夏の魔物

たんぽぽ。

文字の大きさ
4 / 20
夏の虫

1

しおりを挟む
 吉岡君の面接から2日が経った。

 今日のバイトは夕方5時から。店に着くと、バッグヤードで佐々木さんが吉岡君と何か話していた。

 佐々木さんはツーブロックで32歳の社員で、通称ツーブロック佐々木。今日は彼の天敵の副店長が休みなので、顔が水を得た魚みたいにイキイキしている。

「おはようございます」
挨拶をして通り過ぎようとすると、ツーブロックに引き止められた。
「おはよう。白石さんちょっと待って」
他でも同じか知らないけど、この店では夕方でも「おはよう」とみんな挨拶している。
「何ですか?」
「彼、今日から入った吉岡君。白石さん5時から2レジでしょ。吉岡君と一緒に入ってレジ教えてやってよ。よろしくぅ~」
「はい」

 面倒臭いと思いながらも承諾する。言い方が上から目線だし、新人教育を丸投げされている気がしたけれど、断る権利は私にはない。

 バッグヤードの壁に貼ってあるワークスケジュール表を見ると、私の予定は確かに5時から2レジと記入してある。2レジとは1階の入り口に近い方のレジだ。このワースケ表に従って私たちは行動しなければならない。と言っても遅番のアルバイトはレジか品出しくらいしか無いのだけれど。

「初めまして、吉岡です。よろしくお願いします」
吉岡君がこちらを見て軽く頭を下げる。
「初めましてじゃないでしょ⁈ おとといも会ったよね、脳容量が大さじ1杯程度なの⁈ 私は『白石葉月はづき』だからその小さき脳のしわに刻んどいて! 」
私は怒鳴った。ただでさえ朝にコンタクトを排水口に流してしまってイライラしているのだ。でも良く考えれば、2日前と違って眼鏡を掛けている私が分からなくても無理はない。

「すみません……」
吉岡君の顔が雪の日の捨て犬みたいになった。でも半笑いは消えていない。腹立つ。
「着替えて来るから待ってなさい! あとその半笑いやめなさい‼︎」
吉岡君の顔が暴風雨の日の捨て犬になった。隣でツーブロック佐々木がビビっている。彼はアルバイトに対して命令口調で物を言うしセクハラはひどいしで嫌われていて、もちろん私も嫌いだったので、いい気味だと思いながら着替えに向かう。

 全ての怒りは吉岡君にぶつける事に私は決めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...