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第二章 王都にお引越し! クラスメイトは王子様

55、口よりも早く2

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「そうでしたね。オリビア様、王都に来て間もないですし、私は休まなくても構いませんが……」

 リタの申し出に、オリビアは首を横に振った。
 ジュエリトスでは労働に関して決まり事はほぼないが、オリビアの屋敷やクリスタル家の事業従事者については週休二日の制度が導入されており、シフト制で勤務をしている。

 リタとジョージも対象であり、忙しい時期以外はこの制度により週に二日の休日があるのだ。自領と違い王都に代わりの者がいないため、リタとジョージは互いが休む時はできる限り仕事も請け負うことになっている。
 明日の朝は確実にジョージが迎えに来なくてはいけない。

「ダメよ! ただでさえしばらくは週に一度しか休ませてあげられないのに……。あ、悪いけど今のうちにジョージに連絡してくれない?」

「かしこまりました」

 オリビアの指示にリタは頷くと耳につけているクリスタルの髪飾りに触れた。すると耳飾りのクリスタルは淡く光り、リタが話し始める。

「ジョージ、明日私は休日だからオリビア様を頼んだぞ。朝のお迎えはいつもより早めに。遅刻厳禁だからな」

 リタが話し終えると、耳飾りから『へいへい』とジョージの声がオリビアにも僅かに届く程度に聞こえる。オリビアは紅茶を飲みながらリタと目を合わせ頷いた。

「ありがとう、リタ。明日はゆっくり休んでね。あ、王都で買い物したり、夜はこの前の……エルの店へ行ってみたら?」

「エルの店へ? そんな、私一人では……」

 オリビアの提案に、リタは頬を赤らめ口ごもった。

 王都に引っ越した日に立ち寄った食堂の見目麗しいマスターのエルは、ジュエリトスの王道の美しい顔立ちにほんの少しドジなところがリタのストライクゾーンど真ん中な青年だ。
 料理も上手で感じも良いので、リタの片思いの相手で自分の兄でもあるエリオットから心変わりする可能性もあるだろうとオリビアは予感していた。

「そんなに意識することないじゃない。彼の出す料理も気になるし、私の代わりに顔を出してきてほしいわ」

 オリビアが含み笑いでリタを見上げると、彼女は「け、検討しておきます」と言って視線を逸らした。

「ふふふ、もしかしたらエリオット兄様はリタに振られてしまうかもしれないわね」

「な! 何をおっしゃいますかオリビア様! そもそも私とエリオット様はそういった関係ではございません!」

「からかい過ぎたわね。ごめんなさい」

「いいえ……。ですが、本当にいいのです。エリオット様と私では釣り合いが取れませんし、私はいつまでもオリビア様にお仕えしたいのです」

 リタはそう言って一礼してからオリビアに笑かけた。幼い頃から一緒だった姉妹のような存在の部下。
 彼女が兄と結婚し、自分の家族になってほしいという気持ちと、いつまでも仕えたいという言葉への喜びを感じた矛盾に、オリビアの胸中は複雑だった。



「それじゃあリタ、明日は自分で準備するから朝から自由に過ごしてね」

「ご配慮いただきありがとうございます、オリビア様」

「おやすみなさい」

「おやすみなさいませ」

 オリビアは寮の食堂で食事をし、寝支度を済ませてリタを下がらせる。
 彼女が礼をして部屋を出た後、しっかりと部屋のドアを施錠した。そしてベッドに潜り込む。

「明日はシルべスタ先生の初授業……。楽しみだわ……」

 明日の授業に期待しながら、オリビアはそっと眠りについた。

>>続く
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