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三章
いちゃいちゃ
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「飲めますか?」
「う、ん……」
水を入れたグラスを持ってきてくれた杉野は、気遣わしげに藤ヶ谷を覗き込む。
ベッドに横たわっていた藤ヶ谷は、腕をついて重い体を持ち上げた。
全身が疲労で上手く動けない。
オメガの友人達が言っていた「腰が痛い」とは、このことだったのかと痛感する。
今着ているパジャマも、杉野に手伝って貰ってようやく着れたのだ。
残念ながら下着だけは予備が無かったため履けなかったが、スースーするのは一晩だけの辛抱だ。
杉野はベッドに上がり、ふんわりとした枕を背もたれにしている藤ヶ谷の肩に腕を回して支えてくれた。
水を受け取りながら、藤ヶ谷は杉野と体温を分け合えることに感動する。
「幸せすぎてふわふわする……」
「俺もです」
グラスに口をつけながら肩にピタリと頭を寄せると、杉野が髪に口付けてくれた。
嬉しくなって頬にキスすると、同じく頬に返ってくる。
視線を向ければ、涼しげな目元が優しく見つめ返してくれる。
踊り出したくなるほどの幸福感だ。
「ヒート中だったら、番になれたのに」
猫のように頭を首元にすり寄せて甘えた声を出す。杉野のフェロモンの香りが心地よく、恋人になったばかりなのに欲が出てきた。
山吹は番になるまで出てくるなと言っていたが、藤ヶ谷のヒートはまだ2ヶ月程先だ。
それまでずっとここでこうしているわけにはいかない。
残念だが、明日になればいつも通り家に帰らなければならないのだ。
杉野は藤ヶ谷の頸に鼻を寄せ、そこにも軽く唇を触れさせた。
「番にしてくれるんですか?」
「なりたい」
頸に響く声に背筋を震わせ、素直に頷く。
杉野はくすくすと笑うと頸から顔を離して、サラリと髪を撫でた。
「俺はもうキャパオーバーです」
「なんだよぉ」
「幸せすぎて、わけがわからない」
今度は藤ヶ谷が拗ねて尖らせた唇に、笑う杉野の唇が重なった。
唇が腫れるほど幾度もリップ音が鳴る。
「実は夢なんじゃないかってまだ思ってます」
「もっかい殴るぞ」
「結構です」
仕事中のように言葉は単調だが、全てに藤ヶ谷への愛情が滲み出ている。
藤ヶ谷の手から水が半分になったグラスを取ると、サイドテーブルに置いてくれた。
そして、そのまま2人でベッドに横たわる。
「寝ましょう。朝は、一緒に風呂に行ってくれるんですよね?」
「ん……約束な……、あ」
ここぞとばかりに杉野の方を向き、体を寄せようとした藤ヶ谷はふと思い出した。
「どうしました?」
「チョコ、持ってきたのに渡すの忘れてた」
甘いものはあまり食べない杉野だが、嫌いなわけではない。アルコール入りのチョコレートなら特に食べやすいかと選んだものだ。
告白の際に渡すつもりだったのに、カバンの中に入れたままになってしまっている。
そのカバンはソファーの上に置いてあることを説明すると、杉野は唸った。
折角なのでいちゃつきながら食べたいようだが、今の藤ヶ谷は疲れ切っている。
短く息を吐くと、
「明日、食べさせてください」
と言って、これからすぐに食べるのは諦めた。
藤ヶ谷のことを考えてくれたことが伝わってきて、自然と口元に笑みが浮かぶ。
ツンツンと杉野の頬を突きながら、藤ヶ谷は調子づいた声を出した。
「仕方ねぇから口移しでやろう」
「俺、そういうの絶対忘れませんよ」
杉野は釘をさしながら藤ヶ谷の体を抱き寄せた。
逞しい腕が温かくて安心して。
藤ヶ谷はすぐに眠りに落ちていっていった。
「う、ん……」
水を入れたグラスを持ってきてくれた杉野は、気遣わしげに藤ヶ谷を覗き込む。
ベッドに横たわっていた藤ヶ谷は、腕をついて重い体を持ち上げた。
全身が疲労で上手く動けない。
オメガの友人達が言っていた「腰が痛い」とは、このことだったのかと痛感する。
今着ているパジャマも、杉野に手伝って貰ってようやく着れたのだ。
残念ながら下着だけは予備が無かったため履けなかったが、スースーするのは一晩だけの辛抱だ。
杉野はベッドに上がり、ふんわりとした枕を背もたれにしている藤ヶ谷の肩に腕を回して支えてくれた。
水を受け取りながら、藤ヶ谷は杉野と体温を分け合えることに感動する。
「幸せすぎてふわふわする……」
「俺もです」
グラスに口をつけながら肩にピタリと頭を寄せると、杉野が髪に口付けてくれた。
嬉しくなって頬にキスすると、同じく頬に返ってくる。
視線を向ければ、涼しげな目元が優しく見つめ返してくれる。
踊り出したくなるほどの幸福感だ。
「ヒート中だったら、番になれたのに」
猫のように頭を首元にすり寄せて甘えた声を出す。杉野のフェロモンの香りが心地よく、恋人になったばかりなのに欲が出てきた。
山吹は番になるまで出てくるなと言っていたが、藤ヶ谷のヒートはまだ2ヶ月程先だ。
それまでずっとここでこうしているわけにはいかない。
残念だが、明日になればいつも通り家に帰らなければならないのだ。
杉野は藤ヶ谷の頸に鼻を寄せ、そこにも軽く唇を触れさせた。
「番にしてくれるんですか?」
「なりたい」
頸に響く声に背筋を震わせ、素直に頷く。
杉野はくすくすと笑うと頸から顔を離して、サラリと髪を撫でた。
「俺はもうキャパオーバーです」
「なんだよぉ」
「幸せすぎて、わけがわからない」
今度は藤ヶ谷が拗ねて尖らせた唇に、笑う杉野の唇が重なった。
唇が腫れるほど幾度もリップ音が鳴る。
「実は夢なんじゃないかってまだ思ってます」
「もっかい殴るぞ」
「結構です」
仕事中のように言葉は単調だが、全てに藤ヶ谷への愛情が滲み出ている。
藤ヶ谷の手から水が半分になったグラスを取ると、サイドテーブルに置いてくれた。
そして、そのまま2人でベッドに横たわる。
「寝ましょう。朝は、一緒に風呂に行ってくれるんですよね?」
「ん……約束な……、あ」
ここぞとばかりに杉野の方を向き、体を寄せようとした藤ヶ谷はふと思い出した。
「どうしました?」
「チョコ、持ってきたのに渡すの忘れてた」
甘いものはあまり食べない杉野だが、嫌いなわけではない。アルコール入りのチョコレートなら特に食べやすいかと選んだものだ。
告白の際に渡すつもりだったのに、カバンの中に入れたままになってしまっている。
そのカバンはソファーの上に置いてあることを説明すると、杉野は唸った。
折角なのでいちゃつきながら食べたいようだが、今の藤ヶ谷は疲れ切っている。
短く息を吐くと、
「明日、食べさせてください」
と言って、これからすぐに食べるのは諦めた。
藤ヶ谷のことを考えてくれたことが伝わってきて、自然と口元に笑みが浮かぶ。
ツンツンと杉野の頬を突きながら、藤ヶ谷は調子づいた声を出した。
「仕方ねぇから口移しでやろう」
「俺、そういうの絶対忘れませんよ」
杉野は釘をさしながら藤ヶ谷の体を抱き寄せた。
逞しい腕が温かくて安心して。
藤ヶ谷はすぐに眠りに落ちていっていった。
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