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屋上
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酒の勢い。
気の迷い。
言い訳はなんでもいい。
利休の腕を掴んでビルの屋上まで強引に連れてきて、金網に細い体を押し付けた。
「痛っ…、なにすんの!」
「うるさい」
美しい顔を見ていると彼が男だという事実を忘れて、スボンの中に入れた指にふれる男性器を感じても違和感を感じなかった。
「あ…」
抵抗なくするりと指が入ると利休が甘い吐息を漏らす。
男に抱かれるのは初めてではなさそうな体に藤堂の血がたぎったがどうしても消えない嫉妬心。
「あんた中野のことが好きなんだろ?」
背中からなじられる言葉に、利休はフェンスにからめた指に力をこめる。
「興味はあるけど…それだけ」
「どんな?」
「…組織のトップがどういう奴なのか」
どんな答えも嘘に聞こえてまともに受け取れない。
嫉妬とアルコールで脳が沸騰するような感覚を覚えながら藤堂はお互いのズボンを下げて勃っている自分自身を躊躇なく利休に突っ込んだ。
「…あ…!」
本能を煽る嬌声をあげて利休は金網をぎゅっと握った。
女のそれとは違う締め付けに快感をおぼえつつ、性欲とは違う感情で乱暴に扱ってしまう。
「俺は中野の代わりか?」
「も…っ、しつこ…い……」
後ろから激しく犯す動きに合わせてフェンスが音を立てて利休の声がそれに重なる。
「言えよ。中野の代わりなんだろ」
「ちが…あ…ん……」
「正直に言え」
「藤堂さ…ん……聞いて…あ……あぁ……」
藤堂の手がするすると上に向かって胸の膨らみを探すと、利休は肩をゆらせて笑った。
「僕…男やで……」
「こいつっ…」
「ああ…っ!」
小馬鹿にしたような利休の態度に、容赦なく突き上げると悲鳴が上がった。
「これならどうだ?」
平坦な胸の突起を指の腹で転がすと逃げるように身をよじる。
「…あ…、ダメ…ぁ…ん…」
「気持ちいいんだ」
利休は無言で首を横にふった。
「そういう割には感じてるように見えるけど」
「ん…、ふっ…」
指を動かしたまま腰を動かしていると利休の体が痙攣するように震えてコンクリートの足場に白い液体を吐き出した。
荒い息をしている利休をこちらに向けて利休を突き上げていると、片足を腰に絡めてきた。
「ん…」
藤堂の首に腕を回して崩れ落ちないようにしがみついてくる。
慣れた仕草に他の男に抱かれる姿を想像して、藤堂は勝手に嫉妬心を燃やして激しく動いた。
耳元で漏れる喘ぎ声に刺激されて止められない。
力が抜けて下がっていく利休の片足を抱えて藤堂は中に出した。
藤堂は片手でフェンスを掴み、もう一方の手で利休の体を支えていた。
気を失っているのか藤堂の腕にぐったりと体を折って抱きかかえられている。
「おい…大丈夫か」
「……」
かすかに頷くのを見てほっとしたが、我に返って自分がやってしまった愚行に胸がざわついた。
「…早く逃げろ藤堂さん」
「え?」
「叔父さんに見つかったら殺される」
弱々しい力で藤堂の体を押すが逆に抱きしめられた。
「殺されるんだったら、ずっとこうしていたいな…」
ぬるい風に吹かれながら藤堂は利休の体を太ももに乗せてフェンスを背に座り込んだ。
「もうバレてるだろう。噂ゲームで利休の動きはすぐわかる。今さらあがいても仕方ない」
「その通りだ」
入り口のほうから低い声がした。
けだるげに利休がその方向に視線を向けると、叔父の祐樹と、側近の今井が立っていた。
組織のトップに興味があると言った利休。
この男と比べているんだろうか。
40代くらいか、ふたりの男は細身のスーツを着ていても無駄な肉がない筋肉質の締まった体だとわかる。
そして隠しきれない悪のオーラ。
「どうするかはお前が決めろ、悠人」
わけがわからないまま、藤堂は利休を守るように強く抱きしめた。
今井が背中に片腕を回す動きを祐樹が止める。
「…帰る」
何とか自力で立とうとするが、利休は重い体を支える力は残っていなかった。
藤堂が助けようとして身を起こすと、利休に突き飛ばされて情けなく転がる。
「うぬぼれんな変態!!」
呆気に取られている藤堂と必死な利休を、祐樹は交互に見てため息をついた。
「下手な芝居はいい」
祐樹はゆっくりした足取りで利休に近づき胸ぐらを掴んで起こし、唇に軽くキスする。
殺されると覚悟して藤堂は体の力を抜いた。
「いつかこんな事が起きると思っていたが早かったな」
後ろに控えていた今井が藤堂に近づいてくる。
鋭い眼に睨まれて動けないでいると容赦なく重い蹴りが腹に入った。
「…っ…!」
激痛が走って血を吐いて膝から崩れる。
利休も祐樹の平手で顔を叩かれた。
「その顔が悪い」
倒れている利休の顔に片足を踏み降ろすが、ギリギリの所で避けて立ち上がった。
反撃しようにも今井の拳や蹴りが予想以上に重い。
今井の手が背中に回ったとき、利休は祐樹が携帯していたベレッタを奪い空に向かって数発発砲した。
ビルの谷間に銃声が轟く。
祐樹と今井、交互に銃口を向けながら利休は後ずさっていく。
「すぐに警察が来る」
目の動きで藤堂を呼び寄せて、今井から離した。
「走って!」
階段から突き落とす勢いで藤堂の背中を押してドアを閉めた。
「おい!開けろ!!」
中から藤堂がドアを叩くが、利休の背中に押さえられたドアは開かない。
仕方なく階段を駆け下りるしかなかった。
「今回は許してやる。銃を返せ」
「やだよ」
近づいてくる祐樹のプレッシャーに押されてながら利休はふっと微笑を浮かべた。
「さよなら」
自分の喉元に銃口を突きつけて、トリガーに指をかけた。
目をきつく閉じて最後の痛みを待っていると、慣れた手つきで素早く銃を取り上げられた。
そっと目を開けると銃口を向けられていた。
「お仕置きが必要だな」
夜の空にもう一発銃声が響いた。
最上階から転がるように階段を下りてビルから飛び出した藤堂が屋上を見上げる。
「そんな…」
今出来ることはここからできるだけ遠くへ逃げることだけだった。
気の迷い。
言い訳はなんでもいい。
利休の腕を掴んでビルの屋上まで強引に連れてきて、金網に細い体を押し付けた。
「痛っ…、なにすんの!」
「うるさい」
美しい顔を見ていると彼が男だという事実を忘れて、スボンの中に入れた指にふれる男性器を感じても違和感を感じなかった。
「あ…」
抵抗なくするりと指が入ると利休が甘い吐息を漏らす。
男に抱かれるのは初めてではなさそうな体に藤堂の血がたぎったがどうしても消えない嫉妬心。
「あんた中野のことが好きなんだろ?」
背中からなじられる言葉に、利休はフェンスにからめた指に力をこめる。
「興味はあるけど…それだけ」
「どんな?」
「…組織のトップがどういう奴なのか」
どんな答えも嘘に聞こえてまともに受け取れない。
嫉妬とアルコールで脳が沸騰するような感覚を覚えながら藤堂はお互いのズボンを下げて勃っている自分自身を躊躇なく利休に突っ込んだ。
「…あ…!」
本能を煽る嬌声をあげて利休は金網をぎゅっと握った。
女のそれとは違う締め付けに快感をおぼえつつ、性欲とは違う感情で乱暴に扱ってしまう。
「俺は中野の代わりか?」
「も…っ、しつこ…い……」
後ろから激しく犯す動きに合わせてフェンスが音を立てて利休の声がそれに重なる。
「言えよ。中野の代わりなんだろ」
「ちが…あ…ん……」
「正直に言え」
「藤堂さ…ん……聞いて…あ……あぁ……」
藤堂の手がするすると上に向かって胸の膨らみを探すと、利休は肩をゆらせて笑った。
「僕…男やで……」
「こいつっ…」
「ああ…っ!」
小馬鹿にしたような利休の態度に、容赦なく突き上げると悲鳴が上がった。
「これならどうだ?」
平坦な胸の突起を指の腹で転がすと逃げるように身をよじる。
「…あ…、ダメ…ぁ…ん…」
「気持ちいいんだ」
利休は無言で首を横にふった。
「そういう割には感じてるように見えるけど」
「ん…、ふっ…」
指を動かしたまま腰を動かしていると利休の体が痙攣するように震えてコンクリートの足場に白い液体を吐き出した。
荒い息をしている利休をこちらに向けて利休を突き上げていると、片足を腰に絡めてきた。
「ん…」
藤堂の首に腕を回して崩れ落ちないようにしがみついてくる。
慣れた仕草に他の男に抱かれる姿を想像して、藤堂は勝手に嫉妬心を燃やして激しく動いた。
耳元で漏れる喘ぎ声に刺激されて止められない。
力が抜けて下がっていく利休の片足を抱えて藤堂は中に出した。
藤堂は片手でフェンスを掴み、もう一方の手で利休の体を支えていた。
気を失っているのか藤堂の腕にぐったりと体を折って抱きかかえられている。
「おい…大丈夫か」
「……」
かすかに頷くのを見てほっとしたが、我に返って自分がやってしまった愚行に胸がざわついた。
「…早く逃げろ藤堂さん」
「え?」
「叔父さんに見つかったら殺される」
弱々しい力で藤堂の体を押すが逆に抱きしめられた。
「殺されるんだったら、ずっとこうしていたいな…」
ぬるい風に吹かれながら藤堂は利休の体を太ももに乗せてフェンスを背に座り込んだ。
「もうバレてるだろう。噂ゲームで利休の動きはすぐわかる。今さらあがいても仕方ない」
「その通りだ」
入り口のほうから低い声がした。
けだるげに利休がその方向に視線を向けると、叔父の祐樹と、側近の今井が立っていた。
組織のトップに興味があると言った利休。
この男と比べているんだろうか。
40代くらいか、ふたりの男は細身のスーツを着ていても無駄な肉がない筋肉質の締まった体だとわかる。
そして隠しきれない悪のオーラ。
「どうするかはお前が決めろ、悠人」
わけがわからないまま、藤堂は利休を守るように強く抱きしめた。
今井が背中に片腕を回す動きを祐樹が止める。
「…帰る」
何とか自力で立とうとするが、利休は重い体を支える力は残っていなかった。
藤堂が助けようとして身を起こすと、利休に突き飛ばされて情けなく転がる。
「うぬぼれんな変態!!」
呆気に取られている藤堂と必死な利休を、祐樹は交互に見てため息をついた。
「下手な芝居はいい」
祐樹はゆっくりした足取りで利休に近づき胸ぐらを掴んで起こし、唇に軽くキスする。
殺されると覚悟して藤堂は体の力を抜いた。
「いつかこんな事が起きると思っていたが早かったな」
後ろに控えていた今井が藤堂に近づいてくる。
鋭い眼に睨まれて動けないでいると容赦なく重い蹴りが腹に入った。
「…っ…!」
激痛が走って血を吐いて膝から崩れる。
利休も祐樹の平手で顔を叩かれた。
「その顔が悪い」
倒れている利休の顔に片足を踏み降ろすが、ギリギリの所で避けて立ち上がった。
反撃しようにも今井の拳や蹴りが予想以上に重い。
今井の手が背中に回ったとき、利休は祐樹が携帯していたベレッタを奪い空に向かって数発発砲した。
ビルの谷間に銃声が轟く。
祐樹と今井、交互に銃口を向けながら利休は後ずさっていく。
「すぐに警察が来る」
目の動きで藤堂を呼び寄せて、今井から離した。
「走って!」
階段から突き落とす勢いで藤堂の背中を押してドアを閉めた。
「おい!開けろ!!」
中から藤堂がドアを叩くが、利休の背中に押さえられたドアは開かない。
仕方なく階段を駆け下りるしかなかった。
「今回は許してやる。銃を返せ」
「やだよ」
近づいてくる祐樹のプレッシャーに押されてながら利休はふっと微笑を浮かべた。
「さよなら」
自分の喉元に銃口を突きつけて、トリガーに指をかけた。
目をきつく閉じて最後の痛みを待っていると、慣れた手つきで素早く銃を取り上げられた。
そっと目を開けると銃口を向けられていた。
「お仕置きが必要だな」
夜の空にもう一発銃声が響いた。
最上階から転がるように階段を下りてビルから飛び出した藤堂が屋上を見上げる。
「そんな…」
今出来ることはここからできるだけ遠くへ逃げることだけだった。
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