17 / 20
夏の魔物
1
しおりを挟む
お盆が過ぎて8月も終わりに近づいて、あと数日で21歳になるという晩の事だ。
私はいつもみたいに吉岡君と抱き合った後、裸のまま寝ていた。
途中、私は目が覚めた。
電気を消して寝たはずなのに、部屋はほんのり明るい。光源は近いらしい。目だけを動かしてそちらに視線を移した。
女が一人、布団の横の畳にぺたんと座っていた。彼女はこちらに横顔を見せ、背筋を伸ばしているけれど少しうつむいて目を閉じている。つやっつやのショートボブの頭にはクローバーの花冠を載せている。
そして、全身が発光していた。自己主張の強い光じゃなく、月のような控えめな光り方だ。
彼女の背中には翼があった。天使みたいな可愛らしいそれではなくて、白いけれど大鷲みたいなゴツ目の翼。この翼なら上昇気流に乗って大空を旋回出来そうだ。
何か超常現象のようなものを目の当たりにしながらも、私がまず行ったのはその女の横顔の評価だった。私は性格が悪いので、ふうん、けっこう小綺麗な顔じゃん、でも誰でも化粧を頑張ればそれくらいにはなるよね、それに鼻が少し残念、と厳しめの評価を下した。でも女性なら女とすれ違う時なんかに、一瞬で相手の外見を値踏みするのは割と普通の事だと思う。
値踏みすると同時に、女の顔をどこかで見た気がするとも感じた。それも身近な誰か。けれど直ぐには分からない。
女がゆっくりと私に顔を向け目を開いた。
やっと分かった、それは自分自身の顔なのだった。いつも洗面所などで目にするのは自分の虚像だし、まさか自分、あるいは自分にそっくりな誰かが真夜中に発光しながら同じ部屋に座っているとは思いもしない。
客観的に見ると私って鼻が残念って評価なのか……私は少なからずショックを受けた。
それからやっと焦り始めた。これは夢なのだ、超常現象なんかじゃない、そう思って身体を動かそうとしても動かない。手足から血液が抜けてしまって痺れている感じ。横隔膜を上下出来ずに上手く息が出来ない。
やっぱり夢だ、金縛りだ。私は金縛りを何度か体験していて、ネットで調べた事がある。レム睡眠中に目が覚めてしまったのだ。身体は眠っているのに頭は起きている。だから動けない。連日の暑さで知らない内に疲労が溜まっていたのかもしれない。
金縛りを解除するには力を抜いてリラックス。そう努めたけれど私の目は女に釘付けになっているし、全身に力が入ってしまう。
隣では吉岡君が腹の立つくらい平和な寝息を立てている。
私はいつもみたいに吉岡君と抱き合った後、裸のまま寝ていた。
途中、私は目が覚めた。
電気を消して寝たはずなのに、部屋はほんのり明るい。光源は近いらしい。目だけを動かしてそちらに視線を移した。
女が一人、布団の横の畳にぺたんと座っていた。彼女はこちらに横顔を見せ、背筋を伸ばしているけれど少しうつむいて目を閉じている。つやっつやのショートボブの頭にはクローバーの花冠を載せている。
そして、全身が発光していた。自己主張の強い光じゃなく、月のような控えめな光り方だ。
彼女の背中には翼があった。天使みたいな可愛らしいそれではなくて、白いけれど大鷲みたいなゴツ目の翼。この翼なら上昇気流に乗って大空を旋回出来そうだ。
何か超常現象のようなものを目の当たりにしながらも、私がまず行ったのはその女の横顔の評価だった。私は性格が悪いので、ふうん、けっこう小綺麗な顔じゃん、でも誰でも化粧を頑張ればそれくらいにはなるよね、それに鼻が少し残念、と厳しめの評価を下した。でも女性なら女とすれ違う時なんかに、一瞬で相手の外見を値踏みするのは割と普通の事だと思う。
値踏みすると同時に、女の顔をどこかで見た気がするとも感じた。それも身近な誰か。けれど直ぐには分からない。
女がゆっくりと私に顔を向け目を開いた。
やっと分かった、それは自分自身の顔なのだった。いつも洗面所などで目にするのは自分の虚像だし、まさか自分、あるいは自分にそっくりな誰かが真夜中に発光しながら同じ部屋に座っているとは思いもしない。
客観的に見ると私って鼻が残念って評価なのか……私は少なからずショックを受けた。
それからやっと焦り始めた。これは夢なのだ、超常現象なんかじゃない、そう思って身体を動かそうとしても動かない。手足から血液が抜けてしまって痺れている感じ。横隔膜を上下出来ずに上手く息が出来ない。
やっぱり夢だ、金縛りだ。私は金縛りを何度か体験していて、ネットで調べた事がある。レム睡眠中に目が覚めてしまったのだ。身体は眠っているのに頭は起きている。だから動けない。連日の暑さで知らない内に疲労が溜まっていたのかもしれない。
金縛りを解除するには力を抜いてリラックス。そう努めたけれど私の目は女に釘付けになっているし、全身に力が入ってしまう。
隣では吉岡君が腹の立つくらい平和な寝息を立てている。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる