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第十五話 友
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ーーー"何の用だ、人間。"ーーー
すげぇ、、、ドラゴンだ。飛龍だ。
信じられない、、、ゲームやアニメで見た存在が、そのままの姿でそこにいる。
そんででかい!、、、威圧感半端ない、、、
4、、、いや、5メートルはある。その大きさから、視界はその体と翼で覆われている。
「、、、し、喋れるのか、、、」
何聞いてんだ俺は⁉︎そこじゃないだろ、、、
"貴様、、、我を何と心得る。知恵と力を司る、誇り高き「龍」であるぞ。"
「、、、あ、いや、、、そうだな。悪い、気が動転してた、、、」
そりゃ怒るだろ普通。お前言葉通じるんか?なんて言ってる様なもんだ。
"フン、、、まぁよい。さて人間、質問に答えろ。何の用があってここに来た?我が住処を荒らしに来たのであれば、ただでは済まさんぞ、、、"
警戒なのか、威嚇なのか。背筋が凍りつく様な感覚だった。
「い、いやいや!別にそういう訳じゃない。俺は山越えしようとしてただけだ、、、」
弁明はした。
しかし、龍の機嫌はまだ悪いままだった。
"、、、それを我に信じろと?"
「?」
"我は何度も見てきた。我が同胞が蝕まれる姿を。"
どういうことだ、、、?
"知らぬとは言わせん。貴様ら人間は、我らの住処を奪い、財を奪い、命まで奪おうとする。分かるか?矮小なる人間如きに全てを奪われる屈辱を。"
その声は威嚇から苦しみへと変わっていった。
"我らの足元にも及ばぬ貴様らに、殺され、その身体さえも利用されるこの屈辱を!"
何があったか知らないが、相当人間がお嫌いな様だ、、、
"人間が龍の住処に立ち入るのは、大抵略奪の類だ。
それを踏まえても貴様、そんな戯言を信じると思っているのかァ‼︎"
逆上と共に翼を広げ、雄叫びをあげる龍。声に鼓膜が破られそうだ。
「、、、そんなこと言っても、俺はここに龍がいるだなんて知らなかったし!本当に山越えしようとしてただけだ!」
俺も必死になって、大声で訴える。
"やかましい!矮小な略奪者め!細切れにして喰ろうてやる!"
その瞬間、龍は大きく飛翔し、上空から突進してきた。
「ちょ、、、おい!嘘だろッ、、、」
どうしてこんな事に、、、
だが、今はどうにかして避けないと。
「「スキル:加速」!」
ズドォォン、、、
地響きがすごい。衝撃波も、突風も、尋常じゃない。
「加速」で何とか突進を避けたものの、1秒遅れれば即死どころじゃ済まなかった。
"ほう、、、避けるか、、、"
煙の向こうからゆらりと影が起き上がり、そう言葉をかけてきた。
"だが、、、これは避けれまいッ!"
シュゥゥゥ、、、
土煙の中から、シュゥゥゥ、、、という音が聞こえると同時に、オレンジ色の光が見えた。
これは、、、まさか、、、!
次の瞬間、煙の中から火柱がこっちに伸びてきた。
ゴォォォ‼︎‼︎
「うっ、、、」
いきなりの事に、俺は「加速」を使う暇がなかった。
横に飛んで回避する。だが、奇跡的にかする程度で済んだ。
事後、向こうを見ると、煙は先ほどの攻撃で晴れていた。そして、龍の口から煙が出ていたのだ。
、、、ブレス⁉︎
"これも避けるか、、、ただの愚か者ではない様だな。"
何なんだ全く、、、
とりあえず、剣を抜いておく。
しかし、この安易な行動が裏目に出てしまう。
"やっとやる気になったか、、、"
ヤバイ!敵対行動と認識されてしまった!
めっちゃ睨んでるよ、、、こわー!どうするよマジ、、、
逃げるか?いやまず逃げれるのか?絶対飛んでくるぞ
アイツ、、、。
どうにかして逃げなきゃ。逃げなきゃ。逃げ、、、逃げ、、、
ーーー、、、前もそうだった、、、ーーー
ーーー前世でも、逃げて。逃げて。逃げて、、、。
目標を立てたって、前に壁ができるたびに避けて。
乗り越えるべき壁も、少し努力すれば手が届く壁も、無理だって避け続けて。
気づいたら、目標の遥か下に立ってた、、、
やりたいことだってあった。その方向を向いてるはずなのに、なぜか行き着く場所は、いつも斜め下だった。
中途半端な努力に夢。
だから周りに流されて、ついには夢が叶ったかどうかすらわからなくなったーーー
、、、冷静じゃなかったかもしれない。
前世とは状況が違う。死ぬかもしれない。
でも、ここを正面から乗り切れば、壁を越えられる気がした。
そう思ったら、妙にワクワクしてきた。
初めて、俺は俺のことを好きになれるかもしれない、、、
、、、決めた。
前世から止まったままの自分を変えてやる。
やるべきことはただ一つ。此奴に勝つ、、、!
ーーー俺は今日、前進するーーー
剣を構えた。
龍は地面を蹴り、突進してきた。
やってやるぜ、、、やってやる!
俺は大きく振りかぶり、奴を引きつけた。
ーー「加速」‼︎ーー
奴の鼻先が、間合いに入った瞬間。「加速」と共に、思いっきり剣を振り下ろした。
グギァァン!、、、
鉄と鉄が擦れ合う様な音がした。よく見ると、此奴の鱗には、金属に見られる様な光沢があった。音と見た目から、その強度がうかがえる。
その瞬間。火花を散らしながら龍の頭が地面にめり込んだ。
"フンッ!"
しかし、奴は勢いが死なないうちに、上へ頭を振り上げた。
その力に俺は、上へ吹っ飛ばされた。
「、、、ッチ。」
馬鹿みたいに硬い。こりゃ斬撃は得策じゃないな。
と、なると。斬撃より貫通力のある刺突か、魔術だが、、、
俺は此奴に効きそうな魔術を持ってない。
フレイムスピアじゃ威力が足りない気がする。
関節を狙って刺突。あとは、よじ登って滅多刺しとかか、、、
ドラゴンならモ○ハンで、いくらでも相手してきた。
まぁ、ゲーム通りに行けば苦労はないけどな、、、
なんとか着地したが、奴の口は、また光を帯び始めていた。
ブレスか、、、
だが、ここだ!
ダッ!、、、
「加速」で一気に距離を詰める。
"⁉︎、なんだと⁉︎"
アイツも驚いている様だ。
遠距離じゃ勝機はない。一度撃たれれば、俺は回避するしか手がないからだ。
しかし、そこにこそ"スキ"がある。
遠距離攻撃中は近距離が一番脆くなる。
そして、アイツのブレスには"溜め"がある。
発動モーションは見切るためだけのものじゃない、、、
奴の目と鼻の先に跳んだ。
大きく口を開けてきた奴に対して、鼻先を蹴り飛ばし、奴の頭の上に来た。
そして俺は、剣を垂直に構え、思いっきり突き下ろした。
「ラァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
ゴゥン!、、、
しかし、剣は鱗と触れた瞬間、鈍い音と共に弾き飛ばされた。
「、、、嘘だろ⁉︎」
こんなに硬いのかよ、、、
こんなに、、、
クッソ、、、
、、、
スタッ、、、
、、、?、なんだ?何も、、、してこない?
無事に地面に着地してしまった。
てっきり何か仕掛けてくるものかと思っていたが、、、
こりゃどういうことだ?
上を見上げても、奴は止まったままだった。
俺が困惑していると、奴は質問してきた。
"、、、おい人間!貴様冒険者であろう?階級を言え。"
「ハァハァ、、、C級、、、」
息切れをしつつ答える。
なぜ龍が、冒険者の階級なんぞ知りたがるんだ?
"「C」だと?嘘をつくな!"
、、、しつこいな、人間不信にも程があるぞ。
「嘘じゃない!何なんださっきから!」
"、、、C級が龍の討伐?いや調査という線も、、、しかし、そんな階級に回るものか?、、、そもそもまだバレてはいないはず、、、"
ボソボソと何かを呟いている。
頭の中で独り言するって、、、結構抜けてるのか?
そうしていると、龍はじっとこちらを見て来ていた。
そして、こう言った。
"本当にC級なのだな?"
何度聞くんだそれ⁉︎
「だからそうだっつってんだろ!しつこいぞ本当に!」
あまりのしつこさに若干キレ気味になってしまった。また逆上させてしまっただろうか?
だが、龍は怒るどころか、冷静に俺に語りかけてきた。
"、、、あれを避ける者がC級とは思えぬが、、、偽りはない様だな、、、。いきなり仕掛けて、すまなかった。"
意外な事に、龍がとった行動は謝罪だった。
何がどうなってるんだ本当、、、
龍は続けた。
"人間にあったのも久方ぶり故、我も冷静ではなかった。そもそも、龍の討伐に一人で赴く馬鹿などいるはずない。"
何だかよくわからないが、一応誤解は解けたみたいだ。
「、、、わかってくれたみたいでよかった。だけどよ、何であんなに殺気だって襲って来たんだ、、、」
龍は黙っている。
「、、、無断で住処に立ち入った事なら、悪かった。
でも、本当に知らなかったんだ。ここがあんたの家だったなんて。」
"龍とは元来、そういうものだからだ、、、"
すると、龍は静かに語り出した。
"我々はそもそも、平穏に暮らしていたいだけなのだ。お前たち人間と同じようにな。だが、人間は欲に駆られ、我々の巣に無断で踏み入っては略奪し、子を攫い、時には命まで奪う。よって、古来より龍と人間は、相容れぬ存在なのだ。"
略奪、、、そうだったのか。
こいつは俺個人ではなく、人間そのものを恨んでいるんだ。
そりゃ怒るわな。
"人間は愚かだ。龍と人間の力の差は歴然。何度返り討ちにしても、何度村を焼いても、何度国を滅ぼしても。また欲に駆られ、我らの住処に入ってくる。それを愚かと言わず何という。"
、、、俺は、相変わらずこの世界を知らない。
こんなにも苦しみを抱いている奴が居ても、俺はその
事象も知らない。
沈黙を返すことしかできない、、、
そんな風に俺が黙っていると、龍はまた喋り出した。
"、、、だが、そうでない者もいたのだ、、、"
ボソボソと小さい声だった。何かを懐かしむようなその声は、何かの影を見ているようだった。
「、、、そうでない者?」
質問してみた。
答えが知りたかったわけじゃないが、こいつのことを少し知りたいと思った。
そうすると龍は、少し明るくなったように話した。
"、、、我は昔、冒険者だったのだ。"
「、、、えぇ⁉︎冒険者って、え⁉︎」
びっくりして、大声を出してしまった。
でも、そうか。それなら、冒険者について詳しいのも納得だ。
"あぁ、ずっと昔の話だ。仲間と共に冒険し、あらゆる事をしてきた。その者たちは、我が見てきた人間とは全く違う者たちだった。"
「今、その仲間たちは?」
"、、、もういない。皆な。残ったのは我だけだ。"
不意に聞いてしまったが、悪いことを聞いたかもしれない。
「、、、そうか、悪かった。」
"気にするな。何せ、もう900年も前の話だ。"
「きゅ、900年⁉︎」
またしても大声を出してしまった、、、
そんな俺の顔を見て、龍は捕捉した。
"龍は平均して1000年は生きるからな。"
「、、、っていうとあんた、もう90歳、、、」
"人間で言えば、そうなるな。"
「もうジジイじゃねぇか‼︎」
"ハッハッハッ‼︎確かになぁ!"
俺がそう突っ込むと、龍は大きく口を広げて笑った。
そして、しんみりとした表情で、こう言った。
"、、、お前は似ているのだ。仲間の雰囲気にな。だから、お前を信じたのだ。"
「、、、そりゃ、嬉しいね。」
軽く返したが、嬉しいのは事実だ。
他人の好意的な人物に似ていると言われることは、誰だって嬉しいはずだ。
「、、、寂しくないのか?」
不毛な質問だったと思う。だが、900年という時間はあまりにも長すぎて、俺には想像できないのだ。
"、、、900年だからな。流石に慣れたものよ。、、、だが"
龍は続ける。
"だが、時々思い出すのだ。あの輝かしい日々を。彼らと旅した、鮮烈な日々を。それは、人間であっても同じであろう?"
確かに。過ぎた日々を思い返すのも、楽しかった思い出を大切にするのも、全ての生き物が平等に持っている感情だ。龍でも、人間でも、、、
「、、、じゃあよ、あんた俺の仲間にならねぇか?」
"⁉︎"
龍は驚いていた。
自分でも、とんでもないことを言っているのはわかってる。もしかしたら、怒られるかもしれない。
だけど、、、一人は辛いもんだ。
「、、、一人は辛ェからよ。」
だが、龍は怒るどころか、笑ってみせた。
"ハッハッハッハッハッ!"
「?」
"本当に愉快なやつよお前は。だが、アイツもそう言って、半ば強引だったが。そうやって仲間になったな。"
またしても感慨深そうに笑っている。
"だが、すまんな。我も全盛期は過ぎた。昔は人化して冒険したが、今は魔力量も低下し、一日中人化するのも厳しくなってきた。もう、死に場所を探して彷徨うのみの老龍だ。すまないが、我に冒険はもう無理だ。"
「、、、そうか、、、」
全盛期はどれだけ強かったんだ?という疑問もあったが、それでもやはり、龍でも老いには敵わないということか、、、
「、、、じゃあ、友達だ!仲間じゃなくても友達がいれば、寂しさだって少しは和らぐんじゃないか?」
龍は唖然としていた。
そういえば龍の友達ってどういうやつなんだろう。やっぱり龍なのかな?
"、、、フフッ、、、わかった。そうしよう。"
龍は笑っていた。
口元は変わっていないが、言葉には、確かに喜びの感情があった。
「じゃあ!今日から俺とお前は友達だ!宜しく!、、、えっと、、、」
あ、名前聞いてなかった。
それを察したのか、龍は己の名を口にした。
ーーー"我が名はルグリッド。聖龍である。"ーーー
聖龍!、、、確かに白いし、そんな感じする。
「、、、レオンだ。宜しく!」
"あぁ、我が友レオンよ。"
ーーーこうしてレオンは、聖龍と友になった。ーーー
すげぇ、、、ドラゴンだ。飛龍だ。
信じられない、、、ゲームやアニメで見た存在が、そのままの姿でそこにいる。
そんででかい!、、、威圧感半端ない、、、
4、、、いや、5メートルはある。その大きさから、視界はその体と翼で覆われている。
「、、、し、喋れるのか、、、」
何聞いてんだ俺は⁉︎そこじゃないだろ、、、
"貴様、、、我を何と心得る。知恵と力を司る、誇り高き「龍」であるぞ。"
「、、、あ、いや、、、そうだな。悪い、気が動転してた、、、」
そりゃ怒るだろ普通。お前言葉通じるんか?なんて言ってる様なもんだ。
"フン、、、まぁよい。さて人間、質問に答えろ。何の用があってここに来た?我が住処を荒らしに来たのであれば、ただでは済まさんぞ、、、"
警戒なのか、威嚇なのか。背筋が凍りつく様な感覚だった。
「い、いやいや!別にそういう訳じゃない。俺は山越えしようとしてただけだ、、、」
弁明はした。
しかし、龍の機嫌はまだ悪いままだった。
"、、、それを我に信じろと?"
「?」
"我は何度も見てきた。我が同胞が蝕まれる姿を。"
どういうことだ、、、?
"知らぬとは言わせん。貴様ら人間は、我らの住処を奪い、財を奪い、命まで奪おうとする。分かるか?矮小なる人間如きに全てを奪われる屈辱を。"
その声は威嚇から苦しみへと変わっていった。
"我らの足元にも及ばぬ貴様らに、殺され、その身体さえも利用されるこの屈辱を!"
何があったか知らないが、相当人間がお嫌いな様だ、、、
"人間が龍の住処に立ち入るのは、大抵略奪の類だ。
それを踏まえても貴様、そんな戯言を信じると思っているのかァ‼︎"
逆上と共に翼を広げ、雄叫びをあげる龍。声に鼓膜が破られそうだ。
「、、、そんなこと言っても、俺はここに龍がいるだなんて知らなかったし!本当に山越えしようとしてただけだ!」
俺も必死になって、大声で訴える。
"やかましい!矮小な略奪者め!細切れにして喰ろうてやる!"
その瞬間、龍は大きく飛翔し、上空から突進してきた。
「ちょ、、、おい!嘘だろッ、、、」
どうしてこんな事に、、、
だが、今はどうにかして避けないと。
「「スキル:加速」!」
ズドォォン、、、
地響きがすごい。衝撃波も、突風も、尋常じゃない。
「加速」で何とか突進を避けたものの、1秒遅れれば即死どころじゃ済まなかった。
"ほう、、、避けるか、、、"
煙の向こうからゆらりと影が起き上がり、そう言葉をかけてきた。
"だが、、、これは避けれまいッ!"
シュゥゥゥ、、、
土煙の中から、シュゥゥゥ、、、という音が聞こえると同時に、オレンジ色の光が見えた。
これは、、、まさか、、、!
次の瞬間、煙の中から火柱がこっちに伸びてきた。
ゴォォォ‼︎‼︎
「うっ、、、」
いきなりの事に、俺は「加速」を使う暇がなかった。
横に飛んで回避する。だが、奇跡的にかする程度で済んだ。
事後、向こうを見ると、煙は先ほどの攻撃で晴れていた。そして、龍の口から煙が出ていたのだ。
、、、ブレス⁉︎
"これも避けるか、、、ただの愚か者ではない様だな。"
何なんだ全く、、、
とりあえず、剣を抜いておく。
しかし、この安易な行動が裏目に出てしまう。
"やっとやる気になったか、、、"
ヤバイ!敵対行動と認識されてしまった!
めっちゃ睨んでるよ、、、こわー!どうするよマジ、、、
逃げるか?いやまず逃げれるのか?絶対飛んでくるぞ
アイツ、、、。
どうにかして逃げなきゃ。逃げなきゃ。逃げ、、、逃げ、、、
ーーー、、、前もそうだった、、、ーーー
ーーー前世でも、逃げて。逃げて。逃げて、、、。
目標を立てたって、前に壁ができるたびに避けて。
乗り越えるべき壁も、少し努力すれば手が届く壁も、無理だって避け続けて。
気づいたら、目標の遥か下に立ってた、、、
やりたいことだってあった。その方向を向いてるはずなのに、なぜか行き着く場所は、いつも斜め下だった。
中途半端な努力に夢。
だから周りに流されて、ついには夢が叶ったかどうかすらわからなくなったーーー
、、、冷静じゃなかったかもしれない。
前世とは状況が違う。死ぬかもしれない。
でも、ここを正面から乗り切れば、壁を越えられる気がした。
そう思ったら、妙にワクワクしてきた。
初めて、俺は俺のことを好きになれるかもしれない、、、
、、、決めた。
前世から止まったままの自分を変えてやる。
やるべきことはただ一つ。此奴に勝つ、、、!
ーーー俺は今日、前進するーーー
剣を構えた。
龍は地面を蹴り、突進してきた。
やってやるぜ、、、やってやる!
俺は大きく振りかぶり、奴を引きつけた。
ーー「加速」‼︎ーー
奴の鼻先が、間合いに入った瞬間。「加速」と共に、思いっきり剣を振り下ろした。
グギァァン!、、、
鉄と鉄が擦れ合う様な音がした。よく見ると、此奴の鱗には、金属に見られる様な光沢があった。音と見た目から、その強度がうかがえる。
その瞬間。火花を散らしながら龍の頭が地面にめり込んだ。
"フンッ!"
しかし、奴は勢いが死なないうちに、上へ頭を振り上げた。
その力に俺は、上へ吹っ飛ばされた。
「、、、ッチ。」
馬鹿みたいに硬い。こりゃ斬撃は得策じゃないな。
と、なると。斬撃より貫通力のある刺突か、魔術だが、、、
俺は此奴に効きそうな魔術を持ってない。
フレイムスピアじゃ威力が足りない気がする。
関節を狙って刺突。あとは、よじ登って滅多刺しとかか、、、
ドラゴンならモ○ハンで、いくらでも相手してきた。
まぁ、ゲーム通りに行けば苦労はないけどな、、、
なんとか着地したが、奴の口は、また光を帯び始めていた。
ブレスか、、、
だが、ここだ!
ダッ!、、、
「加速」で一気に距離を詰める。
"⁉︎、なんだと⁉︎"
アイツも驚いている様だ。
遠距離じゃ勝機はない。一度撃たれれば、俺は回避するしか手がないからだ。
しかし、そこにこそ"スキ"がある。
遠距離攻撃中は近距離が一番脆くなる。
そして、アイツのブレスには"溜め"がある。
発動モーションは見切るためだけのものじゃない、、、
奴の目と鼻の先に跳んだ。
大きく口を開けてきた奴に対して、鼻先を蹴り飛ばし、奴の頭の上に来た。
そして俺は、剣を垂直に構え、思いっきり突き下ろした。
「ラァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
ゴゥン!、、、
しかし、剣は鱗と触れた瞬間、鈍い音と共に弾き飛ばされた。
「、、、嘘だろ⁉︎」
こんなに硬いのかよ、、、
こんなに、、、
クッソ、、、
、、、
スタッ、、、
、、、?、なんだ?何も、、、してこない?
無事に地面に着地してしまった。
てっきり何か仕掛けてくるものかと思っていたが、、、
こりゃどういうことだ?
上を見上げても、奴は止まったままだった。
俺が困惑していると、奴は質問してきた。
"、、、おい人間!貴様冒険者であろう?階級を言え。"
「ハァハァ、、、C級、、、」
息切れをしつつ答える。
なぜ龍が、冒険者の階級なんぞ知りたがるんだ?
"「C」だと?嘘をつくな!"
、、、しつこいな、人間不信にも程があるぞ。
「嘘じゃない!何なんださっきから!」
"、、、C級が龍の討伐?いや調査という線も、、、しかし、そんな階級に回るものか?、、、そもそもまだバレてはいないはず、、、"
ボソボソと何かを呟いている。
頭の中で独り言するって、、、結構抜けてるのか?
そうしていると、龍はじっとこちらを見て来ていた。
そして、こう言った。
"本当にC級なのだな?"
何度聞くんだそれ⁉︎
「だからそうだっつってんだろ!しつこいぞ本当に!」
あまりのしつこさに若干キレ気味になってしまった。また逆上させてしまっただろうか?
だが、龍は怒るどころか、冷静に俺に語りかけてきた。
"、、、あれを避ける者がC級とは思えぬが、、、偽りはない様だな、、、。いきなり仕掛けて、すまなかった。"
意外な事に、龍がとった行動は謝罪だった。
何がどうなってるんだ本当、、、
龍は続けた。
"人間にあったのも久方ぶり故、我も冷静ではなかった。そもそも、龍の討伐に一人で赴く馬鹿などいるはずない。"
何だかよくわからないが、一応誤解は解けたみたいだ。
「、、、わかってくれたみたいでよかった。だけどよ、何であんなに殺気だって襲って来たんだ、、、」
龍は黙っている。
「、、、無断で住処に立ち入った事なら、悪かった。
でも、本当に知らなかったんだ。ここがあんたの家だったなんて。」
"龍とは元来、そういうものだからだ、、、"
すると、龍は静かに語り出した。
"我々はそもそも、平穏に暮らしていたいだけなのだ。お前たち人間と同じようにな。だが、人間は欲に駆られ、我々の巣に無断で踏み入っては略奪し、子を攫い、時には命まで奪う。よって、古来より龍と人間は、相容れぬ存在なのだ。"
略奪、、、そうだったのか。
こいつは俺個人ではなく、人間そのものを恨んでいるんだ。
そりゃ怒るわな。
"人間は愚かだ。龍と人間の力の差は歴然。何度返り討ちにしても、何度村を焼いても、何度国を滅ぼしても。また欲に駆られ、我らの住処に入ってくる。それを愚かと言わず何という。"
、、、俺は、相変わらずこの世界を知らない。
こんなにも苦しみを抱いている奴が居ても、俺はその
事象も知らない。
沈黙を返すことしかできない、、、
そんな風に俺が黙っていると、龍はまた喋り出した。
"、、、だが、そうでない者もいたのだ、、、"
ボソボソと小さい声だった。何かを懐かしむようなその声は、何かの影を見ているようだった。
「、、、そうでない者?」
質問してみた。
答えが知りたかったわけじゃないが、こいつのことを少し知りたいと思った。
そうすると龍は、少し明るくなったように話した。
"、、、我は昔、冒険者だったのだ。"
「、、、えぇ⁉︎冒険者って、え⁉︎」
びっくりして、大声を出してしまった。
でも、そうか。それなら、冒険者について詳しいのも納得だ。
"あぁ、ずっと昔の話だ。仲間と共に冒険し、あらゆる事をしてきた。その者たちは、我が見てきた人間とは全く違う者たちだった。"
「今、その仲間たちは?」
"、、、もういない。皆な。残ったのは我だけだ。"
不意に聞いてしまったが、悪いことを聞いたかもしれない。
「、、、そうか、悪かった。」
"気にするな。何せ、もう900年も前の話だ。"
「きゅ、900年⁉︎」
またしても大声を出してしまった、、、
そんな俺の顔を見て、龍は捕捉した。
"龍は平均して1000年は生きるからな。"
「、、、っていうとあんた、もう90歳、、、」
"人間で言えば、そうなるな。"
「もうジジイじゃねぇか‼︎」
"ハッハッハッ‼︎確かになぁ!"
俺がそう突っ込むと、龍は大きく口を広げて笑った。
そして、しんみりとした表情で、こう言った。
"、、、お前は似ているのだ。仲間の雰囲気にな。だから、お前を信じたのだ。"
「、、、そりゃ、嬉しいね。」
軽く返したが、嬉しいのは事実だ。
他人の好意的な人物に似ていると言われることは、誰だって嬉しいはずだ。
「、、、寂しくないのか?」
不毛な質問だったと思う。だが、900年という時間はあまりにも長すぎて、俺には想像できないのだ。
"、、、900年だからな。流石に慣れたものよ。、、、だが"
龍は続ける。
"だが、時々思い出すのだ。あの輝かしい日々を。彼らと旅した、鮮烈な日々を。それは、人間であっても同じであろう?"
確かに。過ぎた日々を思い返すのも、楽しかった思い出を大切にするのも、全ての生き物が平等に持っている感情だ。龍でも、人間でも、、、
「、、、じゃあよ、あんた俺の仲間にならねぇか?」
"⁉︎"
龍は驚いていた。
自分でも、とんでもないことを言っているのはわかってる。もしかしたら、怒られるかもしれない。
だけど、、、一人は辛いもんだ。
「、、、一人は辛ェからよ。」
だが、龍は怒るどころか、笑ってみせた。
"ハッハッハッハッハッ!"
「?」
"本当に愉快なやつよお前は。だが、アイツもそう言って、半ば強引だったが。そうやって仲間になったな。"
またしても感慨深そうに笑っている。
"だが、すまんな。我も全盛期は過ぎた。昔は人化して冒険したが、今は魔力量も低下し、一日中人化するのも厳しくなってきた。もう、死に場所を探して彷徨うのみの老龍だ。すまないが、我に冒険はもう無理だ。"
「、、、そうか、、、」
全盛期はどれだけ強かったんだ?という疑問もあったが、それでもやはり、龍でも老いには敵わないということか、、、
「、、、じゃあ、友達だ!仲間じゃなくても友達がいれば、寂しさだって少しは和らぐんじゃないか?」
龍は唖然としていた。
そういえば龍の友達ってどういうやつなんだろう。やっぱり龍なのかな?
"、、、フフッ、、、わかった。そうしよう。"
龍は笑っていた。
口元は変わっていないが、言葉には、確かに喜びの感情があった。
「じゃあ!今日から俺とお前は友達だ!宜しく!、、、えっと、、、」
あ、名前聞いてなかった。
それを察したのか、龍は己の名を口にした。
ーーー"我が名はルグリッド。聖龍である。"ーーー
聖龍!、、、確かに白いし、そんな感じする。
「、、、レオンだ。宜しく!」
"あぁ、我が友レオンよ。"
ーーーこうしてレオンは、聖龍と友になった。ーーー
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彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~
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しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。
ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。
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彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ――
目が覚めると未知の洞窟にいた。
貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。
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これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。
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