ヘタレαにつかまりまして

8 挽回 side 倭人

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｢桜宮さん、疲れてきたらバカ息子を置いて先に早退してきたらいいからね｣

｢はいっ｣


父さんの言葉にハキハキ笑顔で答えるカナ。
うん、今日も可愛い。

俺の家の食事量は、Ωのカナには多かったみたいで。
食べれそうにない分を配膳後に切り分けて、申し訳なさそうに隣に座る俺に譲ってくれる。
今朝も、ベーコンやチーズオムレツ、サラダが俺の皿に移動。

謝ってくるカナも可愛いんだけど・・・

今みたいに、父さんから話しかけられると、カナは俺には向けない羨望の眼差しを向けるんだよな。
いつも話しかけられただけで水色の瞳が輝いて、頬まで紅潮させながら答える。
正面からこの顔を見ることが出来る父さんが、正直羨ましい。　

でも、頬っぺたを膨らまながらワシャワシャ髪を掻き混ぜてくる顔は俺しか知らないしな。
カナの細い指で髪を鋤かれたり、小さな掌を広げて頭に触れられるのは凄く気持ちいい。

家族以外に頭部に触れられる、なんて経験をしたこと無かったし。
他の人間に触れられるのは、αとしてのプライドを土足で踏みにじられるくらい屈辱的なことなんだけど。

カナだと、全然平気。
むしろ、もっと触って欲しくて自分から頭を下げたくなる。


｢倭人、お前も今日から学校に行くんだろう？
ニヤニヤ、ニマニマ、家と同じ調子で桜宮さんを見たり、突然泣き出したりせずしっかりしろよ？
αを尻に敷くΩなんて陰口叩かれたら、桜宮さんに迷惑だ｣


それは、カナに悪いな。


｢気を付ける｣