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第三章 神の悪戯
第百九十一話 第二区域:甲虫の行進《後編》
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そして第二区域で初めての戦闘を経験して先へと進んでいたナギはアーマー・アントの巣の中を戦闘を回避しながら奥へと進み、数十分も緊張状態で進むとうんざりとしてくるが途中で面白い所を見つけていた。
「いや~あいつらは鉱石に興味がないみたいでよかったな!」
『本当ですね‼まさにウハウハって感じですよ‼』
ナギとソルテが見つけたのはアーマー・アント達にとってはゴミ捨て場だったが、そこに置かれていたのは大量の鉱石の山で二人にとってはまさに宝の山だった。しかもナギはまだ採掘できていないアイテムもいくつか有って、ずっと緊張状態だったストレスも一気に吹き飛んだ。
それからナギとソルテの2人は試練だのを忘れて収集に夢中になっていた。
と言っても時間がないとのも嘘ではないので、種類を確認したりは後回しにして見える範囲全部をアイテムボックスルに放り込むと更に奥へと進んだ。その途中にも何度となく似たようなアーマー・アント達のゴミ捨て場(ナギとソルテにとっての宝物庫)を見つけて回収して回った。
あまりにも回収に夢中になりすぎて新たなゴミを持ってきたアーマー・アントに見つかりそうになったりもしたが、なんとかソルテが事前に察知して戦闘することなくその場を切り抜けていた。
そうして何度となく危険と隣り合わせの中、鉱石を回収しながら進むと多くのアーマー・アント達が向かい出入りしている場所を発見した。
「……どう見てもあそこに親玉が居るよな。たぶん女王蟻」
『間違いないと思います。他に比べて圧倒的に巨大な何かが居ますから…』
「しかも流れ的にあの中だよな、扉…」
『でしょうね…』
「『嫌な予感しかしない』」
今までの流れからロキなら一番ナギの嫌がる事をしていると考えた2人は声をそろえてそう言った。
ただ同時にナギは確実に達成する方法は存在すると確信していた。なぜならあのロキと言う神は道楽的で楽しい事が好きなのだ。
なら確実に『絶対に達成できない』なんて詰まらい事はしないとナギは判断した。
そう判断してからナギは部屋へと入っていくアーマー・アント達の動きに注視した。なにかその動きからヒントが得られないかと考えたのだ。
ただ何十体ものアーマー・アントが忙しく出入りするので簡単に見分けられる物では無く、しかも留まり過ぎれば見つかる可能性が増大してしまうため悠長にしている訳にもいかなかった。
「…あれは、何を持ってるんだ…卵か?」
『どれですか?』
「あれだ」
そして長時間観察していてついにナギは出入りするアーマー・アント達の共通点を見つけた。
部屋に出入りしているアーマー・アント達はエサを持つ者がほとんどだが、そんな中に数体ほどだがなにか細長いボールのような物を持ち運んでいる個体がいた。
別段ナギは虫に詳しい訳では無かったが小学生の時に蟻の巣の観察くらいは授業でやった事もあって、その時に見た蟻の卵と形状が似ているのを見て卵だと判断した。
『卵ですね…何処に運んでるんでしょう?』
「たぶん一か所に纏めて管理しているんだろ。それよりもこれでそこに女王アリが居るのは確定として、奥に進むには別の場所へとおびき寄せる必要がある訳だが…いい事を思いついたぞ?」
『え、何か嫌な予感しかしないんですけど…』
ニヤリと笑みを浮かべるナギに無情に嫌な予感を覚えたソルテは顔を引きつらせた。
それでも現状をどうにかするためにナギの思いついた作戦の説明を聞くと、やっぱりか…と呆れたような表情をうソルテは浮かべたが内容には納得できたのか怖がりながらも頷いていた。
こうして作戦の共有を完了させたナギは実行するために隠れながら女王の部屋へと近寄って、中の様子を確認して2人は表情を強張らせた。
その広い部屋の中には普通のアーマー・アントの数倍の大きさで、頭上には王冠のような形状をしていて周囲には護衛するように通常より一回り大きくなって攻撃性の増した姿のアーマー・アントが3体控えていた。
「『うわぁ…』」
「な?正面から戦闘とか馬鹿だろ?」
『ですね…自殺行為ですよ』
改めて部屋の中を確認したナギとソルテは真正面から戦うのは無謀だと理解した。
そしてナギが考えた作戦を実行する。まず出入りしているアーマー・アントの数が一番減ったタイミングを見計らい行動を開始する。
「よし、行くぞ!」『ファイヤーボール×6』
掛け声と共に火球を6つ作り出したナギは慣れた様子で一瞬で圧縮し、それを女王アリや護衛達に直接ではなくその周囲へと撃ちこんで爆発させた。
ドガァァァァァァァァ‼と伸びたような爆発音が響き渡り、部屋の中は土煙でよく見えなくなったがナギは気にする事なく反転して別の方向へと走り出した。更に途中で卵を持っているアーマー・アントを見つけると短刀を取り出して卵を潰した。
いくら防御力の高いアーマー・アントだからと言って卵ではさすがにもろく簡単に潰せたが、次の瞬間には何かのフェロモン的な物が出たのか周囲にいるアーマー・アントが一斉に敵意を募らせてナギの方へと向かってきた。
しかし最初からこの展開を予想できていたのかナギは銅ようする事無くさらに別の方向へと走り出した。
そうして何度となく卵を砕きながらナギが逃げていると後ろから何かが猛スピードで向かって来ているのを感じることが出来た。しかもガリガリガリ‼と何かを削るような音が聞こえてきて何が追ってきているのかを理解させた。
「ははは!追って来てるな~~~‼」
『全然笑い事ではないのですけど⁉』【ロックウォール】
楽しそうに笑いながら走って逃げるナギを見たソルテは悲痛な叫びを上げて時間稼ぎのために土壁を作って通路を塞いでいた。とは言っても土壁はたいした時間稼ぎにはならず2秒で砕かれて次々にアーマー・アントの大群を率いた女王アリが追いかけて来た。
これが今回ナギの考えた女王アリを広間から排除するための作戦だった。
虫には仲間の危機や外敵が来た時にフェロモンを発する者が居る事を知っていたナギは、アーマー・アント達にももしかしたらそんな習性があると思ってその可能性に賭けることにしたのだ。
そして賭けに見事に勝ったナギの後ろを大量のアーマー・アントを率いて女王アリがもの凄い勢いで追いかけてきていた。もっともナギは追いつかれ無い自信がある訳ではなく実際にギリギリまで近寄られて何度か攻撃も受けていたが、まるで阿蘇のタイミングが分かっていたかのように飛んで避けていた。
もう何時間と居たこのアリの巣の構造をナギは完璧と言っていい程に把握していて、まるでパルクールのように壁を駆け上がったり空中で回転して天井を蹴ったりして縦横無尽に動き回っていた。
さすがにどんなに狭い空間とは言えそれだけ動き回られればアーマー・アント達も狙いを定めて攻撃する事などできるはずもなく、雑な攻撃が増えてナギは余裕を持って攻撃を躱すことが出来るようになっていた。
そうして十分に部屋から離れたのを確認するとナギは十分な広さのある場所へと向かい、火球を創り出して最初と同じように撃ち出して土煙で煙幕にした。
「…よし、行くぞ」
『了解ですよ~』
その煙幕に乗じてナギとソルテは静かに来た道のりを遡って向かいゲートのある部屋へと訪れた。
これこそがナギの考えた作戦だった。虫の習性を利用して女王アリたちをゲートから離れた場所へと連れて行き、そこで更に自分達の姿を見失わせて自分達はゲートへと戻ると言う物だ。
言葉にすれば簡単のように思えるが実際にやろうと思えばなかなかの難易度の作戦だった。
しかし見事に作戦を成功させたナギとソルテは誰もいなくなった女王アリの部屋へと入って、その奥に設置されている巨大な門へと駆け込んだ。
「はぁ!…疲れた」
『…もうやりたくないですね』
門をくぐり抜けるとそこは第一区画のと同じようなセーフエリアになっているようで、簡易的なベットに机が設置されていた。それを確認したナギとソルテの2人は気が抜けたのかその場に座り込んでしまうのだった。
こうしてナギとソルテは無事に第二区画を踏破したのだ。
「いや~あいつらは鉱石に興味がないみたいでよかったな!」
『本当ですね‼まさにウハウハって感じですよ‼』
ナギとソルテが見つけたのはアーマー・アント達にとってはゴミ捨て場だったが、そこに置かれていたのは大量の鉱石の山で二人にとってはまさに宝の山だった。しかもナギはまだ採掘できていないアイテムもいくつか有って、ずっと緊張状態だったストレスも一気に吹き飛んだ。
それからナギとソルテの2人は試練だのを忘れて収集に夢中になっていた。
と言っても時間がないとのも嘘ではないので、種類を確認したりは後回しにして見える範囲全部をアイテムボックスルに放り込むと更に奥へと進んだ。その途中にも何度となく似たようなアーマー・アント達のゴミ捨て場(ナギとソルテにとっての宝物庫)を見つけて回収して回った。
あまりにも回収に夢中になりすぎて新たなゴミを持ってきたアーマー・アントに見つかりそうになったりもしたが、なんとかソルテが事前に察知して戦闘することなくその場を切り抜けていた。
そうして何度となく危険と隣り合わせの中、鉱石を回収しながら進むと多くのアーマー・アント達が向かい出入りしている場所を発見した。
「……どう見てもあそこに親玉が居るよな。たぶん女王蟻」
『間違いないと思います。他に比べて圧倒的に巨大な何かが居ますから…』
「しかも流れ的にあの中だよな、扉…」
『でしょうね…』
「『嫌な予感しかしない』」
今までの流れからロキなら一番ナギの嫌がる事をしていると考えた2人は声をそろえてそう言った。
ただ同時にナギは確実に達成する方法は存在すると確信していた。なぜならあのロキと言う神は道楽的で楽しい事が好きなのだ。
なら確実に『絶対に達成できない』なんて詰まらい事はしないとナギは判断した。
そう判断してからナギは部屋へと入っていくアーマー・アント達の動きに注視した。なにかその動きからヒントが得られないかと考えたのだ。
ただ何十体ものアーマー・アントが忙しく出入りするので簡単に見分けられる物では無く、しかも留まり過ぎれば見つかる可能性が増大してしまうため悠長にしている訳にもいかなかった。
「…あれは、何を持ってるんだ…卵か?」
『どれですか?』
「あれだ」
そして長時間観察していてついにナギは出入りするアーマー・アント達の共通点を見つけた。
部屋に出入りしているアーマー・アント達はエサを持つ者がほとんどだが、そんな中に数体ほどだがなにか細長いボールのような物を持ち運んでいる個体がいた。
別段ナギは虫に詳しい訳では無かったが小学生の時に蟻の巣の観察くらいは授業でやった事もあって、その時に見た蟻の卵と形状が似ているのを見て卵だと判断した。
『卵ですね…何処に運んでるんでしょう?』
「たぶん一か所に纏めて管理しているんだろ。それよりもこれでそこに女王アリが居るのは確定として、奥に進むには別の場所へとおびき寄せる必要がある訳だが…いい事を思いついたぞ?」
『え、何か嫌な予感しかしないんですけど…』
ニヤリと笑みを浮かべるナギに無情に嫌な予感を覚えたソルテは顔を引きつらせた。
それでも現状をどうにかするためにナギの思いついた作戦の説明を聞くと、やっぱりか…と呆れたような表情をうソルテは浮かべたが内容には納得できたのか怖がりながらも頷いていた。
こうして作戦の共有を完了させたナギは実行するために隠れながら女王の部屋へと近寄って、中の様子を確認して2人は表情を強張らせた。
その広い部屋の中には普通のアーマー・アントの数倍の大きさで、頭上には王冠のような形状をしていて周囲には護衛するように通常より一回り大きくなって攻撃性の増した姿のアーマー・アントが3体控えていた。
「『うわぁ…』」
「な?正面から戦闘とか馬鹿だろ?」
『ですね…自殺行為ですよ』
改めて部屋の中を確認したナギとソルテは真正面から戦うのは無謀だと理解した。
そしてナギが考えた作戦を実行する。まず出入りしているアーマー・アントの数が一番減ったタイミングを見計らい行動を開始する。
「よし、行くぞ!」『ファイヤーボール×6』
掛け声と共に火球を6つ作り出したナギは慣れた様子で一瞬で圧縮し、それを女王アリや護衛達に直接ではなくその周囲へと撃ちこんで爆発させた。
ドガァァァァァァァァ‼と伸びたような爆発音が響き渡り、部屋の中は土煙でよく見えなくなったがナギは気にする事なく反転して別の方向へと走り出した。更に途中で卵を持っているアーマー・アントを見つけると短刀を取り出して卵を潰した。
いくら防御力の高いアーマー・アントだからと言って卵ではさすがにもろく簡単に潰せたが、次の瞬間には何かのフェロモン的な物が出たのか周囲にいるアーマー・アントが一斉に敵意を募らせてナギの方へと向かってきた。
しかし最初からこの展開を予想できていたのかナギは銅ようする事無くさらに別の方向へと走り出した。
そうして何度となく卵を砕きながらナギが逃げていると後ろから何かが猛スピードで向かって来ているのを感じることが出来た。しかもガリガリガリ‼と何かを削るような音が聞こえてきて何が追ってきているのかを理解させた。
「ははは!追って来てるな~~~‼」
『全然笑い事ではないのですけど⁉』【ロックウォール】
楽しそうに笑いながら走って逃げるナギを見たソルテは悲痛な叫びを上げて時間稼ぎのために土壁を作って通路を塞いでいた。とは言っても土壁はたいした時間稼ぎにはならず2秒で砕かれて次々にアーマー・アントの大群を率いた女王アリが追いかけて来た。
これが今回ナギの考えた女王アリを広間から排除するための作戦だった。
虫には仲間の危機や外敵が来た時にフェロモンを発する者が居る事を知っていたナギは、アーマー・アント達にももしかしたらそんな習性があると思ってその可能性に賭けることにしたのだ。
そして賭けに見事に勝ったナギの後ろを大量のアーマー・アントを率いて女王アリがもの凄い勢いで追いかけてきていた。もっともナギは追いつかれ無い自信がある訳ではなく実際にギリギリまで近寄られて何度か攻撃も受けていたが、まるで阿蘇のタイミングが分かっていたかのように飛んで避けていた。
もう何時間と居たこのアリの巣の構造をナギは完璧と言っていい程に把握していて、まるでパルクールのように壁を駆け上がったり空中で回転して天井を蹴ったりして縦横無尽に動き回っていた。
さすがにどんなに狭い空間とは言えそれだけ動き回られればアーマー・アント達も狙いを定めて攻撃する事などできるはずもなく、雑な攻撃が増えてナギは余裕を持って攻撃を躱すことが出来るようになっていた。
そうして十分に部屋から離れたのを確認するとナギは十分な広さのある場所へと向かい、火球を創り出して最初と同じように撃ち出して土煙で煙幕にした。
「…よし、行くぞ」
『了解ですよ~』
その煙幕に乗じてナギとソルテは静かに来た道のりを遡って向かいゲートのある部屋へと訪れた。
これこそがナギの考えた作戦だった。虫の習性を利用して女王アリたちをゲートから離れた場所へと連れて行き、そこで更に自分達の姿を見失わせて自分達はゲートへと戻ると言う物だ。
言葉にすれば簡単のように思えるが実際にやろうと思えばなかなかの難易度の作戦だった。
しかし見事に作戦を成功させたナギとソルテは誰もいなくなった女王アリの部屋へと入って、その奥に設置されている巨大な門へと駆け込んだ。
「はぁ!…疲れた」
『…もうやりたくないですね』
門をくぐり抜けるとそこは第一区画のと同じようなセーフエリアになっているようで、簡易的なベットに机が設置されていた。それを確認したナギとソルテの2人は気が抜けたのかその場に座り込んでしまうのだった。
こうしてナギとソルテは無事に第二区画を踏破したのだ。
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