国王ほど不自由なモノはない

榎本 ぬこ

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にじゅーよん

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「オーブル左大臣が陛下のことを探っておられます」
「リオンか」
 リオン・オーブルはリゼの幼馴染みでもある。
「アイツ、左大臣になってから急によそよそしくなりやがって」
 幼馴染みとはいっても歳が離れており、リオンは今年二十八になる。だがその若さで左大臣という地位についたのは実力である。
「陛下が養子縁組を考えていることを事前に知ったようで、もしや陛下に何か問題があるのでは、と」
「問題というと…」
「子供が出来ない、などです」
 なるほど。だから今日の報告会で何も話さなかったのか。
 そんなリオンの心配を無下にするようで悪いが、俺は何の問題もない。あるとしたらユリスに溺れているということだけなのだから。
「どうしたもんかね。何か掴んだ様子でも?」
「いえ。ですがいずれ気付くでしょう」
「んー……」
 リオンにならバレていい気もするんだけど。
「でもリオン、俺のこと愛してるからなぁ」
 これは自意識過剰ではない。愛されている、溺愛されているというのか。
「ユリスが殺されるかもよ」
「…そうですか。何でもいいですけれど、私を痴話喧嘩に巻き込まないで下さいよ」
「へーへー」
「それから、隣国の皇太子様が視察の打診を」
「……マジかよ。皇太子ってことは、アイツか」
「国王たるもの顔に出してはいけませぬ」
「…へーへー…」
 俺は隣国の皇太子が嫌い、大嫌いだ。
 何故なら、ユリスと俺の間に盛大に亀裂を入れたのはその男なのだから。
 一波乱の予感がするのは気のせいだと願いたい。
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