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第十話 満月の夜
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夜襲まで約10日。そのうちにできるだけ村を強化しなければならない。今日から、すぐにでも始める必要がある。
村の強化には人手がいる。そのため村長には、村人への説明をしてもらうことになったーーー
ーーーーーー
ーーー村の中にある広場。中央に井戸があり、それを囲むように家が建っている。
村人が全員集まった頃。村長が台の上から声をかけた。
「皆の者、よく集まってくれた。今回は皆に伝えねばならぬことがある。」
皆んな静かに聞いてくれている。
「その前に、紹介しておこう。新たに依頼を受け、この村に来てくれた冒険者様、レオン殿だ。」
紹介を受け、前に出る。
みんなの顔がよく見える。皆どこか虚ろな表情をしていた。
「C級冒険者のレオンだ。今の状況は、村長から聞いた。」
軽く話し、村長に本題に入ってもらう。
「これから我々は、10日のうちに村の強化を行うことになった。10日というのは、次の夜襲までの、予想できる日数である。その間に、柵を強化し、堀を作る。家の強化も必要だ。詳しい内容は、レオン殿から伝達がある。辛いのはわかる、、、家族や恋人。大切なものを失った悲しみは、計り知れないだろう。しかし、そこをひとつ、頑張ってはくれないか、、、」
村人に覇気はない。
村の全員が諦めている証拠だ。
だが、協力してくれなければ困る。
何か拠り所が有ればいいのだが、、、
ーーー説明を終えて、皆んな解散していく。やはり、あまり好評とは言えない。反応は皆同じだった。
「レオン殿。」
村長が声をかけてきた。
「先程の無礼、お詫び申し上げます。」
あの男のことか。
「別に気にしてないさ。俺にも非があったから。」
「ありがとうございます、、、あの男、トラハムは先の襲撃で妻を亡くしてしまい、幼い娘も怪我をしています、、、」
、、、そうだったのか、、、言いすぎたかもしれない。
「、、、レオン殿。先程も、狼のことを聞いていましたな?」
「?、あぁ、そうだけど?」
「ならば、トラハムのところを訪ねてやってください。彼はかつて冒険者を目指しており、魔物の知識なども持ちわせております故、きっと力になれるかと、、、」
「!、そりゃありがたい!ぜひ伺わせてもらうよ。」
魔物の情報がわかるかもしれない!
そうなれば、対策もさらに立てることができるーーー
ーーーーーー
ーーーその後、村強化のため、村人への指示を出した。簡単に言えば、地面に丸太を刺して並べるだけだが、元々あった柵よりかは、効果が期待できる。
周りには堀を敷き、村の入り口のみを開放して置いた。こうすれば、もし周りから敵に囲まれても正面の入り口だけを警戒すれば、対処がしやすいからだ。
あらかたの作業をその日に終え、俺はトラハムのところへやってきていた。狼の情報を得ることが出来るかもしれないからだ。
コンコン、、、
家の扉をノックする。
「はーい。」
聞きなれない声がする。昼間の声ではない。
ガチャ、、、
チラ、、、
扉を開けて、顔を見せる。
そこにいたのは幼い少女だった。
「えっと、、、」
少女は困った様に俺を見上げていた。
すると、少女の後ろから男が顔を見せた。トラハムだ。
「あっ、レオンさん。」
トラハムが俺の声を呼ぶ。
「、、、昼間は、申し訳なかった。なにぶん余裕がなかったもので、、、」
「いや、大丈夫です。俺も言いすぎたところがあったから。」
トラハムは良かったと言わんばかりの表情をした。
「ところで、何の用でここへ?」
トラハムが俺に質問してきた。
「こんな時間にすまない、トラハムさん。あなたに聞いておきたいことがあるんだが。」
もう時間は夜になっていた。
「そうですか。、、、では少々お待ちください。娘を寝かせてきますので。」
トラハムは、そう言って俺を招き入れた。彼は娘を抱き上げて、部屋の奥へと消えていったーーー
ーーー「それで、どの様なことを?」
戻ってきたトラハムが聞いてきた。
「実は、村長に聞いたんだが、トラハムさん。あなたが冒険者を志していたとか。」
「あぁ、そのことですか。はい。たしかに昔、冒険者になりたかった時期はあります。ただ、実力がなくて、早々に諦めましたけどね。」
彼は苦笑いをしながら答えた。
同じ夢半ばで諦めた人間として、気持ちはわかる。
「知識はあると聞いた。」
「はい。色々調べしたからね、大抵の魔物なら見分けがつきます。と言っても、絶対というわけではありませんが、、、」
「それでいいんだ。俺は全くと言っていいほど、魔物に関しての知識がない。手を貸してくれないか?」
俺は頭を下げて頼んだ。
その様子に、彼もびっくりしていた。
「、、、わかりました。私でよければ力になります!」
潔く聞き入れてくれた。
「すまない、、、早速なんだが、あんたから見て、狼はどうだった?普通の狼か?それとも魔物の一種か?」
「そうですね、、、」
トラハムは少し考えた後、意見を聞かせてくれた。
「、、、恐らく、魔物ではないと思います。」
「その理由は?」
「、、、レオンさん、魔物と獣の違い、わかりますか?」
唐突に、そう聞いてきた。
「、、、いや、わからない。」
「魔物は獣が、より多くの魔力を得た個体、又はそういう種族です。獣は三段階に分けられます。
「獣」「魔物」「魔獣」。獣は通常の動物です。魔物は獣よりも更に多くの魔力量を持っているもの、又はそういう種族です。こいつらは知恵を付けている奴もいます。魔獣は魔物よりもさらに多くの魔力量を持っているものです。こいつらは知能や能力が、さらに突出していて、まさに化け物です。」
「なるほど。」
「用は魔力の多さです。私、索敵のスキルを持っているので、大体分かったんです。あの魔力量は通常の狼と大差ないものでした。」
「?、なんで索敵スキルでわかるんだ?」
「索敵スキルは、周辺の魔力を感知して、対象を見つけるスキルです。魔力を周辺との差で認識しているので、それを用いれば相手の魔力量を可視化することができるんです。」
すんげーこと聞いたかも、、、
それってド○ゴン○ールのスカウターみたいなことだよね⁉︎すごくね⁉︎
「ただ、認識阻害とかされてると、あまり役に立たないんですがね。」
なるほど、、、
だけどまぁ有って損はないだろう。今度やってみよ。
実際に見た人の意見だ、恐らく魔物の類ではないんだろう。
「なるほど、、、とはいえ、油断はしない様にしたほうがいいな。想定外の事態ってのもあると思う。」
俺がそう言うと、トラハムが顎に手を当て、何かを考えていた。
ふと顔を上げる。
「なら、、、夜襲の時、一緒に居させてはもらえないでしょうか?」
予想外の言葉に若干驚いた。
「もし相手がなんらかの方法で姿を偽っているのなら、私の知識があった方がいいと思います。」
、、、たしかに、彼の言うことは的を射ている。
想定外といっても、それに気付かない様では話にならない。状況把握は何よりも優先すべきことだ。
、、、だが、、、
「、、、だけどそれはあまりに危険が大きい。今は、相手が普通の狼という想定で準備をしている。もし想定外の事態になったら、それこそ守れるかどうか、、、」
「それでしたら大丈夫です。」
俺の不安とは裏腹に、トラハムは自信ありげだった。
「諦めたとはいえ、俺も元冒険者志望。ある程度の戦闘ノウハウならわかっているつもりです。」
、、、どうしたものか、、、
確かにトラハムが居るのと居ないのじゃ、急な事態に対処できる可能性が格段に上がる。
しかし、本当にいいのだろうか?
あくまで彼は一般人。それこそ、対処に遅れるのは彼の方かもしれない。そんな危険は、背負わせられない。
しかし、、、
「、、、わかった。一緒に来てくれ。ただし、もし想定外の事態に陥ったら、すぐ引いて、家に隠れること。約束してくれ。」
「わかりました。」
俺がそう言うと、トラハムは快く聞き入れてくれた。
ーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーそれから9日後。村の強化もある程度終わり、準備も整った。
村の周りは丸太が囲い、村の家も、窓やドアなどに木の板が貼り付けられている。
この9日間、俺は夜にずっと巡回して回っていた。
昼夜逆転気味で、昼間は眠くてしょうがなかった。
だが、昨日までの夜襲は無かった。
昨日までは、、、
ふと上を見上げると、夜空に星が煌めいていた。東京の空じゃ、まず拝めない様な満天の星空がそこにあった。星の位置は元の世界と同じだろうか?星座なんて覚えてないからわからないが、、、
だが、元の世界と変わらないもの。少し大きいが、その姿形は全く同じだった。夜の世界を薄く照らす。
古来より人は、それを見て風流を思い、また、願いを込めたと言う。
ーーー「今日は満月か、、、」ーーー
村の強化には人手がいる。そのため村長には、村人への説明をしてもらうことになったーーー
ーーーーーー
ーーー村の中にある広場。中央に井戸があり、それを囲むように家が建っている。
村人が全員集まった頃。村長が台の上から声をかけた。
「皆の者、よく集まってくれた。今回は皆に伝えねばならぬことがある。」
皆んな静かに聞いてくれている。
「その前に、紹介しておこう。新たに依頼を受け、この村に来てくれた冒険者様、レオン殿だ。」
紹介を受け、前に出る。
みんなの顔がよく見える。皆どこか虚ろな表情をしていた。
「C級冒険者のレオンだ。今の状況は、村長から聞いた。」
軽く話し、村長に本題に入ってもらう。
「これから我々は、10日のうちに村の強化を行うことになった。10日というのは、次の夜襲までの、予想できる日数である。その間に、柵を強化し、堀を作る。家の強化も必要だ。詳しい内容は、レオン殿から伝達がある。辛いのはわかる、、、家族や恋人。大切なものを失った悲しみは、計り知れないだろう。しかし、そこをひとつ、頑張ってはくれないか、、、」
村人に覇気はない。
村の全員が諦めている証拠だ。
だが、協力してくれなければ困る。
何か拠り所が有ればいいのだが、、、
ーーー説明を終えて、皆んな解散していく。やはり、あまり好評とは言えない。反応は皆同じだった。
「レオン殿。」
村長が声をかけてきた。
「先程の無礼、お詫び申し上げます。」
あの男のことか。
「別に気にしてないさ。俺にも非があったから。」
「ありがとうございます、、、あの男、トラハムは先の襲撃で妻を亡くしてしまい、幼い娘も怪我をしています、、、」
、、、そうだったのか、、、言いすぎたかもしれない。
「、、、レオン殿。先程も、狼のことを聞いていましたな?」
「?、あぁ、そうだけど?」
「ならば、トラハムのところを訪ねてやってください。彼はかつて冒険者を目指しており、魔物の知識なども持ちわせております故、きっと力になれるかと、、、」
「!、そりゃありがたい!ぜひ伺わせてもらうよ。」
魔物の情報がわかるかもしれない!
そうなれば、対策もさらに立てることができるーーー
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ーーーその後、村強化のため、村人への指示を出した。簡単に言えば、地面に丸太を刺して並べるだけだが、元々あった柵よりかは、効果が期待できる。
周りには堀を敷き、村の入り口のみを開放して置いた。こうすれば、もし周りから敵に囲まれても正面の入り口だけを警戒すれば、対処がしやすいからだ。
あらかたの作業をその日に終え、俺はトラハムのところへやってきていた。狼の情報を得ることが出来るかもしれないからだ。
コンコン、、、
家の扉をノックする。
「はーい。」
聞きなれない声がする。昼間の声ではない。
ガチャ、、、
チラ、、、
扉を開けて、顔を見せる。
そこにいたのは幼い少女だった。
「えっと、、、」
少女は困った様に俺を見上げていた。
すると、少女の後ろから男が顔を見せた。トラハムだ。
「あっ、レオンさん。」
トラハムが俺の声を呼ぶ。
「、、、昼間は、申し訳なかった。なにぶん余裕がなかったもので、、、」
「いや、大丈夫です。俺も言いすぎたところがあったから。」
トラハムは良かったと言わんばかりの表情をした。
「ところで、何の用でここへ?」
トラハムが俺に質問してきた。
「こんな時間にすまない、トラハムさん。あなたに聞いておきたいことがあるんだが。」
もう時間は夜になっていた。
「そうですか。、、、では少々お待ちください。娘を寝かせてきますので。」
トラハムは、そう言って俺を招き入れた。彼は娘を抱き上げて、部屋の奥へと消えていったーーー
ーーー「それで、どの様なことを?」
戻ってきたトラハムが聞いてきた。
「実は、村長に聞いたんだが、トラハムさん。あなたが冒険者を志していたとか。」
「あぁ、そのことですか。はい。たしかに昔、冒険者になりたかった時期はあります。ただ、実力がなくて、早々に諦めましたけどね。」
彼は苦笑いをしながら答えた。
同じ夢半ばで諦めた人間として、気持ちはわかる。
「知識はあると聞いた。」
「はい。色々調べしたからね、大抵の魔物なら見分けがつきます。と言っても、絶対というわけではありませんが、、、」
「それでいいんだ。俺は全くと言っていいほど、魔物に関しての知識がない。手を貸してくれないか?」
俺は頭を下げて頼んだ。
その様子に、彼もびっくりしていた。
「、、、わかりました。私でよければ力になります!」
潔く聞き入れてくれた。
「すまない、、、早速なんだが、あんたから見て、狼はどうだった?普通の狼か?それとも魔物の一種か?」
「そうですね、、、」
トラハムは少し考えた後、意見を聞かせてくれた。
「、、、恐らく、魔物ではないと思います。」
「その理由は?」
「、、、レオンさん、魔物と獣の違い、わかりますか?」
唐突に、そう聞いてきた。
「、、、いや、わからない。」
「魔物は獣が、より多くの魔力を得た個体、又はそういう種族です。獣は三段階に分けられます。
「獣」「魔物」「魔獣」。獣は通常の動物です。魔物は獣よりも更に多くの魔力量を持っているもの、又はそういう種族です。こいつらは知恵を付けている奴もいます。魔獣は魔物よりもさらに多くの魔力量を持っているものです。こいつらは知能や能力が、さらに突出していて、まさに化け物です。」
「なるほど。」
「用は魔力の多さです。私、索敵のスキルを持っているので、大体分かったんです。あの魔力量は通常の狼と大差ないものでした。」
「?、なんで索敵スキルでわかるんだ?」
「索敵スキルは、周辺の魔力を感知して、対象を見つけるスキルです。魔力を周辺との差で認識しているので、それを用いれば相手の魔力量を可視化することができるんです。」
すんげーこと聞いたかも、、、
それってド○ゴン○ールのスカウターみたいなことだよね⁉︎すごくね⁉︎
「ただ、認識阻害とかされてると、あまり役に立たないんですがね。」
なるほど、、、
だけどまぁ有って損はないだろう。今度やってみよ。
実際に見た人の意見だ、恐らく魔物の類ではないんだろう。
「なるほど、、、とはいえ、油断はしない様にしたほうがいいな。想定外の事態ってのもあると思う。」
俺がそう言うと、トラハムが顎に手を当て、何かを考えていた。
ふと顔を上げる。
「なら、、、夜襲の時、一緒に居させてはもらえないでしょうか?」
予想外の言葉に若干驚いた。
「もし相手がなんらかの方法で姿を偽っているのなら、私の知識があった方がいいと思います。」
、、、たしかに、彼の言うことは的を射ている。
想定外といっても、それに気付かない様では話にならない。状況把握は何よりも優先すべきことだ。
、、、だが、、、
「、、、だけどそれはあまりに危険が大きい。今は、相手が普通の狼という想定で準備をしている。もし想定外の事態になったら、それこそ守れるかどうか、、、」
「それでしたら大丈夫です。」
俺の不安とは裏腹に、トラハムは自信ありげだった。
「諦めたとはいえ、俺も元冒険者志望。ある程度の戦闘ノウハウならわかっているつもりです。」
、、、どうしたものか、、、
確かにトラハムが居るのと居ないのじゃ、急な事態に対処できる可能性が格段に上がる。
しかし、本当にいいのだろうか?
あくまで彼は一般人。それこそ、対処に遅れるのは彼の方かもしれない。そんな危険は、背負わせられない。
しかし、、、
「、、、わかった。一緒に来てくれ。ただし、もし想定外の事態に陥ったら、すぐ引いて、家に隠れること。約束してくれ。」
「わかりました。」
俺がそう言うと、トラハムは快く聞き入れてくれた。
ーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーそれから9日後。村の強化もある程度終わり、準備も整った。
村の周りは丸太が囲い、村の家も、窓やドアなどに木の板が貼り付けられている。
この9日間、俺は夜にずっと巡回して回っていた。
昼夜逆転気味で、昼間は眠くてしょうがなかった。
だが、昨日までの夜襲は無かった。
昨日までは、、、
ふと上を見上げると、夜空に星が煌めいていた。東京の空じゃ、まず拝めない様な満天の星空がそこにあった。星の位置は元の世界と同じだろうか?星座なんて覚えてないからわからないが、、、
だが、元の世界と変わらないもの。少し大きいが、その姿形は全く同じだった。夜の世界を薄く照らす。
古来より人は、それを見て風流を思い、また、願いを込めたと言う。
ーーー「今日は満月か、、、」ーーー
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『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
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