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第五章 決闘イベント
第二百五十話 予選C・Dグループ
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「ふぁ~……よし、晩飯食ったら行くか」
仮眠から起きた渚は準備の大半の終わっている晩御飯を完成させ、手早く自分の分だけでも食べてしまうと夏樹と夏帆へと『自分で温めて食べろ』と短い書置きを残して後片付けを済ませてAOへとログインした。
ログインしてすぐに変わらずに待機部屋へであることを確認して静かに安心していた。
「さて、もうそろそろCグループが始まるか」
そう言って立ち上がったナギは窓へと近づいてステージ上を確認するとちらほらとプレイヤー達が集まりだしているところだった。
「この感じだともう少しかかるか、何か時間つぶし用に屋台で買ってくるか」
『何か楽しそうな話が聞こえました!私も行きます‼』
「はいはい、わかってるから顔にへばりつくな」
急に飛び出して顔に抱き付いてきたソルテを引きはがしながらナギは呆れたように顔を振るった。
つまんでいたソルテを頭の上にそっ…と静かに乗せて外へと向かって歩き出した。
「あんまり時間もないし、急いでいくぞ」
『はい!』
元気のいい返事を聞いて満足そうに頷いたナギは外への転移陣で暇つぶし用の食べ物を買いに屋台巡りを始めた。
数分後に戻ってきたときにナギの両腕には大量の紙袋を抱えていて、頭の上のソルテはすでに買ってきたポップコーンを両手で抱えながら食べていた。食べかすが頭に振るのでナギの表情はかなり大きく歪んで今にも叩き落としそうな空気があった。
そんな衝動を何とか我慢してステージ上を見ると予選Cグループはすでに始まっているようだった。
「あぁ~さすがにギリギリすぎたか」
『ふぉう、ふぃたい…ゴク…ですね!』
「そうだな…とりあえず今回は知り合いも出ているようだしゆっくり観戦させてもらおう」
楽しそうに言ったナギが見つめるステージ上には複数を相手に戦っているドラゴの姿を見ていた。
装備は以前会ったときにも変化は見ていたが改めてみてもはじめのころから大きく変わっているのがよく分かった。革の鎧だったのが鉄のしっかりとした鎧へ、武器もしっかりと作りこまれた一目でかなり品質の高いものだとわかった。
しかもメイン職業は剣士だがサブは盗賊なので腰には短剣もあった。
この2つの武器を駆使して周囲の敵と一定の距離を保ちながら確実に一人とだけ一対一の形になるように立ち回っていた。
「おぉー!ドラゴも戦い方がらしくなってきたな。最初は馬鹿みたいに突っ込んでいくのかと思っていたわ‼」
『なかなか失礼なこと言ってますけど、お友達なんですよね?』
「友達だと思っているぞ?何なら親友で幼馴染で腐れ縁だ。でも、だからこそ扱いは雑になっていくという事もあるんだよ」
『そういうものですか…』
「そういうものなんですよ」
まだ少し納得できていないような曖昧な反応のソルテだったがナギは気にすることなくステージ上だけを見ていた。
ドラゴの戦っている場所から少し離れたところではヒカリがラウンドシールドで相手を弾き飛ばして槍で貫いているところだった。他にもドラゴ達のパーティーのグレンも参加していたがこっちも他のプレイヤーと接戦になっているがそこそこ優勢に戦えているように見えた。
もっとも昔から付き合いのあるドラゴやヒカリの2人はナギもよく知っていたが、知り合って日の浅いグレンの事までは知らないので完全に優劣を把握することはできなかった。
「う~ん、所々で武器が光っているように見えるけどあれはアーツを使ってるのか?」
『たぶんそうだと思いますよ、って、そういえば主様は何でアーツを使わないんですか?使えば楽に倒せた敵も多かったと思うんですけど…』
「面白くないからだが?」
『え…』
あまりに予想外の答えにソルテは唖然としていた。なにせ一般的にアーツとは必殺技と同義なので、正面から戦っても勝てない相手への切り札となりえるという認識なのだ。
少なくとも『面白くないから』なんていう理由で使用しない人間はよほどの変人しかいないというのは確かだった。
「それに体が勝手に動くのは何度味わっても気持ち悪くてな。練習はしてみたんだが、俺には合わないってことだな」
『そ、そうなんですかぁ…』
身も蓋もない答えだけにソルテはぎこちない返事を返したが内心ではなんとなく理解できた。
そして話が終わるとナギはステージ上に意識を戻して試合内容を確認した。最初に見た知り合いのドラゴ達は全員がHPが削られながらも善戦していた。
ほかにも残っているプレイヤーを確認すると全身鎧を身に纏っている重戦士が大盾で相手を吹き飛ばしていて、別の場所ではどっかの魔法少女のような杖を持った少女が炎や水などの複数の魔法で蹂躙していた。
もうこの段階でナギはCグループの突破者の予想がついて消化試合だと判断して買い溜めた物から、適当に数個とって食べながら本戦で戦うことになる相手を観察することにした。
ほどなくして予想通りの5人が勝ち抜いて数時間の休憩を挟んでDグループへと移行した。
その間にナギはトイレを済ませてきて今回は開始前には戻ることができて、最初からステージ上を見て出てくる参加者達を観察して強そうな奴に目を付けた。
「焔達は、まぁまぁ順当だな。他には3人か…まだ増えるかもしれないけど、本命はこのあたりかな」
『よくこの距離でわかりますね~』
「いい加減に慣れたからな。このくらいなら軽くできる」
『あいかわらず凄いですね…』
幾度も戦闘や鍛冶をともに経験して慣れてきたソルテだったが、やっぱりナギの規格外とも言える行動には疲れた表情を浮かべた。
そんな他人の反応にもナギも慣れているので気にすることはなく集中してステージを見ていた。
しばらくして予選Dグループが始まると焔とエレンが炎系の範囲魔法で周囲の敵を一気に吹き飛ばした。
魔法職である2人にとっては近くに敵がいる状況は厳しいので強引にでも距離を取るために同じ手段を用いたのだ。さらに距離が離れたのをいいことに別の範囲魔法で遠距離から一方的に攻撃を開始していた。
それでもいくらか抜けてくる敵もいたが届く前に単発の魔法によって撃退していた。
「おぉ~!前にあった時よりも格段に上手くなってるな。ゴブリンの大群との戦いで何か学んだか」
感心したように頷いていていたナギは安心したようでもう一人の知り合い、というか妹のホホの姿を探した。
すぐに見つけたホホは周囲の人の影に入っては急所へと的確に攻撃して数撃で倒し、次の戦闘中のプレイヤー達のもとへ移動して隙をついて倒してという事を繰り返していた。
この動きは盗賊というよりも暗殺者と言った感じだったがステージ上のプレイヤー達を見ていても一番上手く立ち回っているのはホホだった。
他にも最初に目を付けたプレイヤー達は軒並み善戦していた。
そんな光景を見ながらナギは誰が勝ち抜けるのか大雑把な予想を立てて本戦での対策を頭でシミュレーションして過ごしたのだった。
こうして予選が終わり本戦へのメンバーが決まった。
仮眠から起きた渚は準備の大半の終わっている晩御飯を完成させ、手早く自分の分だけでも食べてしまうと夏樹と夏帆へと『自分で温めて食べろ』と短い書置きを残して後片付けを済ませてAOへとログインした。
ログインしてすぐに変わらずに待機部屋へであることを確認して静かに安心していた。
「さて、もうそろそろCグループが始まるか」
そう言って立ち上がったナギは窓へと近づいてステージ上を確認するとちらほらとプレイヤー達が集まりだしているところだった。
「この感じだともう少しかかるか、何か時間つぶし用に屋台で買ってくるか」
『何か楽しそうな話が聞こえました!私も行きます‼』
「はいはい、わかってるから顔にへばりつくな」
急に飛び出して顔に抱き付いてきたソルテを引きはがしながらナギは呆れたように顔を振るった。
つまんでいたソルテを頭の上にそっ…と静かに乗せて外へと向かって歩き出した。
「あんまり時間もないし、急いでいくぞ」
『はい!』
元気のいい返事を聞いて満足そうに頷いたナギは外への転移陣で暇つぶし用の食べ物を買いに屋台巡りを始めた。
数分後に戻ってきたときにナギの両腕には大量の紙袋を抱えていて、頭の上のソルテはすでに買ってきたポップコーンを両手で抱えながら食べていた。食べかすが頭に振るのでナギの表情はかなり大きく歪んで今にも叩き落としそうな空気があった。
そんな衝動を何とか我慢してステージ上を見ると予選Cグループはすでに始まっているようだった。
「あぁ~さすがにギリギリすぎたか」
『ふぉう、ふぃたい…ゴク…ですね!』
「そうだな…とりあえず今回は知り合いも出ているようだしゆっくり観戦させてもらおう」
楽しそうに言ったナギが見つめるステージ上には複数を相手に戦っているドラゴの姿を見ていた。
装備は以前会ったときにも変化は見ていたが改めてみてもはじめのころから大きく変わっているのがよく分かった。革の鎧だったのが鉄のしっかりとした鎧へ、武器もしっかりと作りこまれた一目でかなり品質の高いものだとわかった。
しかもメイン職業は剣士だがサブは盗賊なので腰には短剣もあった。
この2つの武器を駆使して周囲の敵と一定の距離を保ちながら確実に一人とだけ一対一の形になるように立ち回っていた。
「おぉー!ドラゴも戦い方がらしくなってきたな。最初は馬鹿みたいに突っ込んでいくのかと思っていたわ‼」
『なかなか失礼なこと言ってますけど、お友達なんですよね?』
「友達だと思っているぞ?何なら親友で幼馴染で腐れ縁だ。でも、だからこそ扱いは雑になっていくという事もあるんだよ」
『そういうものですか…』
「そういうものなんですよ」
まだ少し納得できていないような曖昧な反応のソルテだったがナギは気にすることなくステージ上だけを見ていた。
ドラゴの戦っている場所から少し離れたところではヒカリがラウンドシールドで相手を弾き飛ばして槍で貫いているところだった。他にもドラゴ達のパーティーのグレンも参加していたがこっちも他のプレイヤーと接戦になっているがそこそこ優勢に戦えているように見えた。
もっとも昔から付き合いのあるドラゴやヒカリの2人はナギもよく知っていたが、知り合って日の浅いグレンの事までは知らないので完全に優劣を把握することはできなかった。
「う~ん、所々で武器が光っているように見えるけどあれはアーツを使ってるのか?」
『たぶんそうだと思いますよ、って、そういえば主様は何でアーツを使わないんですか?使えば楽に倒せた敵も多かったと思うんですけど…』
「面白くないからだが?」
『え…』
あまりに予想外の答えにソルテは唖然としていた。なにせ一般的にアーツとは必殺技と同義なので、正面から戦っても勝てない相手への切り札となりえるという認識なのだ。
少なくとも『面白くないから』なんていう理由で使用しない人間はよほどの変人しかいないというのは確かだった。
「それに体が勝手に動くのは何度味わっても気持ち悪くてな。練習はしてみたんだが、俺には合わないってことだな」
『そ、そうなんですかぁ…』
身も蓋もない答えだけにソルテはぎこちない返事を返したが内心ではなんとなく理解できた。
そして話が終わるとナギはステージ上に意識を戻して試合内容を確認した。最初に見た知り合いのドラゴ達は全員がHPが削られながらも善戦していた。
ほかにも残っているプレイヤーを確認すると全身鎧を身に纏っている重戦士が大盾で相手を吹き飛ばしていて、別の場所ではどっかの魔法少女のような杖を持った少女が炎や水などの複数の魔法で蹂躙していた。
もうこの段階でナギはCグループの突破者の予想がついて消化試合だと判断して買い溜めた物から、適当に数個とって食べながら本戦で戦うことになる相手を観察することにした。
ほどなくして予想通りの5人が勝ち抜いて数時間の休憩を挟んでDグループへと移行した。
その間にナギはトイレを済ませてきて今回は開始前には戻ることができて、最初からステージ上を見て出てくる参加者達を観察して強そうな奴に目を付けた。
「焔達は、まぁまぁ順当だな。他には3人か…まだ増えるかもしれないけど、本命はこのあたりかな」
『よくこの距離でわかりますね~』
「いい加減に慣れたからな。このくらいなら軽くできる」
『あいかわらず凄いですね…』
幾度も戦闘や鍛冶をともに経験して慣れてきたソルテだったが、やっぱりナギの規格外とも言える行動には疲れた表情を浮かべた。
そんな他人の反応にもナギも慣れているので気にすることはなく集中してステージを見ていた。
しばらくして予選Dグループが始まると焔とエレンが炎系の範囲魔法で周囲の敵を一気に吹き飛ばした。
魔法職である2人にとっては近くに敵がいる状況は厳しいので強引にでも距離を取るために同じ手段を用いたのだ。さらに距離が離れたのをいいことに別の範囲魔法で遠距離から一方的に攻撃を開始していた。
それでもいくらか抜けてくる敵もいたが届く前に単発の魔法によって撃退していた。
「おぉ~!前にあった時よりも格段に上手くなってるな。ゴブリンの大群との戦いで何か学んだか」
感心したように頷いていていたナギは安心したようでもう一人の知り合い、というか妹のホホの姿を探した。
すぐに見つけたホホは周囲の人の影に入っては急所へと的確に攻撃して数撃で倒し、次の戦闘中のプレイヤー達のもとへ移動して隙をついて倒してという事を繰り返していた。
この動きは盗賊というよりも暗殺者と言った感じだったがステージ上のプレイヤー達を見ていても一番上手く立ち回っているのはホホだった。
他にも最初に目を付けたプレイヤー達は軒並み善戦していた。
そんな光景を見ながらナギは誰が勝ち抜けるのか大雑把な予想を立てて本戦での対策を頭でシミュレーションして過ごしたのだった。
こうして予選が終わり本戦へのメンバーが決まった。
応援ありがとうございます!
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