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第八話、妻からの提案
(四)※
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国芳さんの余裕そうな表情が悔しい。
私にこんなことをしておいて、嬉々としている。
胸の先が弱いことまですっかりバレてしまった。
「見ないでください」
仰向けになったまま両腕で胸を隠してしまう。
でもどうせ、私はこの腕を離してしまうんだ、と自分でも分かってしまっていてそれもちょっと悔しい。
私と国芳さんにはちゃんとマナーがある。
雄猫の生殖器には棘があるから、いくら精密に人の姿をしていても気も緩むような行為の最中に変化が中途半端に解け、私の内側を傷つけてしまう事が無いように、と。でも前に……終わった後に国芳さんがご自分の分身を見て渋い表情をしていた。
破れてしまったわけでも無さそうだしどうしたんですか、と見ようとしたら止められて。
「余所見をする余裕があるようだな」
私にとってのごく僅かなクールダウン。
「ちが、います……ッ、んんん!!」
ぐりぐりと先端を擦り付けられてそのまま入って来る熱の塊。
涙目になっている私を見下ろして、口の端が軽く上がっている人をあられもない恰好で受け入れてしまう。
でも、人の姿をしているとは言え……国芳さんは後ろから、の方が自然な感じなのかな、と思う。さっきも後ろからされた愛撫はちょっと激しかったし楽しそうだった。
今はごく普通に私が下で、国芳さんが上で。
揺すられる体は勿論、その度に声が漏れ出そうになるくらい気持ちいいけれど。
「すず子?」
囲われた下で国芳さんを見つめる。
「夫婦、なので……言います、けど……国芳さんは、後ろからするのに、ご興味は……」
お酒が適度に入っているせいか、言ってしまった。
雰囲気を壊してしまうかもしれないのに、でも、それは国芳さんが私に合わせてくれているだけかもで、心配でもあった。
「……気を使わせたか?」
否定はしないで、短く頷く。
後ろからくらいなら私は大丈夫だと伝えれば大きく息を吸った国芳さんはその吐き出される吐息に乗せて「怖くなったら言ってくれ」と私の体から一度、熱を引き抜く。
この二人の時間の時には普段の我が儘を見せない。
嫌なことだけじゃなくて、してもいいことを伝えるのも、大切だから、私は国芳さんに愛情を伝えるのと同じように言葉にする。
「んっ、く」
そしてまた熱に穿たれ、揺れる。
私の腰を掴む人は最初は恐るおそる入って来たけれど、私の思っていることを汲んでくれて今は割と自由に、彼も既に知っている私が感じてしまう奥でずくずくと揺れ、暴いている。
私、垂れ落ちてしまいそうなくら濡れている気がする。
「すず子……苦しく、は」
途切れる声に気持ちいいのかな、と思う。
なんとなくだけど、大きいような気も、する。
大丈夫、と首を横に振るしかない私――言葉にしたら、喘いでしまいそうなくらい、私も気持ちいい。
は、は、とお腹の底から吐き出す吐息が重なる。
自分で体を支えなくてはいけないのに私はもう腕が崩れてしまって、やっぱりどうしてもあられもなくお尻を高く……どうにか立っている膝も震えている。
「んッ、んんッ――!!」
「っく、そんなに、」
締めるな、と言われても。
「もう、い、く……あ、ッ……う」
頭を伏せて崩れてしまっている私のすぐ横に彼の手がどす、と着いた。あ、と思った瞬間には今まで我慢していたのかお腹の中が引きずり出されるんじゃないかと思うような出し入れが始まってしまって声を押さえられなくなる。
私、いつも最後は啼かされている気がする。
「や、や……はげ、し」
吐息じゃない。
国芳さんが、呻ってる。
それが私の背後から降って来て、このまま噛まれてしまうかも、と過る不安もあったけれど今日は国芳さんの好きなようにしても良いと伝える為に「少しなら、噛んでも」と揺さぶりの快楽に震えてしまう声で言う。
自らが持つ衝動を堪えている人に言う言葉じゃないのは分かっていた。
でも、今日はどうしてだろう。
「あ、ぐ」
遠慮がちに甘噛みされた首筋。
それでもフーッ、と唸る人の理性はまだ一応は残っているようだった。
ざり、と当たる舌も、食い込む歯も多少は痛い筈なのにおかしいな……全部、感じてしまう。
私に喰らいついて離さない。
これが国芳さんの愛情表現。
それがもう、体で分かっているのかもしれない。
どくどくと分かる程にお腹の中で脈打つもの。強い快楽に収縮してひくつく体、そのまま崩れ落ちてしまう私。
「んん……う」
ずるりと引き抜かれる熱とじんじんするような余韻。
息が整った頃合いに何とか体を横にしてちら、と見上げれば「お前は俺をどうしたいんだ……」と苦笑いされてしまった。
「だって……それが、あなたの習性だから……」
私の体を大切にしてくれているのは分かるから、本気では噛まないのも分かっているから。
私にはちょっと被虐的な部分があるのかな、と思う。
「それはそうだが、本当に痛くなかったか?俺もつい、お前に甘えて」
「あなたが甘えてくれるのなら、私は受け入れられます」
「すず子……抱き締めても良いか。俺は今、この感情をどうしたら良いか分からない」
「どうぞ」
私たちは夫婦、つがいですから。濡れている体もそのままに私は胸元を隠しもせず、国芳さんに腕を伸ばす。切ない疲労と、抱き合う心地よさは夫婦になったばかりの私たちに満足感を教えてくれた。
私にこんなことをしておいて、嬉々としている。
胸の先が弱いことまですっかりバレてしまった。
「見ないでください」
仰向けになったまま両腕で胸を隠してしまう。
でもどうせ、私はこの腕を離してしまうんだ、と自分でも分かってしまっていてそれもちょっと悔しい。
私と国芳さんにはちゃんとマナーがある。
雄猫の生殖器には棘があるから、いくら精密に人の姿をしていても気も緩むような行為の最中に変化が中途半端に解け、私の内側を傷つけてしまう事が無いように、と。でも前に……終わった後に国芳さんがご自分の分身を見て渋い表情をしていた。
破れてしまったわけでも無さそうだしどうしたんですか、と見ようとしたら止められて。
「余所見をする余裕があるようだな」
私にとってのごく僅かなクールダウン。
「ちが、います……ッ、んんん!!」
ぐりぐりと先端を擦り付けられてそのまま入って来る熱の塊。
涙目になっている私を見下ろして、口の端が軽く上がっている人をあられもない恰好で受け入れてしまう。
でも、人の姿をしているとは言え……国芳さんは後ろから、の方が自然な感じなのかな、と思う。さっきも後ろからされた愛撫はちょっと激しかったし楽しそうだった。
今はごく普通に私が下で、国芳さんが上で。
揺すられる体は勿論、その度に声が漏れ出そうになるくらい気持ちいいけれど。
「すず子?」
囲われた下で国芳さんを見つめる。
「夫婦、なので……言います、けど……国芳さんは、後ろからするのに、ご興味は……」
お酒が適度に入っているせいか、言ってしまった。
雰囲気を壊してしまうかもしれないのに、でも、それは国芳さんが私に合わせてくれているだけかもで、心配でもあった。
「……気を使わせたか?」
否定はしないで、短く頷く。
後ろからくらいなら私は大丈夫だと伝えれば大きく息を吸った国芳さんはその吐き出される吐息に乗せて「怖くなったら言ってくれ」と私の体から一度、熱を引き抜く。
この二人の時間の時には普段の我が儘を見せない。
嫌なことだけじゃなくて、してもいいことを伝えるのも、大切だから、私は国芳さんに愛情を伝えるのと同じように言葉にする。
「んっ、く」
そしてまた熱に穿たれ、揺れる。
私の腰を掴む人は最初は恐るおそる入って来たけれど、私の思っていることを汲んでくれて今は割と自由に、彼も既に知っている私が感じてしまう奥でずくずくと揺れ、暴いている。
私、垂れ落ちてしまいそうなくら濡れている気がする。
「すず子……苦しく、は」
途切れる声に気持ちいいのかな、と思う。
なんとなくだけど、大きいような気も、する。
大丈夫、と首を横に振るしかない私――言葉にしたら、喘いでしまいそうなくらい、私も気持ちいい。
は、は、とお腹の底から吐き出す吐息が重なる。
自分で体を支えなくてはいけないのに私はもう腕が崩れてしまって、やっぱりどうしてもあられもなくお尻を高く……どうにか立っている膝も震えている。
「んッ、んんッ――!!」
「っく、そんなに、」
締めるな、と言われても。
「もう、い、く……あ、ッ……う」
頭を伏せて崩れてしまっている私のすぐ横に彼の手がどす、と着いた。あ、と思った瞬間には今まで我慢していたのかお腹の中が引きずり出されるんじゃないかと思うような出し入れが始まってしまって声を押さえられなくなる。
私、いつも最後は啼かされている気がする。
「や、や……はげ、し」
吐息じゃない。
国芳さんが、呻ってる。
それが私の背後から降って来て、このまま噛まれてしまうかも、と過る不安もあったけれど今日は国芳さんの好きなようにしても良いと伝える為に「少しなら、噛んでも」と揺さぶりの快楽に震えてしまう声で言う。
自らが持つ衝動を堪えている人に言う言葉じゃないのは分かっていた。
でも、今日はどうしてだろう。
「あ、ぐ」
遠慮がちに甘噛みされた首筋。
それでもフーッ、と唸る人の理性はまだ一応は残っているようだった。
ざり、と当たる舌も、食い込む歯も多少は痛い筈なのにおかしいな……全部、感じてしまう。
私に喰らいついて離さない。
これが国芳さんの愛情表現。
それがもう、体で分かっているのかもしれない。
どくどくと分かる程にお腹の中で脈打つもの。強い快楽に収縮してひくつく体、そのまま崩れ落ちてしまう私。
「んん……う」
ずるりと引き抜かれる熱とじんじんするような余韻。
息が整った頃合いに何とか体を横にしてちら、と見上げれば「お前は俺をどうしたいんだ……」と苦笑いされてしまった。
「だって……それが、あなたの習性だから……」
私の体を大切にしてくれているのは分かるから、本気では噛まないのも分かっているから。
私にはちょっと被虐的な部分があるのかな、と思う。
「それはそうだが、本当に痛くなかったか?俺もつい、お前に甘えて」
「あなたが甘えてくれるのなら、私は受け入れられます」
「すず子……抱き締めても良いか。俺は今、この感情をどうしたら良いか分からない」
「どうぞ」
私たちは夫婦、つがいですから。濡れている体もそのままに私は胸元を隠しもせず、国芳さんに腕を伸ばす。切ない疲労と、抱き合う心地よさは夫婦になったばかりの私たちに満足感を教えてくれた。
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