国王ほど不自由なモノはない

榎本 ぬこ

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にじゅーきゅう

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「で?どういうこと?」
 にっこりと笑うリオンの目は全く笑っていない。けれどこの様子ならきっと、もうとっくにユリスとの関係も、リオンが女狐と呼ぶキャロルとの関係も、フェロンがこんな時期に突然辞表を出した訳も分かっているのだろう。というか、感づいているのだろう。
「多分、リオンの予想と違いないと思うけど」
「…それはアルテミスを殺していいってことかな?」
「な訳ないだろ。殺したら駄目」
「半殺しは?」
「駄目」
「目潰し」
「もっとダメ」
「殺したくて仕方ない」
 物騒なことを真顔で言ってくるリオンは別に、俺に恋愛感情があるわけではない。フェロンの恋心にも気付かなかった鈍感な俺が言うのも何だけれど、そういうのとは違う類いのーーもっとややこしくて面倒なやつだ。
「だから、養子の件もそう。キャロルとの間に子供を作る気はないから」
「じゃあ私との間に作ろう」
「アホか」
 男同士で子供が作れるのなら、喜んでユリスとの間に作ってるーーなんて考えて恥ずかしくなる。
 俺は何を考えているんだろう。
「…まぁ、前宰相殿は優しかったんだろうけど?」
「え?」
「私は仕事では容赦しないから、覚悟して?」
「……お手柔らかにお願いします」

 それから数日後。
 執務室から脱走したのは言うまでもないことである。
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