、その罪は依然として消えはしませぬ。」
レミッドが口を開く。
国王は依然として眉間にシワを寄せたままだった。
「これは、、、難しい審議であるな。」
「国王様!悩まれることはございません!記憶があるにしろ、ないにしろ、この者の犯した罪は明らかなのです!即刻処罰を言い渡し、鎖をつなぐべきです!」
国王は少し顔を歪めながら言った。
「しかしレミッドよ。この者は犯した罪はあったとしても記憶は消えている。身に覚えのないことに罰が与えられるものか。それに軍事には支障は出ていなかった。未遂であろう?この者が悪意のみでそのような行動に出るにはあまりに不審な点が多すぎる。」
「国が滅んでからでは遅いのです!国王!記憶が消えたからと言って、心まで入れ替えるかどうかはまた別の話!対処を怠れば、今度は未遂では終わらないかもしれません!」
「言ったであろう、不審な点が多すぎると。それにお主もそんなに熱弁をしてどうしたのだ?何かそんなにこの決議を終わらせたい理由でもあるのか?」
国王のその語りは探りを入れるそれだった。
レミッドも、たじろぎつつもすぐに姿勢を正した。
「、、、この国の、、、安寧を想ってのことです。」
怪しさMAXのレミッドが何を考えているかはわからない。が、絶対ろくなことではないのは確かだ。それも、人を陥れる類のこと。そういうのはどこの世界でも変わらないってことか。異世界に来てまで大人の汚いところを見たくは無かった。いや、異世界だからか。そういう世界に憧れていた俺だからこそワクワクしたりできるが、この世界の人々にとってここは未だ危険で、自分の命は自分で守らなきゃいけない。魔術なんて規格外の力があっても、それはこの世界にとって普通で、理の一つなんだ。もし元の世界で昔に生まれたとして俺は変わらずワクワクできるだろうか?生きていくわけだから必死なのもわかる。
だけどそれとこれとは話が違う。俺は転生して、この世の一部になった。だったら俺だって必死こいて生きてやる!大人しく食われてやるものか!
俺の異世界ライフは始まったばっかなんだよ!
「、、、俺は、、、無実だ。」
「⁉︎」
「⁉︎、、、何をいうかと思えば、貴様は罪人であるぞ!許可なく発言したことも問題だが、その上自分可愛さに罪を逃れようとするなど、それでも誇り高きドレイン王国の兵士か⁉︎」
「や、やめとけレオン!ここでの反発は流石にまずい!お前が不利になるだけだぞ!」
ジャスはひそひそと俺に静止の言葉をかける。
だが、、、いいや言ってやる!全部!思ったこと全部だ!
俺は知っている。
あの少年の、、、レオンの優しさを、、、強さを!彼は最後まで誇り高く戦っていた!そんな人間がそんなことするもんか!
「俺は、、、」
レオンは、、、
「そんなことする人間じゃない!」
国王と面と向かって反発してしまった。だがいい。言いたいことだ。言いたいこと言えずに罰せられるなんて絶対にしない!
「、、、あんた、、、レミッドだっけか?」
「おいやめとけ!」
「さっきから言いたいことばっか言ってくれるじゃねぇか?白々しいだの、嘘をつくだの。覚えてねぇっつってんだろうが!しらねぇんだよ何もかも!俺は歩兵なんだろ?歩兵の俺がなんでそんなヤベェことできんだよ?なぁ?なんもしらねぇ歩兵が!どうして国を滅ぼそうなんてできるんだ⁉︎」
「このッ!、、、」
「この国じゃ歩兵は武術を中心に鍛錬するんだろ?魔術が使えるわけがねぇんだよ!」
この国の軍部の構成は、後方に魔術。前衛に歩兵。中衛に騎馬と魔術。これが基本で、それぞれ鍛えるステータスは持ち場で必要とされる部分を徹底的に、らしい。歩兵のレオンが鍛えられたところは武術の一貫のみ、その他の役割はないのだ。
「それに、、、お前、、、誇り高き云々って言ってたよな?
自分でいうのもなんだが、俺は死ぬ間際まで必死に生きてたぜ、、、誇り高くな、、、」
言ってやった。主張は十分。
周りは静まり返り、各々が反応を見せる。
驚くもの、たじろぐもの、顔を顰めるもの、その中で国王だけはなんの変化も見せなかった。
レミッドが口を開いたのはその数秒後だった。
「、、、、、、言いたいことはそれだけか、、、」
睨みつける俺を見て、レミッドは鼻を鳴らした。
「フンッ、戯言をほざくしかできぬようになったか、、、これで決まった!今の貴様の行動は、王に対する叛逆以外の何者でもない!然るべき投獄ののちその首を公の前ではねおとし」
「レミッドォ‼︎」
国王がレミッドの言葉を遮った。
「、、、それを決めるのは貴様ではない!、、、」
言いようのない怒りをあらわにして、国王はレミッドを沈めた。しかしその冷静な顔の奥には、確実に怒りの炎が燃えていた。その怒りの矛先が俺か、レミッドか、はたまた二人かはわからない。
「この者の言っていることは虚言などではない。」
「「「⁉︎」」」
国王のはなった言葉に、俺を含めた全員が驚きの顔をあらわにする。
「ま、まさか使われたのですか⁉︎」
開口一番、レミッドが確かめるように言った。
「そうでなければ、こんなことは言わん。」
いったいなんの話をしてるんだ?全然見えてこないぞ、、、国王が俺を弁護したってことか?
すると国王がジャスの方を見て
「すまぬな、ジャスよ。わざわざ呼び立てしてきてもらい。これは諸事情により多くは使えんのだ。」
「いっ、いえ!滅相もございませぬ!」
ジャスが驚いて頭を下げた。声をかけられると思っていなかったのだろう。
「、、、しかし、だとしても話の争点は解決しておらん。後日に再度、審議をしなくてはならん。判決は明日、決定するものとする!」
「「「ハ!」」」
国王がそう宣言すると、王室中の全員が頭を下げた。
レミッドは不満そうに俺を睨みつけた。
判決は後日に持ち越しとなり、俺はまた牢獄に繋がれることとなった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「まったく、やってくれるぜ、、、」
扉の向こう側からジャスが声をかけてきた。
罪人の判決待ちって言う大事な時なのにどうやってここまで来たんだ?
「ごめん、ジャス。止めてくれたのに、、、」
「何はともあれ、何事もなくて良かったぜ。本当ならあそこで口開いた時点で、死刑確定だったかもしれねぇってのにな。」
「マジか、、、」
俺は苦笑いしながら答えた。
マジで首飛ぶとこだったのか、、、
「まぁお前らしいっちゃあ、お前らしいけどな。」
「どう言うことだ?」
「お前、前も上官に逆らって謹慎くらってただろ。正義感っていうか、他人の不利益を見過ごせない奴だったな。ってお前記憶ないんだったか笑笑」
ジャスは笑いながらそう言った。
そうか、、、レオンもそうだったのか、、、
「とはいえ、まだ油断は出来ねぇ。、、、レオン。あのレミッドって大臣、十分に注意しとけ。」
やっぱり何か隠してるのか。
「やっぱり、、、何かあるのか。」
「あぁ、最近きなくせぇことが目立ってきたって兵団の中じゃ噂されてる。何かでっけぇことに手出す気かもしれねぇ。」
なんだろうか。大臣という地位を得てなお、何かを欲しがるほどの野心家。大臣の上、、、、、、
「、、、国か?」
「、、、あながち間違っちゃいないかもな。あいつは、国王の腹心の1人だが、あいつはドレイク家の出だからな。」
「ドレイク家?」
「レミッド・ヴァン・ドレイク、3つある最高位貴族の1つドレイク家の次男。ドレイク家はドレイン一族の分家。つまり王族だ。」
「、、、王族の次男坊が大臣、、、」
「ちなみに、大臣は職業的な最高位だから、王族よりも身分は低い。」
、、、おかしい、、、わざわざ、王族という最高の社会的ステータスを捨ててまで大臣になったんだ?
「、、、わざわざ位を下げてまでやりたいこと、、、」
「俺たちもそれで動いてる。」
「動いてるって?」
「俺たちもわからねぇがレミッドが何かをやらかすのが邪魔な奴がいるんだろう。もっと上か、別の派閥か。
上官方はそれで大忙しだ。」
整理すると、レミッドが何か企んでるのは事実で、それを阻止しようとする派閥が今軍を動かしているってことか。いや全てじゃないんだろう。上官とその部下数名に知らされた極秘事項。、、、ジャスってもしかして結構お偉いさん?
「それしゃべってよかったのかよ。結構重要な話なんじゃないのか?」
「お前はダチだからな!特別だ。」
、、、こいつをこんな機密案件につかせた上官はバカだな。
「でもありがと。おかげで少し話が見えてきた。」
「いいってことよ!、、、気をつけろよ。明日は必ず動きがある。この裁判に何が隠されてるのか、そんなことは知ったこっちゃねぇが、、、ダチの瀕死は一度で十分だ。」
ジャスも心配してくれてるのか、、、
いよいよ明日、全てがわかる。俺を陥れてレミッドが何をするのか。誰がそれを止めたいのか。
、、、なぜ俺なのか。
こんな薄汚えところ、さっさと出てってやる!
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精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
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部長に傷つけられ続けた私
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老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
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10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
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アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
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何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
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