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第二章 始まりの街防衛戦‼

第百五十八話 1週間の成果

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 決めていた1週間の予定を消化した渚は微妙な時間に寝たこともあって、起きるとまだ眠そうにフラフラしていた。

「あぁ~~~~」

 うめき声を上げながらフラフラと歩く姿はゾンビのようだった。そんな状態でも習慣となっているからか寝間着から制服に着替えて洗面所で顔を洗うなど、朝の身支度をこなしていった。
 さすがに顔を洗った時に目が覚めたようのか、その後は比較的しっかりした足取りで朝食の準備をしてまだ寝ている夏輝と夏帆の2人を起こしていた。朝食の時に2人はいつものように渚にAOでの事を聞こうとしたが、まだ平日なので朝練やらいろいろと忙しくて話をする時間がなくて渋々と諦めて登校して行った。

 そんな2人を見送った渚は尋問にならなかった事に安心して、食器を洗ってから遅刻にならない時間に登校した。
 教室では前日にちょっと無理やり逃げたことでむきになった竜悟が仁王立ちで待ち構えていた。でも渚はちゃんと警戒していたので他のクラスメイトが入る時に紛れ込んで入って、静かに自分の席に着く事で竜悟もすぐに気が付くけど予鈴が鳴ってしまい話す事はできなかった。

(ふぅ…朝は乗り越えた。休み時間も頑張るぞ!)

 朝一での竜悟を避けることが出来た渚は一息つくと今日も1日逃げ通してやる!と決意を新たにした。
 その日は竜悟と渚の2人による鬼ごっこが学校中で目撃されたが、もはや学校全体で2人のじゃれ合いは有名で教師すら注意することなく放置されていた。
 そしてなんとか1日逃げ切った渚は放課後になると纏めて置いた荷物を持って飛び出すように教室を出て、走って帰路につくのだった。

 帰宅した渚はいつも通りに家事を終わらせると、少し休憩してからAOへログインした。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ふぅ…落ち着く…」

 ログインしてナギはすぐに移動はせずに噴水の縁に座って一息ついた。
 さすがにこの1週間のやる事は休憩がなかったこともあって精神的にかなり疲れていたのだ。なにより現実の都会では見る事の無い透き通った青空に、仮想空間とは言え安らいでいたのだ。

『なんか主様、おじさんみたいですよ?』

「…それは何か嫌だな。よし、ちゃんとしよう」

 さすがにおじさん扱いはまだ高校生のナギは嫌だったようで真剣な表情で背筋を伸ばす。そんな単純な理由で態度の変わる自分の主の姿にソルテは少し困ったように苦笑いを浮かべていた。

「さて、ちゃんとするとは言った物の今日はなにをやろうかな」

『まだ決まっていないなら。最近作った物鑑定していないですし、確認しませんか?』

「あぁ~まだ鑑定していなかったな。よし!今日は鑑定してアイテムの整理でもするか」

『それがいいと思います‼』

 提案を受け入れてナギが笑って答えるとソルテも楽しそうに賛成して声を上げた。
 その後は時間がまだヨルなのもあって人は少ないので大通りをゆっくりとゴド爺さんの店へと向かった。
 程なくして店に着いたが今日は定休日なのか既に閉店していた。しかしナギはそんなのお構いなしで店へと入って作業場へと入っていった。

 作業場ではカンッ‼カン!とリズムよく鎚を振るってゴド爺さんは真剣に金属を観察していた。
 しっかり集中しているからかゴド爺さんは入って来たナギに気が付かずに鎚を振るっていて、そんなゴド爺さんの様子を確認してナギは楽しそうに笑みを浮かべて窯の反対にある作業台へと向かった。

「さて、これだけ広さがあれば問題ないだろう」

『…そうですね。これだけ大きければ問題ないと思います…』

「まだ外に出る気にはならないか?」

『もう少し待ってください。心構えをしますので…』

 最初のゴド爺さんの興奮した姿に苦手意識が強くなっているソルテは少し顔を引きつらせながら答えて、コートから顔を少しだけのぞかせていた。さすがにナギも気持ちが分かるだけに無理やり引っ張り出したりはせずに、ちょっとだけ困ったように苦笑いを浮かべて作業を再開した。
 アイテムボックスから次々に、この1週間で製作した銅の短剣に指環と鉄のインゴットを取り出した。

「う~ん、さすがにいっぺんには大変だから最初と最後に作ったのを確認して、一回休憩を挟んで今日中に残りを確認すればいいか」

 現実での1週間、つまりAOでの約3週間もの期間を使用して製作しただけに数が膨大で全部を一気に鑑定とはいかないのだ。そのことを取り出そうとして改めて確認したナギは判定基準として使えそうな最初と最後に作った物を取り出して並べる。

 並べられた3種類2個ずつの品々は一目では品質の違いを判別できなかった。

「さすがにスキル無しで良し悪しはわからないな。何となくこっちの方がいいかな?って感じが限界だ」

『それで当てられたらスキルがいらなくなっちゃいますよ!』

 残念そうなナギに胸元でその呟きを聞いたソルテは面白そうに笑っていた。
 さすがに笑われたことには少しむっ!とした表情を浮かべたナギだが、言っている事はもっともだと納得できてしまったので諦めたように小さく息を吐き出した。

「はぁ…確かにスキルの存在意義がなくなるか。とにかく、まずは最初に作った3つを鑑定するか」『鑑定』

 これ以上話している時間はもったいないと思ったナギは話を打ち切ると、すぐに鑑定スキルを使用した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 銅の短剣 品質 良 ランク 4
 
 耐久値 42/42 攻撃力 21

 備考 良質の銅を使用して作られた短剣。特殊な効果はないが細部まで細かく作られていて、通常よりも耐久値や攻撃力が高くなっている。
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 銅の指環 品質 普 ランク 4
 
 耐久値 34/34  防御力 15

 属性:無

 備考 見習い鍛冶師によって良質の銅を使用して作られた指環。
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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 鉄のインゴット 品質 普 ランク 4

 備考 初級・鍛冶師が作った鉄のインゴット。
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 表示された三品の鑑定結果は以前に作った物と比べてもそん尺ない程の出来にはなっていた。特に鉄のインゴットは以前に1人で作った物と遜色ない物が出来上がっていた。
 その鑑定結果をみたナギは少しだけ驚いたようにだったが、すぐに嬉しさを隠せなくて笑みを浮かべた。

「良く出来ているな。しかも最初に作ったのでこのレベルなら、最後の方には期待が持てるな」

『ですねぇ~!まだレベル低いのに、これだけの物が出来るなんてすごいですよ‼』

「……ソルテは鑑定スキルも持っているのか?」

『はい!鍛冶に関係するスキルは一通り持ってます。先頭に使えるのはほとんどないですけどね‼』

 先頭に使えるスキルはないと何故か不思議なくらいに自信満々でソルテはそう答えた。土の妖精であるソルテにとっては先頭に使えるスキルよりも、生産に特化したスキルこそが誇りなのがその反応だけでよく分かった。
 それだけにナギも少し反応に困っていたが軽く息を吐いて切り替える。

「少し聞きたいけど、それはまた今度だな。それよりも今すぐ確認したいのは、もしかしてソルテ俺のステータス見れるのか?」

『もちろんですよ?主様も私のステータスを見れるはずですけど?』

「え、そうなの?」

『それはそうですよ。使い魔が主人のを見れて、なんで主人が使い魔の能力を見れないんですか』

「確かにそうだよな…」

 ソルテに言われて納得した様子でナギは今さら気が付いたことに少し気まずそうに視線逸らしながら頷いた。
 いつもならこのまま思考の迷宮に入り込むのがナギだが、今日は鑑定の途中なのもあってかすぐに頭を切り替えて顔を上げた。

「とりあえず、その話も後にしよう。まずは鑑定を済ませよう!」『鑑定』

 これ以上はまずいと思ったのかナギは早口でそう言うと、すぐに鑑定スキルを最後に作った三品に使用した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 銅の短剣 品質 良 ランク 4
 
 耐久値 45/45 攻撃力 24

 備考 良質の銅を使用して作られた短剣。特殊な効果はないが細部まで細かく作られていて、通常よりも耐久値や攻撃力が高くなっている。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 銅の指環 品質 良 ランク 4
 
 耐久値 38/38  防御力 20

 属性:無

 備考 見習い鍛冶師によって良質の銅を使用して作られた指環。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 鉄のインゴット 品質 良 ランク 4

 備考 初級・鍛冶師が作った良質な鉄のインゴット。
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 表示された鑑定結果は大きく変化はしていないが、課題と言う目標を持って作ったナギにとっては重要なところが変化していた。
 その変化を確認したナギは言葉も出ない程に喜んで全力でガッツポーズをした。ただ勢いが強すぎて顔をのぞかせていたソルテが飛ばされそうになって、必死にコートにしがみついて飛ばされないように堪えていた。
 だが鑑定の結果ナギは1つの希望を見出した。正直、最初はできる訳無いと思いながら励んでいた課題に達成の希望が見えた。その事実だけでナギは嬉しくてたまらなかったのだ。

 そのご落ち着きを取り戻したナギは飛ばされそうになったソルテから説教されることになるのだった。
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