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にじゅーろく
しおりを挟む「どうしたもんかな…」
ゆっくりと廊下を歩きながらため息をつく。フェロンはあれから帰ってこないし、仕方なくぶらぶらしている。今のうちに適当に休んでおかなければ、後で保たない。
「…本当、どうしたものかな?」
「!?」
突然の声に跳ね上がれば、にこりと笑ったユリスが立っていた。
「あっれー……おかしいなぁ、ここにいるはずのない男がいる気がするんだけどナァ」
「それは大変ですね、陛下。幻覚でも見ておられるのですか、それは大変ですね。すぐに休みましょう」
ぐいっと腕を引かれ、どれだけ怒っているのか予想がつく。ふうっとため息をついて仕方なく、リゼはユリスに着いていくことにした。最も、他に選択肢などないのだけれど。
「…で?何で宰相様とあんなに近かったわけ」
「それは……その…ほら、フェロンって男前だし?目の保養っていうかーー…ッ!」
あっという間に口腔を貪られる。って、こんなことしてる時間がマジであったりなかったり。つまりはないのだけれど。
「ね、ちょっと、待って待って」
「…何だよ」
「俺いま、国王タイムだからさ。だから、ね?」
「……お前そう言って、全然俺に時間割かないだろ。お前は俺がいなくて平気なのかよ」
「平気じゃないけど、フェロンに悪いし、」
そこまで言いかけてはっとする。
しまった。勘の鋭いユリスのことだ。
「…なんで宰相様が出てくるわけ?」
ほら、こうなった。
けれどどうせ言おうと思ってたし、この際にリオンのことも言っておこう。
「…リオン・オーブル公爵、ね…」
昔から苦手なんだよあの人、とユリスが漏らす。
「なんで?」
「お前のこと溺愛してるし。あの人がいたら、俺全然近寄ることすらも出来なかったからな、お前に」
「? リオンは優しいよ、俺に関わる全部に」
「そんなことない。少なくとも俺は睨まれた」
ていうか、とユリスが続ける。
「なんで告白されてるんだよお前」
「フェロンに聞いてくれ」
「…もー、本当嫌だ。俺頑張って宰相目指す」
「…楽しみにして待ってる」
それはそれで楽しいかもしれない。よりプレイを増やすことがーーんんっ、仕事の効率を上げることが出来るだろう。うん、そうに違いない。
「それにはまず大臣にならないとね」
「…オーブル公爵は絶対、宰相になってお前の側にいくために左大臣目指したんだろうな…」
「だろうねー。俺って本当、愛されてる」
「ざけんな、お前は俺だけに愛されてればいいんだよ」
そう言ってくれるユリスは好きだし愛してる。それでも、これは万が一の保険。
ユリスを信じきれない俺は、ユリスに捨てられたときの保身を考えるような、最低なやつなのだ。
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