夏の魔物

たんぽぽ。

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夏の宴

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 お陰で飲み会の雰囲気も少しはマシになった。

 店長とツーブロック佐々木は、無人島に連れて行くなら半魚人と人魚どちらが良いかで熱く議論を交わしている。

 パンダ本多さんとミサキちゃんは、結婚相手に求めるものをそれぞれ熱弁している。本多さんは大量の肉詰めピーマンを「うめぇうめぇ」と食べてくれる人、ミサキちゃんは親が両方死んでいる人が理想らしい。

 デビル川嶋はビールをあおりながらひたすら網の真ん中にホルモンを乗せて、火が勢い良く上がるたびにケタケタ笑い転げている。怖い。

 私は吉岡君に絡み続けた。
「私の肉が食えねぇのか!!」
そう言ってまず彼のタレ皿にひたすら肉を置き続けた。以前先輩にやられてすごく嫌だったからだ。同時に情報収集の続きをやった。
「吉岡君、何人兄弟? 待って、当てるから。お姉さんが2人?」
いかにも歳の離れた複数の姉にしいたげられてきた顔だ。
「弟が1人です」
「何で末っ子長男じゃないのよ!」
「親に言って下さい……」
「まぁ、吉岡君が何人兄弟かなんて、世界で最も役に立たない知識の一つだけど」
「じゃあ聞かないで下さい……」

 吉岡君はビールの次に水割りを飲んでいる。意外と強いのかもしれない。私はグラスを持つ吉岡君の手を見つめた。彼の指を噛み千切って、天パの髪をぐっちゃぐちゃにして引き抜いて禿げ散らかしてあげたい。私はカルアミルクを飲み干した。

 1時間くらい経って、やっと吉岡君が席を立った。手洗いに行くのだろう。しめしめ、今だ。彼を追いかける。飲み会が終わるまで待っていられない。

 手洗いから出て来た彼を捕まえて、
「それよりパーティー抜け出さない?」
と言ってみた。
「え?」
さすがに唐突過ぎたか。
「飲み会抜けて吉岡君の家に行こう」
「……」
「私じゃダメ?」
「いえ……俺んちで何するんですか?」
「決まってるじゃない。体熱を交換するんだよ」
「はい?」

 彼を通路の壁際に追い詰めて壁ドンしてみた。初めての壁ドンだ。
「もっかい聞くけど、私じゃダメ?」
「いえ……どちらかと言えば、歓迎します」
「ホント? じゃあ決定ね」
ヤッター! 

 全力の早歩きで個室に戻り、襖を開けるなり言った。
「すみません、吉岡君がハンパない勢いでリバースしてて死にそうなので送っていきます」
吉岡君は隣でボーッと立っている。
「そう? ピンピンしてない? むしろ白石さんの方がふらふらしてる気が……」
店長が言う。

 それを無視してミサキちゃんに「ゴメン、これよろしく」と万札を渡して、吉岡君と私のカバンを掴んだ。

 ミサキちゃんが「後でお釣りわたすから。でもホントに大丈夫?」とか言っていたけれど、全身全霊で「ではドロンします‼︎」と叫んで吉岡君を引っ張って店を出た。
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